中国とどう対峙するか?

対峙とは、二者または複数の者が互いに向かい合う、直面する状態(実用日本語表現辞典)とあります。日本やアメリカ、台湾、フィリピン、更にはインドも含めた国々が中国と対峙をしている、この点については改めて確認する必要もないかと思います。

習近平国家主席 中国共産党新聞HPより

中国は中華思想のもと、中国を中心とした天動説のようなもので華夷思想とされます。中国を中心に遠方に行けば行くほど純度が下がり、差別的意識を持つ、そのような発想です。円周の外側が朝貢国で琉球王国などがその範囲でした。その外側は四夷(しい)という侮蔑する名前がついていて東夷、西戎、北狄、南蛮とそれぞれ銘打ってあります。東夷は日本本土と韓国が入り、例えば南蛮はベトナムやカンボジアが入ります。ではその円周とは何か、といえば中華思想のエネルギーが到達するエリアと解されており、その外側が差別意識を持った敵対相手といえます。とするならば中華思想に無限の広がりがあるのかといえば割と狭く、今の中国国土程度におおむね収まるともいえるのです。

台湾と沖縄を中国の影響下に置きたいと習近平氏が思うのであればこの中華思想概念の地図がその論拠とも言えなくはありません。

この中華思想を裏返してみれば中国をその思想範囲から外側に出さないよう絶対包囲するという現在の西側諸国の施策は歴史的思想に準拠した正しい政策であるとも言えます。その前提で更に推し進めれば中華思想を根源とする現在の中国共産党は西側諸国と相いれない関係でありアンタッチャブルな世界、よってデカップリングすべきというトランプ氏の唱える経済政策は紛れもなく正論であるとも言えてしまうのです。

ところで中国当局につかまっているアステラス製薬の社員がスパイ容疑で起訴されました。本件については日本政府も誠意をもって中国当局と折衝を続けてきていますが、状況が改善するどころかより混迷の度を深めています。ただ、私個人の勝手な想像ですが、中国がそこまで頑な姿勢を見せているということは何らかの明白で重要な理由があると考えるほうがナチュラルかもしれません。よって本件が理由で「中国怖い」「駐在、行きたくない」とメディアは煽りますが、そこはもう少し抑制した方がいいのかもしれません。

日本と中国のビジネスの関係を考えると貿易取引的には日本にとって重要な相手国ではありますが、私がもしもそのような立場にあり、中国に進出してビジネス拡大の商機を狙うかといえばないと断言します。理由は泥棒に追い銭だからです。日本の優れた性能やアイディア満載の商品を「オタク、買いませんか?」と揉み手で商売するエコノミックアニマル、売り上げ至上主義、自社さえよければ何でもよい、そうにしか見えないのです。相手は泥棒、良いところどりをして物まねされて挙句の果てに日本のモノより良い商品を安く提供する、それが中国なのです。

日本製鉄の上海、宝山鋼鉄とのパートナーシップが終わると発表されましたが、私からすればようやくその思いに至ってくれたか、です。自動車産業もほとんどが現地企業との合弁で結局、日本の自動車産業の技術が全部筒抜けになり、挙句の果てにEV化自動運転化を国家を挙げて進めた結果、中国に進出している日本の自動車メーカーは散々な思いをしています。日本の自動車メーカーよ、さっさと帰国せよ、それが私の思いです。

中華思想のエネルギーが届く円があるとすれば西側諸国はこのエネルギーを消耗させ、円を小さくする、その施策をとる必要があります。その中で経済制裁はボディブローのように効く効果抜群の政策であります。例えば西側諸国から強力な制裁を受けているイランは石油を中国など同盟関係にある国に輸出することで体裁を保っていますが、実情厳しい状況に変わりありません。これが中国になると工業製品の輸出を主力としていただけにその影響力は計り知れないものになるのです。

トランプ氏は中国との関係において氏が大統領になれば恒久的正常貿易関係(PNTR)(=最恵国待遇)を取り消すと表明しています。アメリカにおいてPNTRがあると自動的にMFN税率と称するWTOが決める世界関税基準が適用されてきました。氏が中国からの輸入品に6割の関税をかけるという法的ベースはここにあるのだと思います。これが適用されると隣国であるカナダはそれに歩調を合わさざるを得ないし、中国の受け皿となりつつあるメキシコは更なる影響を受けるのでしょう。日本にもその影響は及ぶはずで否が応でも中国とのデカップリングが進むことになります。

その場合、中国は一定の抵抗をするでしょう。が、現状、中国の分は悪いと思います。理由は国内経済がボロボロで不動産の負の遺産解消にはまだ20-30年かかるからです。当然ながら習近平氏はその時にはいくら何でもいません。氏のような共産的権威主義に対するカリスマ性を持った人材が共産党に溢れているとも思えません。事実、能ある者を習氏が潰し続け、YESMANだけを廻りに集めた最弱のブレーンの集団を作ってしまった習近平氏の責任は重いはずです。

中国とどう対峙するかですが、日本はクールな判断をする、これにつきます。敵対する必要はないですが、寄っていく必要もありません。対峙する関係はまだ数十年続くと思いますが、今の経済制裁をさらに強化し、中国包囲網を厳重にし続ける限りにおいて中華思想の根源のエネルギーはどんどん小さくなると考えています。

その間に日本は東南アジア、南アジアなど関係強化を図りながらアジアの盟主として安定した外交を着々と続けていくことが重要だと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月26日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。