政権交代して第2次野田内閣で「社会保険料と消費税の一体改革」を

総選挙は与党の大敗で終わった。石破首相がもともと想定していなかった早期解散を森山幹事長が強引に決めて安倍派の追放をはかったが、非公認や比例復活なしの処分を受けた議員が「裏金議員」という烙印を押されて大量に落選した。森山幹事長が策士策におぼれた自爆である。

石破おろしで「40日抗争」か連立政権か

自民・公明で215議席。過半数には18議席も足りない。これは一昨日の記事で書いたシナリオ1、1979年の「40日抗争」と同じパターンである。

当時、大平内閣は過半数を守ったが、福田赳夫らの非主流はが「大平おろし」をはかり、特別国会で首班指名に自民党から大平と福田が立候補する前代未聞の事態となった。今回も裏金議員の恨みは深いので石破おろしが始まるだろう。

この場合、連立のパートナーとして考えられるのは28議席とった国民民主で、合計43議席で安定多数になる。今のところ玉木代表は連立入りを否定しているが、それほど悪くない話である。

「非自民連立政権」は可能だ

もう一つの選択肢は政権交代である。今回は立民+国民+維新で214議席なので、他の党があと2議席くわわれば、1993年の細川内閣のような「非自民連立内閣」も可能だ。首班指名で第1回投票には各党の党首を書くが、決選投票で「野田佳彦」と書く票が216票以上あれば、政権交代が起こる。

問題はあと2票である。無所属で当選した12人のうち北神圭朗氏など野党系が2人以上、野田首班に投票すれば、野田首相が誕生する。もちろん自公政権も非公認の世耕氏や萩生田氏の入党を求めるだろうから、ぎりぎりの多数派工作になる。

1993年の細川首相と似た状況である。当時、私は取材する側だったが、連立政権ができるかどうかは予想できなかったので、政策協定などは何もできていなかった。新生党の小沢一郎代表幹事が「細川首班」を決めて、それに投票する8党が集まっただけだ。

それに比べると今回の立民と国民は元は同じ党であり、維新も政策的には遠くない。自公政権の延命に協力するより、野党が結集するほうが世論の共感はえやすい。

問題は政策協定である。細川政権のときは何もなかったので、最後は社会党が離反して瓦解したが、今回は政治改革社会保障改革を争点にしてはどうだろうか。

政治改革では、政策活動費などの不透明な政治資金の改革より、小選挙区と比例代表の重複立候補を禁止するなど、不合理な選挙制度を30年ぶりに見直し、中途半端な区割りになっている参議院も含めて議員定数を抜本的に是正すべきだ。

最低保障年金で社会保険料は削減できる

社会保障改革は、今回の総選挙で初めて争点になった日本経済の最大の問題である。維新と国民がこれを政策に入れることを求め、政策協定を結ぶべきだ。具体的な政策としては、かつて民主党政権が提案し、今回も国民と維新が公約に入れた最低保障年金が考えられる。

最大の障害は、団塊の世代の党である立民が社会保障改革を求めていないことだ。しかし野田氏は2012年におこなった社会保障と税の一体改革のときの首相である。このときは最低保障年金の財源として消費税を10%に増税する予定だったが、自民党政権が増税だけをつまみ食いしてしまった。

おまけに安倍首相が消費税の増税を2度も延期したため、社会保険料が激増して30%を超えた。基礎年金をすべて税財源にする最低保障年金で国民年金保険料25兆円がゼロになるが、それはほぼ消費税で代替できる。

また国民と維新が公約した後期高齢者の9割引医療の是正は緊急の問題である。それと一体で、自民党総裁選で河野太郎氏の指摘した老人医療への「支援金」10兆円は早急に廃止すべきだ。

社会保険料を消費税に置き換える改革を

こうした改革の財源としては、医療費の窓口負担を一律3割に引き上げるだけでなく、社会保険料の消費税による代替が必要である。最低保障年金(国民年金保険料の税財源化)には2%あれば足りるが、老人医療への支援金をなくすには(3割負担にしても)3%は必要だろう。

つまり消費税を15%に上げる代わりに、国民年金保険料と健康保険料を同額下げ、税収中立の社会保障改革をおこなうのだ。さらに立民と維新が公約している負の所得税(給付つき税額控除)も政策協定のテーマになりうる(これは財務省も賛成するだろう)。

以上の問題は、野田氏が首相だった時代に財務省や自民党と議論してよく知っているはずだ。当時は消費税の大増税が最大の障害だったが、いま問題になっているのは、この10年間、消費税を上げなかったことによる社会保険料の負担増である。

社会保障改革が行き詰まった最大の原因は、消費税を上げないために社会保険料を上げ、それでも足りない分を「支援金」で埋める脱法的なやりくりをしてきたことだ。第2次野田内閣で、社会保険料減税と消費税増税の一体改革をやってはどうだろうか。