各社の世論調査で、自民・公明が過半数(233議席)を割ることがほぼ確実になった。特に自民党は200議席を割る大敗で、石破首相の進退問題になることは避けられない。今後のシナリオを予想してみた。
シナリオ1:石破おろしで「40日抗争」
1979年に大平内閣は総選挙で敗北したが、自民党は単独過半数を維持した。前年の総選挙から2議席減っただけだったが、非主流派は大平に退陣を迫った。大平はこれに屈服しなかったので、臨時国会の首班指名に自民党から大平正芳と福田赳夫の2人が立候補する前代未聞の展開となった。これが悪名高い40日抗争である。
今回は自民党内が分裂状態になっている点は当時によく似ているが、自公で過半数を割ると、石破首相が居座るのは困難だろう。高市早苗が首班指名に立候補する可能性もあるが、野党が投票しないので当選できない。
40日抗争の翌年、野党の提出した内閣不信任案に非主流派が賛成して衆議院がハプニング解散され、大平首相が急死した。今回も石破首相が粘ると野党が不信任案を出し、自民党の非主流派が賛成して石破内閣を総辞職に追い込む可能性もある(解散はありえない)。
シナリオ2:岸田首相の裁定による暫定内閣
1974年に田中角栄が金脈事件で退陣した後、大平と福田が後継指名を争い、椎名裁定で三木武夫が首相になった。今回も石破首相が選挙後ただちに退陣すると、総裁選挙をやりなおす時間がないので、両院議員総会で総裁を選出する可能性もある。
これは来年の参院選までの暫定内閣で、椎名副総裁の役割を果たすのは岸田前首相だろう。党内の合意を得やすいという点からみると、林芳正官房長官が適役ではないか。この場合も自公で過半数に足りないのは同じだから、連立協議が必要になる。
シナリオ3:国民民主党を入れた自公国の連立政権
誰が首相になるにせよ、与党で過半数を割ると連立が必要になる。立憲民主党との大連立は考えられないので、選択肢は国民民主か維新だろう。維新は内紛状態なので、国民がパートナーになるだろう。国民は議席も20議席近くに躍進すると予想されて勢いがある。玉木代表は今のところ連立を否定しているが、自分から連立に乗ることはありえない。
これは1999年の自自連立と似ている。前年の参院選で自民党が過半数を割り、ねじれ状態になったため、小渕首相は小沢一郎の自由党と連立を組み、公明党も合流して自自公連立政権となった。しかし小沢の強引な要求を小渕が飲まず、自由党が連立を離脱した直後に小渕は脳梗塞で急死した。
今回は国民の玉木代表は小沢ほど強引な要求はしないだろうが、昨年トリガー条項で裏切られたので、今回は合意文書をつくるだろう。特に国民がもっとも力を入れている基礎控除の引き上げを入れる可能性がある。
連立には連合が難色を示しているが、これも芳野会長の第3号被保険者の廃止を合意文書に入れればいい。年収の壁の問題は、玉木代表の提案している最低保障年金で解決できる。
自民党に後継首相にふさわしい人物がいないので、玉木首相という可能性もある。これは大穴だが、かつて自民党は社会党を連立に引き込むために村山首相というウルトラCを編み出した党である。政権維持のためなら、何でもするだろう。
いずれにせよ久しぶりに公明党以外との連立政権が視野に入ってきた。本来は公明党を政権から追い出して連立を組み替えてほしいところだが、今回はそこまでは行かないだろう。自公国政権でも、自公が無視してきた社会保障改革が政権のアジェンダになるのは大きな前進である。