総裁選を間近に控えた今、新総裁で湧きあがる前に岸田文雄首相の総括をしておく必要がありそうです。誰でも飛びつきそうな内容なのにメディアはまだ誰も書いていないようなので一足先に私見を述べさせていただきたいと思います。
ずばり、私は通信簿、90点を提示したいと思います。多くの国民、そして保守派の方々にとって安倍元首相の存在とその手腕、さらに任期も圧倒していたこともあり、どうしても比較論になりがちです。しかし、一般的に言われる大物首相の後は目立たない存在となりがちで、菅元首相が安倍氏を踏襲する形で後任となりました。菅氏の功罪についてほとんどニュースにならなかった記憶があります。その後を背負った岸田氏ですが、菅氏がいたにも関わらず、安倍氏との比較論をするからわかりにくくなるのであって全く別の個性を持った首相であるとみるべきでしょう。
私は岸田氏が当選した2021年10月の時点から「個人的には好きではないけれど長期政権になる」と申し上げ、その後、何度か危うい時もあったのですが、衆議院解散をせずにご本人が一つの区切りとした3年という就任期間を終えました。3年は一般企業の社長と比べるとざっくり半分ぐらいの長さですが、役人の人事異動がほぼ2-3年の循環であること、首相という激務をこなすのは一般企業の社長の何倍ものエネルギーを要することを考えれば十分な長さだと思います。
また安倍元首相は任期が例外的に長かったのですが、個人的に3年で成果を出し、バトンを渡すという意味ではちょうどよい長さではなかったかと思います。
では最大の評価はどこにあるでしょうか?私は何といっても外交、特に日韓外交では近年の首相では誰もなしえなかった成果を上げたと思います。これは絶対的レベルです。もちろん、韓国が保守政権になり、尹錫悦大統領が意志をもって日韓関係を改善しようとした先方の努力とフォローの風があったことも大きいと思いますが、確か両トップは6か月で6回ぐらいシャトル外交をしてあの難題だった徴用工問題の解決に導き、原発水の海洋放水も早々に理解を示し、日米韓の防衛強化にも踏み込みました。
外交についてはサミットの成果、ゼレンスキー氏から勲章をもらうほどの明白なウクライナ支援、バイデン大統領との蜜月な関係を含め、個人的には安倍元首相の外交といい勝負だと思います。戦後の首相の中では外交に関して文句なしのトップレベルの活躍だったと思います。
コロナからの回復についても試行錯誤の繰り返しだったと思いますが、政府部門が改善改革を繰り返して普段はお尻が重いお国の仕事が割と血まみれになりながらも努力していたと思います。また外国人観光客の賑わいぶり、コロナからの解放で国内に笑みと活気が戻ってきたこともプラスの材料です。
経済についてはインフレ問題が指摘されましたが、諸外国に比べて極めてコントロールされており、日本のインフレ制御は主要国では最高レベルだったと思います。比較参照しにくいので褒める人がいないと思いますが、これはもの凄いことなのです。また株価は史上最高値を更新し、新NISAで国民に投資の芽生えを提供しました。
一方、裏金問題について岸田氏は非常に苦労したと思います。ただ、安倍氏が政権末期、森友学園問題や桜を見る会など安倍氏自身が絡む問題で翻弄されたのに対して岸田氏は自身の身はずっと潔白に近かったと思います。もちろん岸田派の派閥裏金問題で岸田氏自身が全くシロという話でないのですが、岸田氏のイメージは最後までクリーンだったと思います。
一言で言えば一流企業において有能で社長にまでのし上がり、しっかりと業績を上げたタイプでしょう。世論には岸田氏への批判があるのは知っていますが、国を揺るがすほどの岸田氏へ厳しいバッシングはなかったと思います。事実、「岸田さんはよくやったよね」という声が多いのです。隠れファンのような感じでしょうか?
首相の座から降りた後も、岸田氏は自民党内で一定の影響力を持ち続けるでしょう。また、いわゆる現在の重鎮である二階氏、麻生氏、菅氏などは年齢が一段上ですので岸田氏は5年後の日本の陰の柱になると思います。まさに「岸田文鎮」であります。
首相最後の華をニューヨークの国連総会にして各国要人と最後の挨拶ができたのも外交の岸田への花束とも言えるでしょう。
個人的にもご苦労様でしたと申し上げます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年9月25日の記事より転載させていただきました。