僅か2年で犯罪大国に変身したパラグアイ

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麻薬の集荷地に変身したパラグアイ

6月初旬に南米パラグアイで日本人移民が2名殺害されるという事件が発生した。

パラグアイはブラジルに次いで、日本から多くの移民が移住した国である。しかし、パラグアイはこれまで日本で話題にならない国であった。ところが、この僅か2年間でパラグアイは世界犯罪国として4位にランキングされるまでになった。その主因は麻薬である。

パラグアイは内陸国。海に面して港がないことから麻薬を密輸するには都合のよくない国とされていた。したがって麻薬の密輸には対象外の国とされていた。

ところが、パラグアイには延長3400キロに及ぶ二つの川がある。パラナ川とパラグアイ川である。この二つの川を利用してブラジルのサントス港、アルゼンチンのブエノスアイレス港、ウルグアイのモンテビデオ港などに容易に麻薬を運送できるのである。その為に浅瀬でも容易に多量の荷役を運ぶことのできるバージ船が活躍している。麻薬の場合は目立つのを避ける為に筏舟のようなものでも運送されている。

ブラジルの犯罪組織PCCがパラグアイに進出して犯罪国家へ

麻薬の密輸ネット網から当初外されていたパラグアイが麻薬の密輸送に地理的なメリットを見出したのが隣国ブラジルで最大の犯罪組織PCC(州都第一コマンド)である。

PCCは2010年頃からパラグアイに進出を開始した。PCCはコカインをペルー、コロンビア、エクアドル、ボリビアからパラグアイに集荷し、そこで調合してサントス港、ブエノスアイレス港、モンテビデオ港などに川を利用して送るのである。この集荷には、原産地から小型飛行機でパラグアイに送り、着陸することなく、空中から地上に麻薬を落下させるという手段も用いている。

この時点からパラグアイは重要な犯罪国家として変身するのである。その動きが顕著になるのが2023年頃である。だから、その前年5月にはまだ犯罪組織の活動には注視されなかった。ところが、犯罪組織の撲滅に動いていたひとりの検察官主任マルセロ・ベッチ氏が不用心にも新婚旅行に護衛なしで隣国コロンビアに出かけて暗殺されるという事件が発生した。この事件以来、パラグアイが一躍注目を集める国となったのである。

またパラグアイは上等な大麻の生産国であるということもあって、PCCと地元の犯罪組織なども争いが絶えない。しかも、政治家や警察も犯罪組織と癒着しており、犯罪件数は増加しても、それを取り締まる手段に伸展はない。

パラグアイはこれまでたばこの世界規模での密輸で著名が国である。何しろ、年間600億本が生産され、その大半が密輸されている。それに新たに麻薬の密売も世界規模で発展している。