世の中のブラフには気をつけよう:森永卓郎氏「日経平均は3000円に」

ある番組で森永卓郎氏が日経平均が年末に1万円をつける、だけどその先、実は3000円まで下がると述べたのが一部で話題になっています。

森永氏は一応それなりの評価を得た経済アナリストですが、極端な意見を述べるのは彼のビジネスだからなのでしょう。つまり一般的に「絶対にありえない」ことを一定の影響力ある人がさもありなんと述べることで注目を浴びる、そういうことなのです。

森永卓郎氏 NHKより

氏の近著「書いてはいけない 日本経済墜落の真相」の中で日航機墜落事故の「真相」という項があります。これを読むとひっくりかえってしまうのですが、自衛隊機が撃墜したという説を一生懸命自分の論理に当てはめて書いています。

自衛隊機撃墜説というのは以前からあり、この説を唱える人はそれなりにいるのは知っています。それをどう捉えるかは読者の判断ですが、私は笑って読み流すというより「これは有害図書 R指定」にすべきぐらいに思うのです。つまり一般人が無意識に読む本ではないということです。

先日、私の長年の友人ながら皆さんの大嫌いな財務省主計局の某幹部職の方と酒を飲んでいた際、彼に一つ質問をしました。「財務省の人は高橋洋一さんをどう思っているの?」彼の答えは「彼のいうベースは基本は正しい。ただ、彼はメディア向けとしてのフレーバーをつけているだけですよ」と。つまり財務省の人間としては受け流しており高橋氏が自身のメディア向け活動をしているだけなのだと。

森永氏も高橋氏も話を「盛っている」のであり、Extremeにしゃべることで聴衆に刺激を与えているわけです。

森永氏は年末に日経平均が1万円まで真っ逆さまに下がると主張するその理由は、バブルの化けの皮が剥がれるというもの。仮に百歩譲ってバブルが崩壊しても今の価値を短期的に1/4にする論理的武装はほぼないはずです。つまりブラフなのです。

高橋氏が氏のYouTube番組でよく嘲笑、つまり小ばかにしながら笑い飛ばしているのも一種のブラフなのです。それを聴衆は100%信じるのか、50%なのか、10%なのか、はたまた見ている方が笑い飛ばすのか、ここに判断力の差が出てくるのです。

メディアに出ている人は大なり小なり大げさに言わなければ売れません。スタジオに呼んでもらえない、だから異論異説でもあたかも自分は全てを知っているという論調でまじまじと唱えるのです。堀江貴文氏にしろひろゆき氏、泉房穂元明石市長も皆同じです。天然キャラとして真意で喋っているのは成田悠輔氏ぐらいではないかと思います。

結局我々は日々のあふれる情報に惑わされている、そして有名人の「アッと驚く為五郎」トークをすると一般人が右往左往してしまうのです。よって我々はゲバゲバのように笑い飛ばせるかどうか、これが肝なのです(例えがあまりに古くて申し訳ないです。)

先日の日経平均の暴落はキャリートレードの巻き返しが主因と私は申し上げました。どこまで精算が進んでいるか様々な説がありますが、少なくともあの短い期間に50%以上が処理された公算があります。現時点で75-80%は清算が進んでいると思いますが、再びやや円安に振れているので巻き返しの巻き返しが若干起きている公算はあります。

では日経平均はどうなるのか、といえば「秋の事変」など影響ある事象が起きないなら引き続き4万円に向かって回復基調をたどるとみています。

株価を決めるのは最終的に個々の企業業績の積み上げなのです。わかりやすく言えば日本全体の景気とも言えます。その指標の一つであるPER(株価収益率)はわかりやすいものです。仮に現時点でのおおむね平均である15倍がなぜなのか、考えてみましょう。

15の逆数は0.0667です。これが実は意味があるのです。投資家が株価変動というリスクを冒してまで6.67%の収益を追い求めるとも取れるのです。これは銀行に預けるリスクがほぼない利息の収益との差がリスク取り分なのです。

たとえば銀行利息が0.5%だとすればリスクをとってまで期待する収益は6.17%といえます。では仮にPERが20倍になった場合、その逆数は5.00%ですからリスクをとって期待できる利益は4.50%しかありません。これでは少ないと考える投資家が多いのでそこまで買いあがることは新興企業ではない限りないのです。

この%の意味は不動産の収益計算で使う手法と同じです。キャップレートという発想ですが、結局、我々は一定の%の縛りの社会に生きています。インフレ率目標が2%、住宅ローン金利〇%、毎年のベアが〇%といった具合です。なので株価も%の縛りの中で動くのです。それを超えて動けばボリンジャーバンドという尺度で確率論として計算できます。3σを超えた場合0.3%の確率しかないといった具合です。

とすれば短期間でこの大きな枠組みが壊れるという森永氏の指摘は、どう見ても世界が崩壊するような天変地異がない限り起こりえないということになります。

そういえば私の友人が来年の7月に隕石が地球にぶつかると真顔で話していました。でもそういう方に限ってその話の根源、論拠は何処にあるのか、ちゃんと説明できないのです。「だってみんなそう言っているじゃない?」それは答ではありません。

コンサルやメディアの人は好き勝手なことを言えるのです。私はビジネスをしているので現実解を求めなくてはいけないということです。一般の人も当然現実解を持ち合わせるべきではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月21日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。