感じたままを話してはいけない

黒坂岳央です。

名の知れた人、所属が明らかになっている人が失言して炎上してしまうことが時々起きている。「なんでそんな内容をSNSという世界につながった空間へ投稿してしまうのか?」と周囲から言われてしまいがちだ。

しかし、失言をする人はまったく珍しくない。自分はリアルでもネットでも、「それは言ってほしくないな」とデリカシーのないことを言われることはある。

自分が感じたそのままを話すべきではない。

Alona Horkova/iStock

感じたことを話したい本能

人間には自分を理解してほしい、共感してほしいという本能を持っている。これは女性だけでなく、男性も同じである。キャバクラに通う根本的な理由は「話を聞いてもらいたい」というニーズを満たすために他ならない。

この記事の執筆も根源は同じで、仕事のためという以上に「自分が主張したいこと」を書くためである。もちろん、中には記事に対して反発も寄せられるが、「ためになった、面白かった」と言われると嬉しく感じてまた書こうという気になる。

感じたままを口に出さないようにグッと堪える行為は本能に逆行するしんどさがある。「誰かに聞いてほしい。自分の中で溜め込みたくない」このように考えることはなんらおかしなことではないのである。問題はその吐き出し先である。

ホワイト社会の振る舞い方

過去記事「ホワイト社会」は本当にホワイトなのか?という記事で書いたが、我々はホワイト社会を生きている。この社会においては、特定の属性に否定的な意見を出すこと自体が問題視されてしまう。これは自分が他人から否定されない社会ではあるが、裏を返せば自分が他人を否定することも許されない社会なのだ。

ホワイト社会の振る舞いはかなり難易度が高い。自分が感じたまま、思ったままを公の場に投稿して、それが社会の禁則事項に抵触すればあっという間に炎上する。自分の所属団体が明確になっていた場合、問題はさらに大きくなる。

個人的にはホワイト社会は決して理想ばかりではないと思っている。たしかに否定されることは少ないが、自分の弱点を他人から指摘される機会が極端に少なくなってしまうし、「これはいっていいが、あれはいってはいけない」と一挙手一投足をまるで監視カメラで見られ続けているような窮屈さがあるだろう。

感じたままをいってはいけない

思ったこと、感じたままをいって許されるのは子供である。子供は正直に、自分が思ったままをズバズバとストレートにいってくる。別にそれで腹を立てることはない。むしろ、大人がうっすら感じているがおいそれと口に出せないことを堂々と言葉にするので、一周回って面白かったりする。

しかし、大人になって何らかの団体に属した途端に、いきなり思ったままを言ってはいけない世界に放り込まれる。その境界線の多くは就職だろう。しかし、生き方の切り替えがあまりに唐突すぎるために、ついていけずについ思ったままを発言する失言で失敗する人はどうしても出てくる。また、これまでは先輩や上司が間違いを指摘してくれたが、その指摘もパワハラに抵触するリスクが出たことで「誰からも間違いを指摘されないが、間違えれば一発退場」もあり得る難しい社会になってしまったのだ。

正直、一定の経験を経た人でない限り、なるべくSNSは読む専門にして投稿はしない方が良いだろう。SNSは本音を出す場ではなく、仕事と情報収集のツールなのである。本音を出す相手は友達か家族限定にすべきだ。我々は元々そうした世界を生きていたし、今後もその世界に戻るだけである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。