「恥を知れ!」
7日(日)投開票の東京都知事選挙で、再選した小池百合子都知事に続き、落選はしたものの蓮舫氏を抜き得票数2位に喰い込んだ石丸伸二氏が、開票後の一連のTV選挙番組インタビューを通じて一躍全国レベルの有名政治家となった。
これまで、1期の途中まで市長を務めた安芸高田市で議会及び地元メディアと数々の摩擦を起こしたが、「恥を知れ、恥を・・」「バッジを外して出て行ってください」等の芝居がかった口上のTikTokやYouTubeの切り抜き動画等が若者を中心に大バズリし、それを追い風に都知事選に臨んでからも勢いは倍増し、今回の結果に繋がった。
その姿勢が、地上波TVの生放送を通して、全国に可視化されたのが投開票の7日(日)の夜だった。
例えば、フジテレビ系都知事選選挙特番「Mr. サンデー“七夕決戦”都知事選SP」(日曜午後9時)での、慶大環境情報学部卒業の元乃木坂46、山崎怜奈(27)さん(れなっち)との公約を巡っての噛み合わないやり取りは構図だけ見れば、まるで上司がOLに対してパワハラで苛めているようにも映り、ネットを覗くと石丸氏に対する悪評が頗る多い。
さて、これまで筆者は石丸氏について安芸高田市長時代についての情報は側聞程度に知っていたが、ネットに流れる7日夜のやり取りを見て石丸氏について俄然興味が湧いてきた(筆者はこの時点で石丸氏の術中に嵌ったのかも知れない)。
もう1つの顔
政策については、小池氏や蓮舫氏とあまり変わらないという認識のまま深くは調べていなかったが、夜な夜なネットを探して見ると丁度よく纏まった下記動画が見つかった。
すると、決して目を見張るアイデアではないものの、都知事選公約として地方自治について日本を良くするためというオーソドックスで反論の余地のない基本政策を、説得力を持って理路整然とを説明する石丸氏の姿がそこに在った。三菱東京UFJ銀行での為替アナリスト時代は、分析し予測してレポートに書き講演会で話していたという事なので、そこで培われた能力なのだろう。英語で言えばclear and squareと言った感じで、オーバーに言えば前出の山崎怜奈さんを責めていた同一人物とは思えない程だった。
石丸ファンは、このギャップに燃えるのか? あるいは単に半沢直樹の出来損ないみたいなセリフを吐く石丸氏に熱狂しているのか? 恐らく両方タイプのファンが混ざっているのだろう。
さて、「パワハラ上司」とスマートなプランナー。石丸氏のこの2つの顔を架橋するものは何だろうか? 筆者が思い付くのは下記のような可能性だ。
- 元々、石丸氏には「サイコパス的」な要素、2重人格的素質が在った。
- 「パワハラ上司」は、バズるために演じていたキャラで、それを基に政策と「政治家石丸」を売り込む長期的戦略を練っていた。
- 一方的に説明したり、決め打ちした質問に答えるのには天性の才があるが、対話は絶望的に不得手だった。
- 頭の中が理路整然とし、clear and squareに出来上がっているが、それ故に夾雑物が入ると時々爆発させないと維持出来ない。
- 上記の混合型。
石丸氏は、都知事選を挟んで数冊の著書を出版し、8月30日よりは何と自身がモデルとなった政治エンタメ映画が公開される。
何れにしても、筆者には石丸氏が相当な戦略性、計画性、組織力を以て天下取りに向かっているように映る。
石丸氏からは、地方自治・国土政策についての概要は示されたが、外交、防衛、貿易・経済、エネルギー・食糧、医療、パンデミック対応、移民等については、まだ殆ど示されていない。筆者は今後この人物については期待と警戒心を持って臨んで行きたいと考えている。