コロナワクチン接種後の後遺症に苦しむ子どもを抱えた親は、子どもにワクチンを接種させたことで、自責の念に苛まれている。
新型コロナワクチン後遺症患者の会では、後遺症の患児を持つ親を対象に、ワクチンに関する情報源や接種することを決めた理由についてアンケート調査を行った。山梨県と岡山県でも、子どものコロナワクチン接種に関して同様の調査を行っている。今回、3つの調査から、親が子どもへのワクチン接種を決断した背景を探ってみた。
3つの調査から、テレビ報道が、情報源として、最も強い影響力があったことがわかる。インターネットニュースや新聞を加えれば、ワクチンに関する情報のほとんどは、マスメディアから得たものである。かかりつけ医からの情報で接種を判断した親は、ほとんどみられない。(図1)
それでは、どういった理由で子どもにワクチンを接種したのだろうか。患者会、山梨県、岡山県のアンケート結果を示す。(図2)
子ども本人が接種を希望した場合もあるが、おそらく、周りの多くが接種していることに影響されたのであろう。接種しないとイジメに遭いそうという回答からその辺りの事情が窺える。
本人よりも、同居する家族にうつさないためという回答が目に付く。さらに、社会全体の感染拡大を防止するためという回答もみられる。
変異株の出現により、ワクチンに感染予防効果がないことや集団免疫の獲得が困難なことは、かなり早くから指摘されていた。ワクチンを追加接種することで、変異株に対する免疫能が抑制されることも報告されていた。実際、ワクチンを打つほどコロナに感染しやすくなることを示す報告は多い。
ワクチンにとって不利な情報は、極力、国民に伝えられなかったのは周知の事実である。現在、ワクチン接種後に死亡した患者の遺族や後遺症患者自身が、国がワクチンの危険性を伝えないまま接種を推奨したことを違法として集団訴訟を行っているが、ワクチンのリスクを伝えることのほか、ワクチンの効果に関して正確な情報を伝えなかったことも問題視されるべきである。
国民は、ワクチンに関する情報のほとんどをマスメディア、とりわけ、テレビ放送から得ている。ワクチンをうった理由として、家族に感染させないためにという理由が多いが、「思いやりワクチン」「 大切な人を守るために」というキャッチコピーが、一時期、メディアで氾濫していた。
集団訴訟の原告となった当時高校生の女性が、第一回口頭弁論後の記者会見で、以下のような思いを述べている。
私は思いやりの心が大事だと思ってワクチンを打ったのに、病院からも学校からも、人に対する温かな思いやりを感じたことはありませんでした。思いやりワクチンが引き起こしたこんなひどい状況は、国がワクチン後遺症を公に認めていないせいで起こったのではないかと思います。
サッカー元日本代表が、「あなたとあなたの大切な人を守るためにも、ワクチン接種をご検討ください」と、政府広報CMで呼びかけていたことを思い出す。河野太郎元ワクチン担当大臣が、はじめしゃちょう、YOSHIKI、きゃりーぱみゅぱみゅなど、若者に人気のあるタレントやYouTuberとの対談を若者向けにSNSで発信したことはよく知られている。
タレントを動員した一連の広報は、いかにも、広告代理店が関わっていたことを思わせる。実際、ワクチン接種を推進するにあたって、厚労省は「新型コロナウイルス感染症のワクチン広報プロジェクト」をブラップジャパンというPR会社に業務委託している。
業務内容には、マスメディアを通じた効果的な広報の実施、非科学的な情報に対する対処が含まれているが、PR会社が主導する広報が、中立的な立場で、国民に情報を伝えたかを検証をしなければならない。業務内容には、記者勉強会、記者会見における関係資料の作成も含まれており、その資料を確認する必要がある。
今回のコロナ禍においては、国民はPR会社のメディア戦略に基づく情報をもとに、ワクチンを接種するべきか否かの判断を迫られた。公正な情報をもとに、納得してワクチンの接種を受けたかは疑問である。
接種後に死亡あるいは後遺症を発症しても、承諾書にサインして接種したのだから自己責任だという意見もあるが、自己責任とするには、十分なインフォームド・コンセントが前提である。
今回の検討で、子どもへのワクチン接種を決めるにあたっては、「大切な人を守るために」とテレビ報道が訴えたことが、大きな影響を与えたことが明らかになった。現在も在京テレビ局は、一律にワクチンに不利な情報を報道していない。
ワクチン後遺症について、筆者に取材を申し込んできたテレビ局関係者に聞くと、PR会社が企画した勉強会の成果によるのか、番組制作者の多くは、心底、厚労省の発表を信じているようである。少なくとも、メディアに属し、国民に医療情報を発信する立場にあるものは、一方的な情報のみでなく、対立する立場からの情報も入手し、公平に判断するリテラシーが必要である。