海外との投資の関係:日米独の投資バランス

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日本、アメリカ、ドイツの相手国別対外直接投資残高、対内直接投資残高について可視化してみます。

1. 日本の対外直接投資残高

前回は、直接投資残高について、人口1人あたりの水準比較をしてみました。

日本は比較的対外直接投資が多い方ですが、対内直接投資は先進国で最低水準となります。

今回は各国の直接投資残高のバランスについて、相手国別シェアで見てみましょう。

まずは、日本の状況からです。

国内データ(円ベース)は以前の記事でもご紹介しましたので、是非ご覧ください。(参考記事: ストックから見る直接投資

図1 対外直接投資残高 2022年 日本
OECD統計データより

図1が2022年の日本の相手国別対外直接投資残高です。

アメリカが圧倒的な水準で35%のシェアです。

続いてオランダ(7%)、中国(7%)、イギリス(7%)、シンガポール(5%)、オーストラリア(4%)と続きますね。

直接投資ではアメリカ、中国だけでなく、オランダやイギリスの存在感が大きい事も特徴的です。

また、日本の場合はシンガポールやオーストラリア、タイ、香港などアジア・大洋州エリアの国々の存在感が大きいようです。

2. 日本の対内直接投資残高

続いて、日本の相手国別対内直接投資残高です。

図2 対内直接投資残高 2022年 日本
OECD統計データより

図2が2022年の日本の相手国別対内直接投資残高です。

日本は対内直接投資がかなり少ないのですが、その中でのシェアである事にご注意ください。

やはりアメリカ(30%)が断トツですが、2番目に規模が大きのがフランス(16%)というのが印象的ですね。

何故フランスが日本に投資しているのか、とても興味深いです。

続いて、シンガポール(14%)、香港(9%)、スイス(5%)、台湾(4%)と続きます。

日本の対内直接投資の特徴は、日本に投資している国が限られていて、上位10か国でシェアの約9割を占める事です。

アジア圏も多いですが、いずれもシンガポール、帆痕、台湾など比較所得水準の高い国々ですね。

西欧諸国を見ても、上位に入るのはフランス、スイス、ルクセンブルクなど所得水準の高い国です。

やはり、対外直接投資は基本的には自国と同等か、それ未満の所得水準に対する投資という事になりそうですね。

3. アメリカの対外直接投資残高

続いて、アメリカの相手国別直接投資について眺めてみましょう。

図3 対外直接投資残高 2022年 アメリカ
OECD統計データより

図3が2022年のアメリカの相手国別対外直接投資残高です。

イギリスをはじめ西欧諸国との関係性が強い事がわかりますね。

イギリス(16%)、オランダ(14%)、ルクセンブルク(9%)、アイルランド(9%)でほぼ50%となります。隣国のカナダは7%です。

アジア・大洋州地域ではシンガポール、オーストラリア、香港が上位国(15位以内)に入りますが、日本は入りません。

日本は約800億ドルで、17番目の水準となっています。

4. アメリカの対内直接投資残高

続いて、アメリカの対内直接投資残高です。

図4 対内直接投資残高 2022年 アメリカ
OECD統計データより

図4が2022年のアメリカの相手国別対内国設投資残高です。

上位から日本(15%)、カナダ(13%)、イギリス(13%)、ドイツ(12%)、フランス(7%)とG7諸国が並びます。上位4か国で50%以上を占めます。

特に日本からの直接投資が最も多いというのが印象的ですね。

日本は対アメリカで、直接投資が大きく超過している事になります。

アメリカの日本からの対内直接投資が7750億ドルですので、差引7000億ドル程度が日本からの直接投資超過となります。

5. ドイツの対外直接投資残高

続いて、ドイツの直接投資について眺めてみましょう。

図5 対外直接投資残高 2022年 ドイツ
OECD統計データより

図5は2022年のドイツの相手国別対外直接投資残高です。

やはり第一はアメリカ(18%)ですが、オランダ(16%)、ルクセンブルク(13%)もかなり大きな規模です。

フランス(6%)、イギリス(6%)、中国(5%)が続いますが、ほとんどが西欧諸国で締められるのが特徴的ですね。

ドイツは東欧諸国への直接投資が多いイメージでしたが、ポーランドが2%、チェコが1%とそれほど多くはないようです。

日本への対外直接投資残高は130億ドルで、25位となります。

6. ドイツの対内直接投資残高

次はドイツの相手国別対内直接投資残高です。

図6 対内直接投資残高 2021年 ドイツ
OECD統計データより

図6が2021年のドイツの相手国別対内直接投資です。

アメリカが21%で第1位ですが、2番目はドイツとなっています。

何故対内直接投資に自国が含まれるのか良くわかりませんが、よく見ると日本、アメリカでも対内直接投資で自国が計上されています。詳細はまた勉強して共有したいと思います。

ドイツの対内直接投資は、ルクセンブルク、イギリス、オランダ、スイス、フランスと西欧諸国が多いです。

日本も5%と、上位国に入っていますね。

他国からすると、日本は自国に投資してくれる存在ではありますが、自国から投資する対象ではないような印象を受けます。

7. 相手国別直接投資残高の特徴

今回は、日本、アメリカ、ドイツの直接投資残高について、相手国別のシェアをご紹介しました。

当然ではありますが、基本的には各国とも自国の属する地域との関係性が強い事がわかります。

日本の場合は、アメリカに対してもドイツに対しても、投資をする金額はそれなりの規模に達していて、各国での対内直接投資の上位に入っています。特にアメリカに対しては最も直接投資をしている国となります。

一方で、アメリカやドイツからの直接投資はほとんどなく、各国の対外直接投資の上位国には入っていません。

日本は経済規模なりに対外投資はしているものの、対内投資の対象になりにくいという特徴が見えてきます。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。