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gopixa/iStock
人口1人あたりの直接投資収益について、統計データを基に国際比較してみます。
1. 1人あたり対外直接投資所得
前回は、海外への対外直接投資による所得(受取)や、海外からの対内直接投資に対する所得(支払)、その差引となる直接投資収益について国際比較してみました。
アメリカが圧倒的に高い水準ですが、直接投資収益については主要先進国の中で日本もかなり多いようです。
直接投資の多いオランダやスイスは、正味の直接投資収益で見るとかなり低めで推移している事も特徴的です。
今回は、より身近な比較となるように、直接投資による所得・収益について人口1人あたりの水準をご紹介します。
まずは、海外への対外直接投資から受け取る所得です。
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図1 対外直接投資所得 1人あたり
OECD統計データより
図1が対外直接投資所得について、人口で割った1人あたりの推移となります。
オランダとスイスが圧倒的な水準に達していますが、他の主要先進国では概ね同じくらいの水準で推移していますね。
2022年の数値では、スイス12,458ドル、オランダ10,585ドル、イギリス2,818ドル、アメリカ1,879ドル、ドイツ1,865ドル、日本1,650ドルです。
日本はやや少なめながらも上昇傾向が続いていて、2022年はフランスを上回ります。
スイスやオランダが1人あたり10,000ドルを超える水準というのは非常に大きいですね。
日本円で考えてみると、国民1人あたり平均で100万円以上の海外からの財産所得がある事になります。
2. 1人あたり対内直接投資所得
続いて、海外からの対内直接投資に対して支払う所得について見てみましょう。
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図2 対内直接投資所得 1人あたり
OECD統計データより
図2が人口1人あたりの対内直接投資所得です。
やはり、スイス、オランダが10,000ドルを超えてかなり高い水準に達しているのが印象的ですね。
スイスは2015年からのデータとなるので傾向はつかみにくいですが、オランダは近年急激に増加しているのがわかります。
どちらも対外直接投資所得に近い水準で、ほぼ相殺する関係ということが言えそうです。
その他の主要先進国では、これら2国と比べるとかなり低い水準で推移しています。また、対外直接投資所得と比べていずれもかなり低めの水準ですね。
直接投資残高では、対外直接投資よりも対内直接投資が上回るアメリカやイギリスでも、所得では対外直接投資の方が上回っているのが特徴的です。
日本は2022年で282ドルとかなり低い水準です。
3. 1人あたり直接投資収益
最後に対外直接投資所得から対内直接投資所得を差し引いた、直接投資収益です。
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図3 直接投資収益 1人あたり
OECD統計データより
図3が人口1人あたりの直接投資収益です。
日本は上昇傾向が続いていて、2022年ではドイツとほぼ同じ水準で、フランスやアメリカを上回ります。主要先進国の中では高い水準となるようです。
オランダは差引の収益で見ると、それほど圧倒的な水準ではなく、主要先進国と近い水準になっています。
対外直接投資による所得と対内直接投資による所得が同程度で、差引するとほぼ相殺するためですね。
主要先進国では基本的にはプラスで推移していて、水準もそれほど変わりません。
概ね人口1人あたり1,000~1,500ドル程度の収益という事になります。
4. 1人あたり直接投資収益の特徴
今回は、人口1人あたりの直接投資の所得・収益についてご紹介しました。
オランダ、スイスは人口が少ないながら、直接投資の多い国なので、人口1人あたりだと突出した水準となります。
ただし、対外直接投資所得と対内直接投資所得が拮抗しているため、差引の直接投資収益ではそれほど大きな水準というわけではないようです。
主要先進国では各国とも概ね近い水準で推移しています。
近年では、直接投資収益は人口1人あたり1,000~1,500ドル程度です。
主要先進国の所得水準は人口1人あたり数万ドル程度ですので、その数%程度の規模感となりますね。
これが多いのか少ないのかわかりませんが、海外への投資収益で生活が成り立つような水準というわけでもないようです。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。