貧乏を抜け出すのに必要な3つのこと

黒坂岳央です。

昨今、物価高やインフレで節約や貯蓄、投資といったテーマで記事や動画がたくさん出ている。そこでは断捨離を勧められていたり、セール日を狙って買い物をすることのコツを紹介されている。

しかし、20代まで貧乏生活をしていた筆者からすると、付け焼き刃的なコスト削減だけで抜け出すことはできないと感じる。現在は貧乏ではなくなったが、そこから脱することができたのはもっと抜本的な解決策だった。自分自身が実践して有効だったものを取り上げたい。

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見栄

若い頃は派遣や日雇いアルバイトまで非正規雇用で色んな会社で働いてきた。その後は遅れて大学進学、複数の企業で働き、その中には東証一部上場企業もあった。つまり、自分は色んな職場で色んな人間を観察してきた。

派遣やアルバイト時代には、正社員をしてからは出会うことがない人たちがいた。それは「極端に見栄を張る人たち」である。同じ仕事をしているのだからこちらも相手の時給がわかっている。時給は1100円、余裕なんてあるはずもなく手取りで20万円を超えることは難しかった。

だが、彼らはルイヴィトンのバッグを持っていたり、グッチの時計をはめていた。嬉しそうに「これ偽物じゃないよ。韓国で買ってきた本物」と見せてくる。当時は若かったのもあって高級ブランド自体が何かがよくわかっていなかったが、今ならわかる。所得と見栄は負の相関があるのだ。つまり、所得が低いほど見栄を張るコストが高く付く。

自分自身がそうだったのでよく分かるのだが、お金がない時期は経済力がないことを誰よりも強いコンプレックスを持っている。とにかく、バカにされたくない。相手から下に見られたくない。そこで自分を強く見せるアイテムに頼ろうとする見栄を張る。

ブランドバッグ以外でも、飲み会で後輩に奢ったり、収入に見合わないプレゼントを送る。すべては自分を強く見せるためだ。しかし、これを続けている限りは永遠にお金はたまらない。

エンゲル係数が高いほど貧しいという理論があるが、見栄のコストが高いほど貧しい理論も存在するのではないだろうか。すべては承認欲求の欠乏症が招くコストだ。貧しい間に見栄を捨てる方法は簡単。なるべく一人で過ごすことだ。勉強や仕事を頑張ればいい。そうすれば見せびらかす相手がいないので、見栄のコストを削減できる。

プライド

貧しいほど自分をよく見せるプライドが強いことは前述の通りだ。このムダに高いプライドは仕事にも影響する。

自分もそうだったのだが、貧しい時期ほどプライドが高くて単純作業や体力仕事を割り当てられると「バカにされた」「こんな泥臭い仕事したくない」とバカにされた気がしてしまうのだ。それがいやなら派遣やバイトを止めればいいのだが、その実力も抜け出す行動力もない。この状況が続けばプライドだけが高くなっていき、いざ鉄火場でがむしゃらに働かなければいけない局面でもプライドがじゃまをして必要な仕事ができなくなるのだ。

自分はサラリーマン時代は東証一部上場企業で働き、東大卒や海外MBAホルダーといったエリートと働いていたが、独立で一気に環境が変化した。地方移住するとそもそも大卒の割合が低いし、付き合う経営者や取引先も叩き上げばかりだ。最初は戸惑った。

しかし、プライドは捨てた。独立とは、社会的信用が一度ゼロになってしまうことを意味する。今では向こうから仕事が来てそれを選ぶ立場になれたが、最初の持たざるものだった頃はどんな仕事でもえり好みせず、明日を生きるために感謝してやるしかない。それが独立初期の現実である。

貧しい時期ほどプライドを捨てることは難しい。それを捨てたら最後、自分の手元に価値あるものなんて何一つなくなってしまうと考えるからだ。しかし、プライドではおまんまは食えぬという言葉の通り、まずプライドを捨ててがむしゃらに頑張ることがファーストステップである。

思い込み

最後は「自分の運命は強固で抗えないもの」という思い込みを捨てることだ。

自分は生まれた時から実家が貧しく、20代後半まで10万円以上の貯金をしたことがなかった。どことなく「自分は一生こんな感じなのかな」と漠然と思っていた。仕事を探す時も「時給が高いところは分不相応なので、こんな自分でも働かせてもらえる安い場所にいこう」と給料が高い職場を避けていた。自己肯定感の低さが豊かさを目指す心理的ハードルだったのだ。

しかし、これは人との出会いで変わる。自分の場合は妻との出会いだった。妻は自分の運命決定思考を粉々に破壊し「自分を安売りするな。高く売れるようにスキルの付加価値をつけ、それを正当に評価してくれる場所を求めよ」とアドバイスをくれ、高待遇の良い会社への転職へと成功裏に導いてくれたのだ。

この思い込みを捨てることは簡単ではない。自分は他者の働きかけで変われたが、一人では難しかっただろう。しかし、現代はそうした啓蒙をする記事や動画もたくさんある。上昇志向に溢れ成長意欲の強いコミュニティに属せば、大いに刺激をうけて人は何歳からでも変われる。現在の経済力は関係ない。努力すれば、自分にも豊かな世界の住人になれるという可能性を信じられるかなのだ。その際、言葉巧みに寄ってくる悪徳な人の詐欺に騙されないように気をつけてもらいたいところである。

今回紹介したものはすべて精神的なものであるため、「シャワーヘッドを交換してコスト削減」といった今すぐできるものではない。しかし、貧しさの根源は銀行の貯金残高ではなく、貧しい思考にある。ここを変えない限り、多少、省エネグッズを買い揃えてミニマリストにしたところで、蓄財することは難しいだろう。すべては思考を変えるところが起点だ。まず思考を変え、すると行動が変わる。それを長期で続けると習慣が変わり、やがて人生が変わるのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。