勘違いしていたお金の間違った思い込み

黒坂岳央です。

お金についての思い込み、誤解は少なくない。また、人によって「お金」ほど増やし方、貯め方、使い方に個性が出るものはないだろう。

自分自身、非常に多くの人から聞かされてきた「お金とはこうあるべき」という意見を鵜呑みにしていた時期もあったが、今振り返ると「間違った思い込みだった」と感じることがあるので取り上げたい。

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誤解1. たくさん貯蓄しないと将来困る

「若い内から資産形成しないと、老後に困るよ」という意見は世の中、非常に多く出回っている。その理由は年を取ったら労働市場からあぶれて働けなくなるからというものだ。

我が国は30年間もの長いデフレ経済に陥っていた。仮にデフレがずっと続く前提ならこの意見は確かに正しい。デフレ経済下においては、企業は採用を控えるためだ。しかし、現状ではまったく逆の事が起きている。現在は高度経済成長期以来の空前の人手不足かつデフレからインフレ経済への転換期であり、中小企業をはじめ後継者不足、人手不足で倒産するところが多く出ている。その気になれば何歳でも働ける。

また、名著DIE WITH ZEROによると、老後は思ったほどお金を使わない…いや使う力がなくなるためほとんどのケースでは、死ぬ直前に最もお金持ちになるということが明らかになってきた。このデータはアメリカ、日本共通していえることだ。

確かに将来の不確実性に備えて、ある程度の貯蓄が必要という意見は正しい。だが、過剰気味に老後貯蓄を頑張り過ぎることは間違っているように思える。その気になれば老後以降もずっと働けばいいし、地方の土地が安く放置されているなら買い取って家庭菜園で最低限の食い扶持を作ればいい。「老後は体にガタが来る」という人は少なくないが、若い頃から運動習慣を作って体力づくりをすることでかなりの程度、若い頃の体力を維持できることも医学的に明らかになっている。

老後の備えのために、若い時期にしかできないことをひたすら我慢し、必要な自己研鑽まで節約するというのはトータルでは損をするということがわかってきた。将来の備えは思っていたほどバラ色の老後を約束するわけではないのだ。むしろ、過剰な備えで若い頃にしかできない経験をロストするリスクは確実な後悔になるだろう。

誤解2. 収入はマクロ環境で決まる

自分は就職氷河期で、遅く入学した大学を出た直後にリーマン・ショックを食らったので、「経済状況が就職に与える影響の大きさ」は人一倍、肌感覚で理解しているつもりである。

そこを理解した上で「それでも収入の多寡はマクロ環境で決まるという考えは必ずしも決定的ではない」と意見を主張したい(ゼロとは言わない。あくまで決定的ではない)。確かに不況より好景気の頃の方が何かと有利である事実は否定しない。実際、就職氷河期世代は非常に大変な思いをしたし、その後遺症に未だに苦しんでいる。

しかし、この理論は経済学的、社会学的には正しくても、あくまで個人レベルでいえばマクロ環境は本質的ではない。不況だろうがデフレだろうが、どんな時代でもやる人はやるし、逆境をはねのけて成功を手にする人はいる。その逆にどれだけ好景気でも、バブルという有利なトレンドにまったく乗れない人はいくらでもいる。「まあその気になった時に」とまるで永遠に追い風が続くと慢心してしまうことで、せっかくの目の前のチャンスを逃すからだ。

自分の場合、むしろリーマン・ショックで就活で非常に苦しんだからこそ、労働市場における好ましい振る舞いやビジネス感覚を学ぶことができたと思っているくらいで、その時の経験は未だに活きている。仮に当時、らくらく就活していたらビジネスの厳しさを舐めてあとから苦労することになっただろう。

正直、人生を変えるような挑戦をする時に「今は時期じゃない」とマクロ環境を意識してタイミングを伺っていたら一生何もできないまま終わる。

誤解3. 収入と苦労は比例する

「汗水たらしたお金は尊い」みたいな話は多い。この考えが染み付いてしまうと、「高収入を得るためにはより苦労しなければならない」という価値観が植え付けられ、「自分は高望みはしない。ほどほどの生活で苦労しない人生がいい」という考えが生まれる。しかし、実際これは正しいとは言えない。なぜなら「仕事やそのための勉強はしんどいもの」という前提での主張だからだ。

好きなこと、興味があることはもはやしんどいの対極にあることは少なくない。たとえば自分の場合、情報発信活動と、それに必要な知識や技術を仕入れる一連のプロセスを「楽しい」と感じる。その楽しさの質はまさしく、「遊びよりも楽しい」と感じるレベルである。そのため、ちょっとした余暇時間を得たら「遊びに出かけよう」と思うより「企画を立ててもう1記事、もう1動画作ろう」と考える。「暇なので働こう、学ぼう」という価値観である。

こうなると収入と苦労はまったく比例しなくなる。実質的には長時間労働をしている状態だが、その遊んでいる以上に楽しんでいるので働いている感覚がまったくない。パフォーマンスは高まる一方なので、あまり収入を意識しなくても増えていくのでお金に困ることはなくなる。

その一方で、やりたくないタスクは1時間でも苦痛を伴う。それ故に仕事は「いかにたくさん働くか?」ではなく「いかに楽しみながらできるものを選ぶか?」で決まってしまうと思うのだ。

お金については人によって意見が異なる。それ故に特定の人物、その相手がたとえ家族でも親友でも自分とは違った価値観を持っている可能性を排除せず、自分なりの価値観を探求するべきだと思うのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。