自民党の政局、さぁ出陣:異様に難しくなった首相のポジション

国会が延長なく閉会したことで国政に関してはまずは自民党と立憲民主党の総裁選(党首選)に視点が移ります。両党とも同時期に選挙があり、現時点では両党首とも敵が多く、党首選を勝ち抜けるかどうか微妙なところにあることから日本全体を巻き込んだ話題になっていくでしょう。今日は一足先に自民党を中心とした政局について覗いてみたいと思います。

政局の話をする場合、どの立場に立った意見なのかによってインプットされる印象は全く違ってきます。基本的に今回は自民党の総裁選びなので選べる立場にあるのは自民党員と自民党議員に限定されます。よって世論人気はわかるけれどそれが反映されるわけではなく、魑魅魍魎な世界で議員同士の駆け引きが行われるわけです。

まず、総裁になるための要件ですが、私はずばり一定の知名度は必要だと思います。なぜかといえば知名度=その方の実績なり発言が広く知れ渡っている意味であり、知名度が劣る方が突然首相になっても「誰それ?」「どんな性格?」「どんなビジョン?」などわかりにくさがでるのでそれを嫌う向きがでます。

例えば今盛り上がっている東京都知事選でも結局有利なのは知名度なのです。ある程度名が知れているならその政策や公約が多少ブレていても「有力候補」扱いしてくれるのです。家の郵便受けに「東京都知事選挙 選挙公報」という新聞紙大の公報は入っていたのですが、なんと14ページもあります。1ページ4名の紹介でまじめに公約を謳う候補者もいればハートマーク付きや自画のイラスト入りなど各候補者四苦八苦ですが、結局メディア扱いの大きい3-4名に候補が絞られているといってよいでしょう。話の主題からはずれますが、石丸伸二氏はアンチ小池、アンチ蓮舫の受け皿としてここに来て伸びを感じており、2番手争いに食い込むのではないかと思います。

さて、国政ですが、政局を知る人ほど「候補者」の名前を上げる癖があります。「巷ではこういう候補者がいるけれど実はこういう名前も挙がっているんだ」という手の情報です。基本的にその手の情報所有者はいかにも俺はよく知っていて凄いんだぞ、という感じがするのですが、結局は「また聞き型政局耳年増」で切り紙型情報の寄せ集めで机の上に並べてパズルを楽しむような話です。そういう方ほど「では、どなたになると思いますか?」と聞けば答えが不明瞭だったりします。

まず、岸田氏ですが私は今のところは総裁選に出馬すると思います。その場合はやはり最有力候補になるでしょう。特に唯一の派閥となる麻生派との関係がどうなるかです。個人的には派閥解散が主流となった今、麻生派といえども自主投票させるのではないかと思います。それを承知で河野太郎氏と麻生氏が飯を食ったと思います。多分ですが、河野氏は総裁選出馬の意向を伝えたのだと思います。麻生氏は派閥としてはできることは限りがあるが、頑張れぐらい言ったのでしょう。テレビに映る河野氏の上機嫌さはそうとしか思えません。

石破氏・河野氏・岸田首相・上川外相 自民党HPより

では支持率低迷で苦労する岸田氏に起死回生の逆転劇はあるのでしょうか?岸田政権は1000日たったのですが、実績をわかりやすく表現するとスマッシュヒット型なのです。つまり大ヒットはなく、コツコツうち、目立たないけれどいぶし銀のような活躍をする巨人の6番バッターのような感じでしょうか?

その不動の6番が逆転満塁ホームランを放つ可能性は残念ながら低いと思います。ただ、打線全般が湿りがちで点数が取れない自民党軍ですので総裁選で1番から9番まで候補者を並べても全方向で国民の期待に応え、議員票も党員票も確保できる人はやはり限られるのです。

以前にも書きましたが、北朝鮮の金正恩氏との会談、しかも会うだけではなく極めて大きな成果を得る会合が行われたならこれはホームランかもしれません。ただし、以前にも申し上げたように外交はポイントになりにくいのです。今、最大の逆転満塁ホームランはインフレ対策であり、国民の不満をどう緩和するのかそのプラン次第だと思います。唐突に電気ガス代の補助を打ち出しましたが、この思いつき型のポピュリズムは下手を打ったと思います。個人的にはありがたいけれど政策としては失策だと思います。

総裁選まであと3か月を切っている中でインフレ対策は難しいのですが、日銀が7月の政策決定会合で示す政策次第では円安に一時的な歯止めがかかる可能性があります。(個人的には既に織り込みつつあるとみていますが。)とにかく円安を止めないことにはインフレ脱却のシナリオが描けず、岸田政権にとってアキレス腱になりそうです。

他の候補としては石破茂氏が出馬を固めたと朝日新聞が28日付報道で独自で伝えています。あとは菅元首相の影響下で小泉、茂木、加藤各氏の名前が上がるかと思います。上川氏は岸田氏が出る限り、ないと思うし、その器ではありません。高市氏は党内人気がないので、厳しいと思います。個人的には彼女は案件の絞り込み型、短視眼的スタンスなのでバランス感覚が足りないように感じます。

首相のポジションは異様に難しく、外野がどうこう言うのとは全く違うレベルの調整能力、タフさ、知識量、人柄が求められます。もしかすると私の知らない候補者のお名前もあるかもしれませんが、オールラウンドでこなして今後数年の日本を託せる人材という観点で見ると党員でも議員でもなかなか困難な選択肢で案外、消去法で岸田氏が残るというのが今の時点での私の予想です。

そのうち立憲民主党の件もつぶやいてみたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月28日の記事より転載させていただきました。