「謎の大量死」は終わったが、その原因は何だったのか

池田 信夫

ネット上ではいまだに「謎の大量死」という言葉が使われるが、状況はもう変わった。

今年6月の死亡数は117.6万人。昨年の3.6%増である。これは高齢化のトレンドで、特に大量死したわけではない(超過死亡数は独自集計)。

超過死亡数も減った

超過死亡数でみても、昨年より減っている。2022年後半~2023年初に「謎の大量死」がみられたが、そのピークは過ぎ、今は平年並みである。


図1 超過死亡数(国立感染研)

この大量死の原因は何か。私は2023年4月の記事で、コロナ偏重の過剰医療で本当の重症患者が後回しにされているのではないかと書いた。

超過死亡の増えた間接的な原因はコロナ感染ではなく、過剰医療による部分最適化なので、5類に落とすと全体最適に近づく――この仮説が正しければ、コロナを5類に落とす5月以降、超過死亡数は減るだろう(これは検証可能な仮説である)。

超過死亡の原因は「コロナ関連死」

この仮説は検証され、2023年5月に5類に落としたあと、超過死亡数は減った。それでも高水準であることは確かだが、その原因は何か。

最初に出した匿名アカウントの独自集計は超過死亡数が過大だが、コロナ死者数やワクチン接種数との相関をみるには便利だ。

図2

これによれば、コロナ死者数と超過死亡数の相関は高い。2023年初までは相関係数0.7以上である。したがって私が昨年の記事でも書いたように超過死亡のほとんどは直接・間接のコロナ死だと考えていい。

ワクチン接種との相関はランダム

ではワクチン接種数との相関はどうか。接種数が最大だったのは2021年だが、この年は前年に引き続いてコロナ死者は少なく、ワクチン接種の効果はほとんどなかった。

それが大きく変わったのが2022年である。年初からコロナ死が増え、同時に超過死亡数も増えた。このときはワクチン接種数と同期しているが、夏以降は接種と無関係にコロナ死者が激増し、23年1月にピークになった。

2023年5月に5類に落としてからコロナ死者数は前年より減った(超過死亡数は過大に出ている)。ワクチン接種との相関はランダムで、無関係である。

図2からいえるのは、超過死亡の増えた最大の原因はコロナ関連死だということである。これは直接感染しただけではなく、コロナの軽症患者に医療資源が過大に配分され、他の重症患者が後回しにされたことも原因だろう。

それは図3のように老衰(死因不明)や心疾患が増えたことでもわかる。寝たきりの患者の延命をあきらめて「お看取り」したケースが多かったものとみられる。

ワクチンは効果がなかったことが問題

もちろんワクチン接種で死亡する確率はゼロではない。特異体質で死亡する可能性はあり、厚労省の集計では累計で60人である。もちろんこれは厚労省が公式に認めた最小限の死者数だが、ワクチンのメリット(重症化を防ぐ効果)は、2021年まではこれより大きかったと思われる。

しかし日本では、2020年にはワクチンがなかったのに、ヨーロッパなどに比べて桁違いに死者が少なく、ワクチンを打った21年から死者が増えた。これはウイルスがデルタ株に変異した影響だろう。この年には(武漢株の)ワクチンを接種したが、ほとんど効果がなかった。

2022年から日本人に免疫のないオミクロン株が増え、流行の様相が大きく変わった。軽症の風邪が激増し、死者も増えた。ワクチン接種も増えたが、ほとんどきかなかった。8月や12月にはワクチン接種が増えたのにコロナ死者が増え、超過死亡数も最大になった。

これを「ワクチン接種が原因で超過死亡が増えた」と解釈するのは、全体の相関をみると無理がある。むしろオミクロン株に武漢株のワクチンがきかなかったと解釈するのが自然だろう。必要のないワクチンを打つから(統計的に一定の確率で)死者も出る。よくも悪くも効果のないワクチンを2.2億回も接種したことが最大の失敗ではないか。