「1ドル=200円台」に備えよ

今週の為替市場では円安がさらに進み、ドル円は1ドル=159円台後半で金曜日の取引を終えました。節目とされる160円に迫っています。

Noppol Mahawanjam/iStock

1ドル=160円を超える円安では前回は日本政府・日銀の為替介入がありました。しかし、為替介入の理由は為替レートの「過度な変動」の回避としています。ジリジリと進む円安は介入する大義名分に欠けます。また、アメリカの財務省が外国為替政策報告書において為替操作をしていないかを注視する「監視リスト」に日本を加えました。為替介入のハードルは高くなったと考えるのが自然です。

為替レートの予想をするのは簡単ではありませんが、最悪のシナリオとして今後更に円安が進むことが考えられます。1980年代のように1ドル=200円台にドル円レートが戻ることも想定しておく必要があります。

また米ドル以外の通貨に対しても円が下落していくことも想定しなければなりません。

では、どうしたら良いのでしょうか?

2年前にマネックス証券で連載しているこちらのコラムには「日本集中リスク」を排除することと書きました。

多くの日本人は、住居も日本、仕事も日本、資産も日本(円)、言葉も日本(語)という状態で、極めて高い「日本集中リスク」を抱えています。

その中で最も簡単に日本からリスクを切り離すことができるのが、資産を円から外貨にシフトしていく資産運用です。絶対に円安になるとは言えませんが、更に円安が進む可能性も五分五分だと思うなら、資産全体の外貨比率は50%にするのが合理的です。

今もこの時の考え方には変わりはありません。

資産も収入もほとんどを円になっている日本人にとって困るのは円高ではなく円安です。外貨を保有しないで円安になるという展開は避けたいところです。

米ドルだけではなく、他の主要通貨のポジションも分散して取っておいた方が良いでしょう。

資産運用の観点から大切なのは、円高になるのか円安になるのかを当てにいくことではありません。日本人にとって最悪の事態であるこれ以上の円安を想定して、今からでも対策を取っておくことです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。