主導者とフォロワー:大衆とAIが強烈に後押しする雪崩現象

金融市場が大荒れです。ニュース欄を見ればオリンピックとマネーの話ばかりで多少辟易としていますが、マネーの話は皆さんのお財布に直結することなのでそれにも関係する現代のトレンドについて個人的な思いを記してみたいと思います。

先週のつぶやきで市場の動きに関して私はこう述べています。「誰も想像してないかったこの下げに様々な理由を並べるメディアや専門家がいますがそれは全部無視でよいと思います。プログラム売買が一方的な動きを見せている、それだけです。本来であれば人間が判断し、様々な考えがぶつかり合う民主的な株式市場であるべきがAIを含むプログラム売買の独壇場になり市場が極端な値動きになりやすくなったのです」。

市場の講釈は無視でよいというのは無謀ないい方かもしれませんが、今の世の中の動きや判断は非常に小さい事柄がトリガー(きっかけ)になりそれを大衆とAIが強烈に後押しすることで雪崩現象が起きる、と申し上げているわけです。

私はマネーの市場にどっぷり浸かっているので日々、様々な情報が錯綜しているのを見ています。その多くは値動きに対しての後講釈なのです。「こう動いたのは〇〇が原因だ」と。大胆な予想がなかなか出せないのは一流メディアが予想記事を書くことは品位の問題が生じることと外した時のリスクが大きいからです。

では実際の市場はどうなっているか、と言えばアメリカのような巨大な市場に於いては市場参加者が非常にバラエティに富んでいることで考え方が一つになりにくいのです。がっぷり四つというのがわかりやすい表現だと思います。一方、金融市場ではインパクトある事象が日々起きています。企業決算、中央銀行の政策発表、政府の方針…。これらの発表はがっぷり四つの市場に対して歪み(バイアス)を引き起こすのです。たいがいはその歪みはわずかなのですが、なぜか突如大雪崩を引き起こすのです。

選挙に於いてある政党が他の政党の議席をごっそり奪い大勝することを英語でlandslide victoryと言います。まさに雪崩という表現になっている理由はあるきっかけが大きな一般社会に大きなトレンドを作りうねりながら一つの帰着点に向かうという訳です。

こう見ると小さな歪みに対して大衆が現在の状況を必ずしも満足していない場合に引き金を引き、大雪崩が起きるとも言えます。「主導者とフォロワー」というタイトルをつけたのはその両方が共振した時、それまでの常識をあっさり覆すことになると考えています。

ではそれまでの常識とは何でしょうか?金融市場で見れば「アメリカ経済は高金利下でもソフトランディングできる」と信じていたわけです。ところが実は企業ベースでは苦しみに耐えて我慢大会だった、そして決算の時に落ちこぼれ企業が発覚し、「あれ?思っていたのと違うぞ」ということになるのです。

これは専門家が作る一定のset the tone (基調)の中での話であり、その専門家の期待値をベースに実際の結果が良かった、悪かったで市場は一喜一憂するのです。我々大衆は99.9%がフォロワーであると言ってよいでしょう。そう信じさせられていただけなのです。

例えばある企業について専門家は今期10%の増益があると予想します。ところが決算で8%しか増益がないとすれば株価は崩落するのです。企業から見れば10%と予想したのは専門家であって我々は努力して8%増益になったじゃないかと。事実、多くの場合、決算発表で会社側は「We are pleased to announce ….」なのです。pleased という表現は会社側にとって喜ばしい意味で使うのです。全くずれていると言ってよいでしょう。

これが政治の場合だとどうでしょうか?選挙で自分の推した人が当選すれば期待値は合格圏内(80点かもしれないし95点かもしれません)になります。ところが期待以上の仕事をすることはほぼ難しいのです。なぜなら期待値がそもそも高いのでそれ以上のポイントゲットとなる功績が作れないのです。こうなると時間経過とともに嫌なところが目立つ、これが政権与党の支持率は時間軸と共に下がるという世界のトレンドを一応説明することができるのです。

秋に自民党と立憲民主党が党のトップを決める選挙をします。特に自民党の場合、その人が首相になるので自民党支持者非支持者関係なく注目するわけです。ただ、個人的には今回の選挙は全く期待していません。誰がなってもその期待値は相当低くなります。70点とか65点と言った具合でしょう。

なぜなら国民が一枚岩になっていないのです。よって誰がどうやっても高い支持率が出る背景がないのです。背景とは例えば戦争や疾病といった国と国民が一体となって対応すべき事象が今ないのです。日本が経済学で言うゴルディロックス(適温状態)下にあり、国民の価値観がばらけているのです。

日本の場合は今は主導者がおらず、フォロワーが右往左往する、こういう状態だとみています。むしろ、「この適温状態を壊してくれるなよ」という意見が最大のトーンであり、こたつから抜け出せない状態にあるとも言えるでしょう。特に高齢者になればなるほど変化対応が苦手になるのでそのような声はより強くなるということでしょう。

そんな世の中でお前はどうするのか、と言われたら「物事の本質を見極める努力をするしかない」と申し上げます。メディアに上がる三流ニュースや偏重記事はスルー。もっと大局からみるために日々のニュースや月刊誌よりも書籍を読むことだと思います。それしか身を守る方法が私には思い浮かばないのです。右往左往せず、両足をしっかり大地につけたいですよね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。