やっているフリだけの防衛省のコンプライアンス調査

防衛省が防衛関連企業にコンプライアンス上の問題がないか調査させます。単にやっているフリのアピールでしょう。

防衛関連100社に点検要請、架空取引の有無など 防衛省 日経新聞

防衛省は川崎重工業からの潜水艦乗組員らへの金品提供問題を受け、同省と装備品の製造などで契約関係がある防衛関連企業100社に点検を要請する。取引先企業との架空取引や自衛隊員への金品提供の有無を調べてもらう。不祥事を防ぐ対策がとられているかどうかも確認する。

各社のコンプライアンス部門に協力を依頼して調査してもらう。9月20日までの回答を求める。回答内容は「特別防衛監察」の結果とあわせて公表する。木原氏は結果の公表時期は進捗状況などを踏まえて検討すると説明した。

一般に市場で取引されない航空機やミサイルなどの装備品の調達価格は製造原価に利益率を含めた一定の経費率を加えて算出する「原価計算方式」をとる。同方式で防衛省と契約を結ぶ企業が点検の対象となる。

企業にそんなことをやらせる前に防衛省の監視体制を確率すべきです。そもそも原価計算なんていい加減ですよ。防衛省はメーカーには原価+8パーセントの利益だといっていますが、NECは17パーセントと言われています。多かれ少なかれ原価に加味している会社ばかりです。逆にいえばそれをやらないと事業が成り立たない。

防衛省 Wikipediaより

更に申せば商社の利益率は低すぎる。3パーセントとかのマージンで商売できるわけがないでしょう。人件費も高いし、提案しても決まらない製品もある。また採用までに何年、下手すれば10年以上かかります。代理店としてメーカーとのやり取りだって、実際に会いに行ったりしなければなりません。それでその低マージンで商売が成り立つわけがない。だから商社は別途、代理店フィーという形でメーカーからもらいます。これが不透明になる原因にもなっています。

こういう現状ほったらかして、企業にコンプライアンス云々いっても何もよくなりません。
加えて言えば防衛省、自衛隊は調達部門が慢性的に人手不足で、能力も低い。調達要因は英仏独より一桁少ない。それでいて、他国が5年で終わる調達を30年も掛けてやる。単純6倍も手間がかかります。人で不足は無能な防衛省の起こした人災です。

防衛省は川崎重工と三菱重工から交互に隔年で1隻ずつ潜水艦を調達しており、海自が保有する計25隻のうち12隻が川崎重工製だ。年間400億円程度の市場を2社で分け合う構図が定着している。

だから一社に統合すりゃいいんです。競争原理なんて働いていないんですから。1社に統合すれば管理は1社分で済みます。また将来クルーの手当ができなくなって、潜水艦隊は縮小せざるを得ない。であれば2社体制は維持できません。一社に絞って管理を厳しくすべきです。

政府は防衛力の抜本強化の一環として防衛産業の基盤底上げを進めている。防衛装備品の国産化の推進や海外移転などで収益を得やすい環境づくりに取り組む最中だ。

一方で防衛産業はこれまで一部の企業が契約する状況が続き、形式などが見えにくい問題なども指摘されていた。唯一の受注先が防衛省・自衛隊でなれ合いが生まれやすい環境にあったとも考えられる。

既存の防衛産業で、海外市場で戦って業績を伸ばすという野心を持ったところは殆どナイスよ。例えば自社の自衛隊トラックを自慢しているいすゞですら軍用トラック市場に参入しようとはしていません。ヘリ産業とかも同じです。ニコンの潜望鏡だって先はありません。

みんな防衛省の商売にしがみついて、税金吸ってクズを高い値段で売りつけて今の商売を維持することしか考えていません。つまり寄生虫、あるいは子供部屋おじさんと同じです。最後は住友重機やコマツみたいに、さんざん高コストのクズを売りつけた挙げ句に撤退します。つまりは税金のムダ遣いです。

将来発展する可能性がまったくない、能力も低くてコストはバカ高いメーカー、そして防衛省は事業の統廃合すら指導するつもりはない。であれば輸出する気も、実績もない防衛メーカーには発注をしない、つまり潰すべきです。

【本日の市ヶ谷の噂】
海自の潜水艦の修理関連の裏金が問題となっているが、艦艇修理の現場に立ち会う隊員には熱中症で倒れるものが続出しているが海幕は知らんふり、との噂。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態

月刊軍事研究8月号に防衛省、自衛隊に航空医学の専門医がいないことを書きました。
軍事研究 2024年 08 月号 


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年8月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。