「貧乏人ほどコンビニをよく使う」は逆が正しい

黒坂岳央です。

昨今、あちこちで節約術が取り上げられ、いずれもたくさんのアクセスを稼ぐ人気コンテンツになっている。発信者は違えど、必ずといっていいほど言われていることが「コンビニはスーパーやドラッグストアより割高。ついで買いも多く、近づくと貧乏になる。お金持ちほどケチでコンビニを使わない」という主張だ。

筆者はこの意見に疑問を感じる。個人的な見解を取り上げたい。

Hakase_/iStock

コンビニは時間を買う場所

今どき、誰でも「スーパーやドラッグストアよりコンビニは割高」ということを知っている。その逆を求めてコンビニへ行く人は皆無だろう。割高であるにも関わらず、なぜコンビニにいくのか?その本質的理由は「コンビニは時間を買う場所」だからだ。

昼間、筆者の地元のコンビニへいくと建設業、農業に従事する人の姿を見かける。手元にはパンやおにぎりなどを抱えており、彼らはお昼ご飯を買いに来たと推測できる。パンもおにぎりもドラッグストアやスーパーの方が安い。なぜ彼らはコンビニに来たのか?その理由は時間を買っているからだ。

作業現場の最寄りがコンビニであり、支払もスマホ決済に対応していて店内も狭く、素早く目的買いをするにはコンビニ以上に適した店舗は存在しない。彼らは「情弱でコンビニが割高なことを知らずに来店した」のではなく、時間を買っているに過ぎないのだ。

だが、忙しい平日ならいざしらず、祝日ならこうした人達も割安な店で買い物をするだろう。要は自分のライフスタイルに応じた使い分けをしているに過ぎず、「情弱であること」が原因ではない。逆に忙しい平日に数十円の安さを求めて遠くのスーパーに行く方が時間、労力がかかるので「合理的思考ができない情弱」と言えるのではないだろうか。

所得増でコンビニの利用頻度も増加

筆者は独立して所得が増加したことで、以前よりも圧倒的にコンビニの利用頻度が増えたと感じる。その逆に経済的に厳しい時はコンビニはATM利用やコピーなどサービス用途以外で使うことはなかった。

今でも生鮮食品の食材や、子供用のオムツなどを購入するためにスーパーやドラッグストアへ行くのが基本だが、それ以外の突発的な買い物はすべてコンビニで買う。これは「自分はお金を持っている人物だ」という矮小でつまらない自慢をしたいのではない。時間効率を無視した節約はむしろ逆効果であるという合理的意思決定の重要性を説いた話だ。

確かにコンビニでは同じ商品でも、数十円、下手したら数百円高いことは自分もよく分かっている。USBケーブルや傘はかなり割高だ。だが、そんな少額の節約を何十回と繰り返し積み上げても人生は何も変わらない。仮に月3,000円割高になってしまったと仮定すると、年間で36,000円の節約になる。

だが、この規模の金額よりビジネスや資産運用で稼ぐ方がはるかに動くお金は大きいし、コンビニの利用で目に見えない時間や労力を買えている事実がある。そう考えると、過去に比べて高くなった自分の時間単価を少額の節約に使うのは「コスト負け」してしまうのだ。

合理的思考ができるビジネスマンほど自分の時給を常に意識しており、日中仕事に使える時間や体力など経営リソースをより付加価値の高いアロケーションをするのが常識だ。そう考えるとむしろ所得が増えた人ほど、価格より時間を買うためにコンビニの利用頻度は高まるのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。