ビジネス書の力とは? 情報社会で生き抜くための最適ツール

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全国出版協会・出版科学研究所は、2023年(1~12月期累計)の出版市場規模を発表しました。紙と電子を合算した「出版市場の推定販売金額」は1兆5963億円(前年比2.1%減)となり、2年連続の前年割れとなりました。市場ピーク、1996年(20年前)の2兆6563億円から約6割に落ち込んだことになります。

しかし、出版不況といわれながらも出版には根強い人気があります。有名著者が開催するセミナーは満員御礼、気がつけば出版コンサルタント、出版ブローカーを標榜する人たちも増えました。今回紹介する本は、将来、出版したい人が正しい情報を得るために読んでおきたい一冊です。

本を出そう、本を出そう、出したらどうなった?」(城村 典子 著)みらいパブリッシング

自分の身の丈にあった企画が理想

著者の城村さんとは、かれこれ10年近くのお付き合いとなります。これまで、アゴラに講師として登壇いただいたこともあります。出版社の経営、書籍編集者(角川フォレスタシリーズ創設)、大学講師(青山学院大学非常勤講師)として活動してきた、城村さんにとって初めての著書になります。

「ビジネスパーソンが文章を書く際に気をつけてほしいのは『それを読んだ人がどう感じるか』『伝えたいことが本当に伝わるか』という視点です。そのなかのひとつが『簡潔』であること。伝わる文章を書くにあたり、もっとも意識すべきポイントだといっても過言ではありません」(城村さん)

「難しい言い回しをしてみたり、あまり使われない言葉を使ってみたり、人はつい難しそうな文章を書いてしまいがちです。本当に難しいのは、簡潔に、わかりやすく書くこと。頭がよさそうに見せることよりも、柔らかな文体でわかりやすく書くことのほうがずっと難しいのです」(同)

出版には幾つかの要素が必要とされます。まずは、簡潔な文章を心がけるべきだということです。必要なのは「平易な表現」と「わかりやすさ」。さらに、そこに奥深さがなければ意味がないのです。

城村さんはビジネス書の市場が活性化している理由について次のように解説します。

「それはビジネスパーソンが情報を入手する最適なツールだからです。ビジネス書には『実践的なお役立ち情報』が詰め込まれています。読むことで知識は増え価格も手頃なのでビジネスパーソンにとっては指南書になりやすいのだと思います。ビジネス書は無名の人が自分のビジネスを飛躍させるために出版することもあります。デジタル化が進んだいまでも出版することの意義は非常に大きいのです」(城村さん)

危険すぎる“出版プロデューサー”とは

先日、元出版社に勤務していた「出版プロデューサー」の岩尾さん(仮名)と会食をしました。本人は一流を標榜しているものの、リスクが高いと思いました。大手出版社で編集者をしていたことはありますが、ヒット作もなく実績に乏しいからです。

さらに、コンサルティングファーム出身だと言います。次のような会話をしましたが嚙み合いません。コンサル業界出身者なら「ファーム」と言えば100%わかるものです。

尾藤:どちらのファームご出身ですか?

岩尾:ファームとは?私は2軍ではありません。

尾藤:いや、野球のファームではなく、コンサルティングファームのことです。

岩尾:野球チームのコンサルのことですね。たくさんの実績があります。

尾藤:そうではなくて。どちらのファームご出身かと思いまして……

「出版プロデューサー」の仕事は著者と出版社のマッチングにあります。多くの出版社とコネクションをもつ人は強いですが、そのような人は出版実績を提示するものです。編集者あがりの出版プロデューサーは多いものの注意をしなければいけません。

出版希望者は大勢いるので、情報が乏しい人に「出版させてあげるよ!」なんて甘い言葉をかけて、お金を搾取する人が増えてきます。選択する側が賢くならないといけません。

いまの時代は、出版しても売れる保証はありませんから出版社の判断も早い傾向にあります。重版率は1割程度といわれています。1万部を超えるのは1%程度です。

そのためには、人から応援されるネットワーク形成も必要になります。私がいずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれません。

皆さまのチャレンジが実を結びますように!

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)