元弁護士で議員の広瀬めぐみ氏の給与搾取事件は驚くべき醜態です。取り調べが割とすんなり進んでおり実態が見えてきましたが、要は広瀬氏が議員活動をするにおいて金が足りなくなりその金策のアイディアを別の国会議員秘書から聞いて自分もやってみたということのようです。厚顔無恥、議員辞職は免れない失態です。レベルもモラルも人間力も低すぎで、こんな人を市民の代表選手にした地元の人は後悔の念でしょう。本人は「これぐらいわからないよね」ぐらいだったのでしょうが、今の世の中では通じません。ましてや議員などは私生活まで丸見えに近い状態だと覚悟すべきです。
では今週のつぶやきをお送りします。
思わず苦笑い。歯車が狂った株式市場
水曜日、FOMC後のパウエル議長の記者会見でいつもの女性記者が「議長、なぜ今回、利下げを決定せずに9月まで判断を先送りしたのですか?」に対して「データがそこまでそろっていない」という趣旨の回答でした。欧州中銀も利下げ、英国中銀も利下げ、カナダは既に2度利下げに踏み込んでいる事実からするとアメリカのデータは脆弱な基盤の上で成り立っていた可能性があります。それともパウエル氏は「アメリカは他国とは違う」という自負があったのでしょうか?これで9月の利下げはあるなしの議論から50BPの下げの可能性、ないし市場が沈静化しなければ9月を待たずに緊急利下げの可能性がないとは断言できません。パウエル氏の判断ミスが問われそうです。
本日発表になった7月の雇用統計は事前予想の17.5万人増に対して11.4万人増で着地。失業率は0.2BP悪化の4.3%です。それ以上に市場に激震が走ったのがインテルの酷い決算で株価は1日にして一時3割ほど下落、ダウもナスダックも暴落です。一足早く東京市場が木金の2日間で想像を絶する下げを記録、金曜日の下げは87年のブラックマンデーに次ぐ規模となりました。当時のことは鮮明に覚えていますが、あの時は翌日に市場がもの凄い反転をし、ストップ安からストップ高という大乱高下でした。残念ながら週明けは更に1000円程度続落からスタートしそうですが世の中の本質がそっちのけなのでどこかで急速な巻き戻しになると信じています。
誰も想像してないかったこの下げに様々な理由を並べるメディアや専門家がいますがそれは全部無視でよいと思います。プログラム売買が一方的な動きを見せている、それだけです。本来であれば人間が判断し、様々な考えがぶつかり合う民主的な株式市場であるべきがAIを含むプログラム売買の独壇場になり市場が極端な値動きになりやすくなったのです。賢いと思った自動売買システムが歯止めを失ったということでしょう。余談ながらそのAIですが、AIを使ったビジネスモデルで儲けた会社はゼロです。チャットGPTのビジネス規模は40億ドル。このビジネスが利益を出すには2000億ドル規模で150倍引き上げねばなりません。AIに沸いた市場ですが、実はそれをマネタイズする方法がまだない点は市場への冷や水になるでしょう。
小林製薬への批判、止まらず…
この会社のガバナンスを見ていてひょっとするとビッグモーターと双璧ではないかと思った方もいるのではないでしょうか?古い自社工場の衛生状態が原因で76人もの命を奪い、更に調査中の案件も考慮すると日本の企業史に残る悪例となりそうです。同社は同族会社で会長と社長は親子。引責辞任した会長には顧問として月200万円を支払うとのこと。同社の標準的な顧問料は月50万円も創業家会長経験者には4倍払うという大忖度の社内常識、息子は降格ながらも取締役に残るという判断をしました。普通なら創業家と会長は私財を投げうってでもお亡くなりなった方への補償を考えるべきでしょう。
ジャニーズの問題の際も喜多川氏が亡くなったこともあり氏と実質的に同体だったジャニーズという組織が補償を行っています。今回の場合、創業家の父子の経営責任は極めて重いのです。その息子が取締役に残るというのは役員会そのものが腐っているYESMANの集まりだとしか言いようがないのです。経済同友会の新浪剛史代表幹事が「世界に対しみっともないメッセージだ」と述べているのはそのとおりであります。金と地位と名誉にくらんで判断すらできなくなった創業家ということになります。
ビッグモーターの二の舞を前提とするならば同社はいずれまともな部分と補償を行う清算会社に分離し、まともな方は第三者による買収があり得ます。今のままで存続することは市場が許さないと思います。幸いにして企業としての価値はまだあるし、株価が事故後も奇妙に堅調な動きになっています。8月8日に第二4半期決算発表ですが先々の見通しがつかないので24年12月期は未定にする可能性が高いと思います。日本ではあまりにもひどいガバナンス事件が多すぎます。もちろん海外でもあるのですが、日本のレベルは相当ガラパゴス化して世界水準から大きく取り残されたようです。
アメリカの大統領選は外見重視か、中身重視か?
アメリカ大統領選挙については支持率だけを見れば降り出しに戻ったというトーンも見られます。大統領選挙が人気投票化するのは今の時代では防ぎようがないのかもしれません。「外見重視」とはSNSなどを駆使し、国民の気を引く手法が取りやすくなり、ポピュリズムを支える重要な手法という意味です。それが正しい選び方だとは私は思いません。ましてや一国の大統領選びとなれば100のイシューに対してどのように対応するのかをまさに審査員のごとく判断する必要がありますが、多くはSNSを介した飴玉トークに引きずり込まれるのです。
ハリス氏の支持率が高めに出ているのはバイデン爺がようやく大統領選から降りたという嬉しさや老々対決からの解放、更には女性の候補、アンチトランプ派の受け皿ということですが、どれもこれも消去法的選択なのです。ハリス氏が真の意味で大統領候候補としてふさわしいと思っている人は割と少ないはずで、大統領選が単なる天秤ゲームになってしまったということであります。
ではハリス氏は何をしてくれるのか、多分、ほとんど誰も答えられないと思います。本人が明言していないからです。では彼女の想像しうる政策ですが、過去の動きから見るとバイデン踏襲とされますが、もっと左寄りになり、平等主義が強まると思います。彼女の本質がそこにあるのです。となればアメリカの景気が落ち込めばハリス氏の政策は有利になります。一方で対中国、ロシア、ウクライナ、イスラエルといった目先の外交ポジションが見えません。外交は選挙のネタになりにくいですがアメリカの関与は深く、これを避けるにはいかないのです。パリス氏は副大統領時代を通じて色が薄かったので大々的に踏み込んだ政策は期待できないとみています。大統領選が美人投票ではないことを祈ります。
後記
来週に迫ったバンクーバー最大のアニメイベント、アニレボに今年も出店するにあたり「ただ商品を売るのではなく面白いことをしたい」と思い、一日だけですが、声優さんとコラボが実現しそうで会場でお楽しみミニイベントをやります。商売もモノを売るのがハードならサービスや付加価値、雰囲気作りがソフトバリュー。口で言うほど簡単ではないですが、毎年同じことをやるのではなく、工夫して集客する努力は続けないと売り上げは維持できないです。ビジネスは本当に日々の積み重ねだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月3日の記事より転載させていただきました。