昨年4月の記事になります。
【宮古食肉センター、牛や馬のと畜ができず担当職員が不在】
宮古食肉センター(宮古島市上野野原、荷川取広明社長)で、3月18日から牛や馬の大型家畜のと畜ができない状況が続いている。と畜を担当する職員5人のうち、大型家畜の作業ができる唯一の職員の任期が切れ次の契約を結ばなかったため。4月以降は沖縄本島に移送して南城市の県食肉センターでと畜し、宮古島へ送り戻すことになる。宮古食肉センターはJAおきなわの関連会社で1982年、同市平良荷川取に設立。2016年、上野野原に完成した新施設では部分肉加工室が整備され、従来沖縄本島に送っていた宮古牛などが島内で加工できるようになっていた。同施設では、月に15~20頭の大型家畜がと畜されているという。
JAおきなわの宮里忍本店関連法人部長は、大型家畜の担当職員が1人しかいなかったことについて「人材育成がうまくいかなかったところがある」と話した。「長く続くと供給が滞る」と懸念し、5日から同センターの職員3人を県食肉センターに派遣して技術を習得させ、再び島内でと畜ができる態勢に戻していくとの方向性を示した。
また宮里部長は「輸送費の負担先など協議を続けているが、最終決定には至っていない」とし、島内でのと畜再開のめどについても、派遣する職員の習熟度次第だとした。
11日にも宮古島から県食肉センターに移送し、13日にと畜を実施して今後の流れを確認する。(沖縄タイムス)
(2023/4/6朝日新聞)
この朝日新聞が引用した沖縄タイムスの記事では肝心なところが抜けています。
宮古食肉センターでは大型家畜の屠畜作業ができるの人が嘱託職員1人しかいませんでした。
ところが同センターはこの職員との契約に際して「次年度の契約から賞与は支払わない」と方針を伝えました。
これによりこの嘱託職員は契約更新をせず退職しました。
JAおきなわ関連法人部は「個別の契約内容については回答を差し控える」とコメントはしませんでしたが、どう考えてもいろいろ間違っています。
大型家畜の屠畜ができるのが嘱託職員一名だけ。この状態でずっとやっていたというだけでも
いかにJAおきなわの人達が異常かわかります。
この人が病気や事故で出社できなくなった時点でセンターが稼働停止するリスクを放置してきたのですから。
挙げ句に目先のコストカットのために待遇を悪くすることを予め伝えておいたら契約更新してくれなかったことで大慌て。
そんな大切な人材を失った管理職をクビにした方がよほどいいでしょう。
屠畜場法では衛生管理責任者をおかなければならないとなっています。(同法第7条)
そして屠畜場法第7条の5は以下のようになっています。
5 次の各号のいずれかに該当する者でなければ、衛生管理責任者となることができない。
一獣医師
二学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基づく大学又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基づく専門学校において獣医学又は畜産学の課程を修めて卒業した者(当該課程を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
三学校教育法第五十七条に規定する者又は厚生労働省令で定めるところによりこれらの者と同等以上の学力があると認められる者で、と畜場の衛生管理の業務に三年以上従事し、かつ、都道府県又は保健所を設置する市が行う講習会の課程を修了した者
――
加計学園問題ではっきりしたように獣医師会と文部科学省、農林水産省、厚生労働省の長年にわたる癒着により獣医師不足は長年の課題となっています。
ですから獣医師関係は特に人手不足。
そんな中で「次から待遇を下げるから」なんて言われてはいそれで我慢しますなんてなりませんよ。
雇用条件の良い方に行くという当たり前の判断を取られただけでしょう。
わざわざ昨年の話を取り上げたのはですね。
マスゴミがまた「人手不足倒産がー!」をやり始めたなと思ったからです。
長期にわたるデフレ不況の中では労働者と雇用者の関係は一方的な買い手市場でした。
バブル崩壊後、財務省と日銀は景気が暖まりはじめたらすぐに金融引き締めや増税、負担増で景気に氷水をぶっかけるということをくり返してきました。
これにより長期にわたってデフレ不況が維持されてきました。
これにより雇用者による一方的な買い手市場という構造も維持され続けてきましたし、日経新聞や財界は人件費カットによって利益を出す経営者を優秀な経営者として持て囃し続けました。
ですがアベノミクスが始まり、野田佳彦の残していった二度の消費税増税や、大規模な財政出動を渋る麻生太郎ら財務族どもの妨害がありながらも大胆な金融緩和によって失業率が改善されていきました。
ようやく労働者の売り手市場になり始めたのです。
デフレから脱却しはじめて買い手市場から売り手市場へと変わり始めた以上、雇用者は賃金を上げて人を囲い込まないといけません。
ですがまだまだ少なくない経営者が賃上げを否定するのです。
これまで劣悪な労働環境にも文句言わず耐えてきた人達も他に選択肢が出てきたことでより条件の良いところを選ぶという実に当たり前の行動に出ているだけでしょう。
人手不足倒産と呼ぶべきではなく、少なくない割合で「淘汰されるべきが淘汰されているだけ」
だとブログ主は考えます。バブル崩壊後、毎年のように規模を拡大させてきたのが外国人技能実習生です。
育成就労制度なんて名前を変えましたが、いずれにせよ「安い使い捨ての奴隷的な労働者」
がいないから外国から連れてくるという制度です。
極端な低賃金ブラック労働を前提にしないとやっていけない、儲けを出せないような企業がこの外国人技能実習生制度の異常な拡大によって生き延びてきただけでしょう。
人手不足倒産ではなく「淘汰されるべき企業がようやく淘汰された」という事例の割合は少なくないはずです。
編集部より:この記事は茶請け氏のブログ「パチンコ屋の倒産を応援するブログ」2024年10月7日のエントリーより転載させていただきました。