仮想通貨の税金、実は思ったほど高くない?年収別シミュレーションで検証(村上ゆういち)

よく「仮想通貨の税金は高い」「利益の半分以上を持っていかれる」なんて話を耳にします。実際のところはどうなのでしょうか?

そこで本記事では、仮想通貨専門の税理士として、年収と仮想通貨の利益に基づいて、税金のシミュレーションを行ってみたいと思います。いわゆる億り人のような、利益が1億円以上出ているような方を除くと、意外とそこまで税金は高くないこととなりますので、参考までに見ていただければと思います。

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シミュレーションの前提条件

まず、シミュレーションの前提条件を3つ確認しておきましょう。

  1. 社会保険料は年収の15%で計算(従業員負担分)
  2. 所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみとする
  3. 復興特別所得税は考慮しない

では、早速ケースごとに見ていきましょう。

【ケース1】年収300万円、仮想通貨の利益50万円の場合

このケースでは、仮想通貨の利益が年間50万円、つまり月々4万円ほどの利益が出ているとします。

  • 仮想通貨なしの場合の税金:16.3万円
  • 仮想通貨ありの場合の税金:23.8万円

仮想通貨ありの場合、16.3万円は給与天引きで納税済みなので、差額の7.5万円が仮想通貨の税金となります。利益50万円に対して税金が7.5万円なので、税率は15%程度。意外と高くありません。

【ケース2】年収500万円、仮想通貨の利益100万円の場合

次に、年収500万円で仮想通貨の利益が年間100万円、つまり月々8〜10万円の利益が出ているケースです。

  • 仮想通貨なしの場合の税金:36.8万円
  • 仮想通貨ありの場合の税金:57.1万円

仮想通貨の税金は、57.1万円から36.8万円を引いた20.3万円。利益100万円に対して税率は約20%となります。これなら、株式の分離課税と同じ水準です。

【ケース3】年収800万円、仮想通貨の利益1億円の場合

最後は、ちょっと極端なケースです。年収800万円の会社員が、仮想通貨で一気に1億円の利益を出してしまったとします。

  • 仮想通貨なしの場合の税金:89.18万円
  • 仮想通貨ありの場合の税金:5263.88万円

なんと、仮想通貨の税金は5173万円。税率にして51.7%にもなります。これはかなりの高税率です。ここまで来ると、仮想通貨で稼いだ利益の半分は税金という状態になります。

仮想通貨の税金シミュレーションのまとめ

以上の結果をまとめると、次のようになります。

  • 年収300万円、仮想通貨の利益50万円の場合:税率15%
  • 年収500万円、仮想通貨の利益100万円の場合:税率20.3%
  • 年収800万円、仮想通貨の利益1億円の場合:税率51.7%

つまり、仮想通貨の利益が多ければ多いほど、税金の負担が重くなる(これが、総合課税)ということです。ただ、利益が100万円程度なら、税率は20%前後とそこまで高くありません。一方で、利益が1億円を超えるようなケースでは、覚悟を決めて税金を納める必要があります。

仮想通貨の税金について、利益の半分以上を持っていかれるというのは必ずしも正しくないことが分かりました。とはいえ、利益が大きくなればなるほど税率も上がっていくので、しっかりと計算して納税の準備をしておくことが大切です。

仮想通貨の税務は、ケースバイケースで複雑なところもあります。少しでも不安があれば、専門家に相談するのもいいかもしれません。税金は国民の義務ですから、きちんと納めつつ、賢く運用していきたいものです。

村上ゆういち (税理士・公認会計士)
新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)、横河電機株式会社、アカウンティングフォース税理士法人での勤務を経て、2020年に村上裕一公認会計士事務所設立。現在は「魔界の税理士」としてSNSやyoutubeでも活躍し、仮想通貨(暗号資産)・NFT・ブロックチェーンゲーム領域を専門とする。
公式サイト https://crypto-cpa.jp/
X https://x.com/Jeanscpa
YouTube 魔界の税理士ちゃんねる https://www.youtube.com/@makai-tax

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年7月8日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。