石破首相が選んだ早期解散:真の「国民主権」実現を望む 

石破新首相が「手のひら返し」をして早期の衆議院解散に踏み切ります。これまで新内閣発足時支持率は回復するのが常でしたから、早期に解散した方が政権を維持できると自民党幹部が判断し、石破氏がそれに配慮したのかもしれません。

官邸に入る石破茂首相 首相官邸HPより

ところが「選挙で国民の真意を問う!」といっても、現行の選挙制度には以下のような問題があります。

① 多額の選挙資金・費用
② 根回し、票集めの横行(時に贈収賄等の選挙違反も起こる)
③ 立候補者と有権者との距離感(政策、人柄等の情報や関わりの不足)
④ 有権者の選挙に対する受動的姿勢
⑤ 改善されない旧態依然とした投票方法

①は実質的に立候補者の選別に繋がりますし、②は高齢者を中心にまだ根強く残っています。③と④は裏表の関係でしょうし、⑤は「ネット投票」などが考えられます。

さらに国会議員や国会運営にも以下のような問題があります。

⑥ 高すぎる国会議員の給料
⑦ ⑥とも関連して当選することが目的化しがち
⑧ 昭和から続く非効率かつ硬直化した国会運営や議員数の多さ
⑨ 議院内閣制の限界?(国民が最高責任者[首相]を選べない)

こうした既存の政党政治・選挙制度のままでは、真の民主政治が行われるとは到底思えませんが、現制度下では投票が「国民主権」を行使できる数少ない手段ですので、投票しなければ自分の思いや要望は伝わりません。

相対的・消去法的選択であっても、選挙権を行使すれば僅かながら希望の光が見える可能性は0ではないでしょう。

筆者が選挙を通して政党・立候補者にズバリ訴えたいのは、

「数十年先の日本国家を明確にイメージし、今から何をすべきか? 」 

であり、そのためには目の前にある4つのリスクを直視すべきです。

1つ目は「食料・資源(エネルギー)」です。日本の食料自給率は38%、エネルギー自給率は13%であり、いずれも先進国最低レベルです。また輸入先にも偏りが見られ、特に原油は政情不安定な中東から95%も輸入しています。

パレスチナ問題が拡大する中、仮に供給国・地域で紛争・政変や大災害が起こり、急激に食料・エネルギー供給不足が生じれば、日本経済は壊滅的な打撃を受ける恐れがあります。

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2つ目は「災害」です。日本は世界でもまれにみる「災害列島」であり、地震、火山噴火、台風、集中豪雨などによる土砂崩れ、液状化、浸水などの被害は毎年のように生じています。そのため罹災地復旧作業や防災減災対策には、他国とは比較にならない莫大な費用と時間を要します。

3つ目は「長期的な人口減少」です。現在の人口動態が変わらなければ100年後に日本の人口は5千万人を切るといわれています。その時日本のGNI、高齢者医療・介護、年金受給、地方自治体(財政・運営)、過疎化など、一体どこまで悪化しているのか想像すら難しい状況です。

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4つ目は「財政赤字」です。毎年数十兆円もの歳出超過が積み重なり、日本の累積債務はすでに1300兆円となっています。諸外国と異なり債権者の多くが国内のため、まだ危機的な状況には至っていませんが、この先災害対策費や社会保障費の急増が避けられない中で累積債務が拡大し続ければ、借金はいずれ国富を超えてしまい、国債の暴落を招きかねません。

日本がこれだけ深刻なリスクを抱えている中、政府・国会が抜本的な対策を講じているとは思えません。残念ながら今の国会はパフォーマンスを競うショーと化し、多くの政治家は次の選挙で当選することが半ば目的化し、票集めのため国民には受けを狙ったきれいごとしか言いません。

また、政府は世論(支持率)を気にしたそぶりはするものの、裏では既得権益層とのしがらみや補助金行政にどっぷりとつかり、抜本的な長期的戦略を打ち出せないままです。

一方、国民も昔から「お役所頼み」の気質があり、多少不満がありながらも自ら行動を起こす人は少なく、政府・自治体が何かしてくれるのを待つ受動的な人が多いようです。

最近資質に欠ける政治家が増えたようですが、ある意味国民の政治的無関心の裏返しともいえます。ただ無関心になるのは、日本は経済力があり治安もよく、島国ゆえに国境・領土問題の切迫感もなく平和で豊かな生活を謳歌できるため、あえて現状を変える必要性を感じないからともいえます。

このようにリスクを軽減できないのは、政府の近視眼的(場当たり的)ポピュリズム的政策と、政府の支援(補助金等)に飛びつき追随してしまう国民気質、さらには同一歩調で政府・政策をアシストするような大手マスコミの報道姿勢によるのではないでしょうか。

しかしこうしている間にも食料・エネルギー、災害、人口減少、財政赤字のリスクは年々高まっており、先送りできないところまで来ています。政府・国会は未来の日本を担う若者・子供達のためにも数十年先の日本を見据え、国民が安全で豊かな生活を維持できる長期戦略が必要です。

そのためには例え支持率を落とそうとも、長期の人口減少、GDPの減少、世界における経済地位の低下、社会保障費・医療費の増大など、核心的な負の問題を正直に国民に周知し、それ相応の負担をお願いしながらも並行して歳出削減(長期的にはプライマリーバランスの実現)を図り、「人口5000万の中規模国家を目指そう!」「総量(GDP)ではなく質(一人当たりのGDP)向上を目指そう!」といった現実的な真に国民のための政策を実践できるような、政党・議員が選ばれる(登場する)ことを切に望みます。