AIに仕事を奪われた絵師の話が怖すぎた

黒坂岳央です。

イラスト1枚1万円で請け負う、フリーのイラストレーターの投稿が話題をよんでいる。

詳細はオリジナルの原稿を見てもらいたいのだが、AIの台頭で細々とやっていた仕事がなくなり、絵師をやめて再就職をするに至ったという話である。誰もがうっすら感じていた恐怖はすぐそこにある。この話に完全に無関係でいられる人は少なくないのだ。

RamCreativ/iStock

AIに仕事を奪われる人、奪われない人

同記事では「AIの台頭ですべての絵師が仕事を奪われたわけではない」と冷静に分析をしている。イラストレーターへ仕事を依頼する側のニーズには2種類ある。すなわち、「この人の描く作品が欲しい」と、「イメージに合うイラストを用意してほしい」だ。前者はその人にしか描けない、イラストに「属人的な付加価値」が付帯されるケースだ。たとえば有名漫画家などがこれにあたるだろう。これに該当する人々の付加価値は高まることが予想される。

しかし、同記事の絵師は自分は後者に該当すると自己分析をする。「誰が書いてもいいから、希望の画像を作成してほしい」というニーズがAIで代替されるようになったことで、自然に仕事がなくなったという話だ。

海外でも似たようなことは起きている。大型掲示板Redditに投稿したフリーライターは「10年以上のライター業をChatGPTに奪われた」といっている。クライアントは「人間のライターの方が品質が高いことは理解しているが、コスト面でAIの採用が決まった」という。

もちろん、それですべてのライター業がなくなるわけではない。人気小説家のように「この人の書く文章が読みたい」と思わせるような「ブランド価値」が付帯すれば、その人が書く必然性が生まれるのでAIに入り込む余地はない。

以上のことから、今後もAIに自分の仕事を奪われないために必要なことが見えてきた。「誰にでもできる仕事」はAIに仕事を奪われる運命にあるのだ。仕事にはある種、ファンがつくような「スター性」を求められるようになったのである。

誰でもできる仕事は消えていく

本稿ではイラストの話だったが、AIの進化を止めることは誰にもできない。従って現時点では「できない」が、時間をかけて今後は「できる」に変わっていく可能性は常にある。インフレに苦しむアメリカが高騰する人件費のソリューションに「完全無人店舗」を生み出したように、人口減少と人件費高騰がその流れに拍車をかけていくだろう。

過去において、AIが奪う仕事は単純労働だけで、クリエイティブな分野は人間がするべき仕事として生き残ると言われていた。しかし、人々の想像を裏切り、クリエイティブな分野にAIの手が到達するのは驚くほど早かったようだ。その逆に本当に単純な労働はすでに機械化されたものの、ロボットやAIの開発や導入、運用コストより人件費の方が安い単純労働はまだ生き残っている。なんなら建築や配送は法令や技術の面で早急な自動化が難しいため、そちらは価値が高まっているほどだ。

人間がAIとの戦いに勝利するには「AIを使って人間にしかできない付加価値の高い仕事」をすることである。つまり、これはAIを使って生産性を高め、そこにAIにはできない付加価値を乗せた仕事を当たり前にするようでなければ、技術革新で突然仕事が消える日がやってくるかもしれないということを意味する。生成AIは無料でいつでも誰でも使える。それにも関わらず、未だに生成AIを使わないでいる人は危機感を持つべきだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。