スペイン・サンチェス政権下での元運輸相と秘書のコロナマスク汚職

Covid-19のパンデミックの不幸を利用して儲ける輩

スペインでもCovid-19パンデミックが発生した2020年にマスクの需要が急増した。マスクを着用する習慣のないスペインではマスクが完全に不足した。その国内メーカーは主に2社あったが、その生産量は非常に僅かであった。

同年3月には2500人余りの死者が出ていた。その悲惨な状況を前に、住民は恐怖に慄いていた。ところが、それを利用して儲けようとした輩も多くいた。その中でも顕著だったのは、サンチェス政権下の当時の運輸相ホセ・ルイス・アバロ氏と彼の秘書コルド・ガルシア氏が中心になって、中国からFFP2のマスクの輸入を企んだ。それに多額のマージンを加えて儲けるグループを誕生させたのである。その全貌が徐々に解明しつつある。それを以下に紹介したい。

 医療品を扱ったことのない企業がマスクの輸入を開始

コルド・ガルシア氏というのはナバラ地方でディスコのドアーマンをしていた。その後、彼が住居を構える町で社会労働党の町議会議員になった。その縁で、社会労働党の国会議員のひとりからホセ・ルイス・アバロ元運輸相を紹介された。そして彼はアバロ元運輸相の運転手となった。その後、彼はアバロ氏からの信頼を強く得て、彼の190センチを超す大柄な体型からボディガードのひとりとなり、彼の個人秘書のような存在になって行った。

Covid-19のパンデミックが猛威を振るうようになると、アバロ元運輸相が中心になってマスクFFP2の輸入を検討した。何しろ、複数の公営企業がマスクの輸入の必要性を感じていたからだ。この時、新たに二人の人物が登場して来る。ビクトル・アル・ダマ氏とファン・カルロス・クエト氏の二人だ。前者は企業経営者であり仲介屋、そして後者は複数の企業経営者。前者の兄弟が以前アバロ元運輸相の運転手だったという縁からコルド・ガルシア氏を知るようになった。アル・ダマとクエトの両氏は相互の取引で関係している間柄だ。その関係から、コルド・ガルシア氏はビクトル・アル・ダマ氏にマスクの輸入の相談を持ち掛けた。

常識的に考えれば、アバロ元運輸相は政府の閣僚であるから医療品取り扱い企業のどこともコンタクトをもつことがでははずだ。また、公式に入札を通して輸入業者を決めるべきであった。ところが、マスクの輸入を実際に手掛けたのはソルシオネス・デ・ヘスティオン・イ・アポヨ・ア・エムプレサス(Soluciónes de Gestión y Apoyo a Empresas, S.L.)という企業で(以後、ヘスティオン・イ・アポヨ)、医療品などは全く手掛けたことのない業者だった。入札もせず、なぜそのような企業にマスクの輸入を手掛けさせたのか? 答えは簡単である。密かに手数料を稼ぐ為だ。しかも、この企業は上述したファン・カルロス・クエト氏が関係している会社だった。

 輸入したマスクの多くが不良品

これまでメディアによる追跡調査で目立っているのは、2020年3月の輸入である。彼らは港湾局、鉄道関連局、郵便局、内務省、カナリア諸島政府、バレアレス諸島政府から合わせて5500万ユーロ(66億円)余りの受注を貰い、上述した医療品の輸入に全く経験のない企業が輸入を請け負ったのである。(2024年2月24日付「ザ・オブジェクティブ」から引用)。

中国の15社から輸入した。ところが、品質の多くは不良品としてみなされるようなマスクばかりだった。しかし、支払いは全て前金であった。

Covid-19のパンデミックが拡大している中であった。兎に角、早急にマスクを手に入れる必要があった。マスクを調達できるのであれば、どこからでも輸入しようという体制でもあった。だから、品質も粗悪品が目立った。今も44万枚のマスクが運輸省の倉庫に在庫として収まっているという。また上述した自治体の政府などにも不良品の在庫がたまっている。

ところが、仲介した各自はちゃっかり手数料は頂戴しているのだ。コルド・ガルシア氏は150万ユーロ(1億8000万円)を稼ぎ、ビクトル・アル・ダマ氏は550万ユーロ(6億6000万円)、ファン・カルロス・クエト氏は960万ユーロ(11億5200万円)を稼いでいる。。コルド・ガルシア氏は多額の入金を隠すために彼の一家の子供を含め、それぞれの口座に入金させていた。また複数のマンションも購入していた。(2月24日付「ザ・オブジェクティブ」から引用)。他の二人は企業経営者なので、稼いだ手数料を隠蔽する手段は色々とある。

また、輸入を手掛けたヘスティオン・イ・アポヨ社は経費を差し引いても1690万ユーロ(20億2800万円)の粗利を稼いでいた。(2月29日付「OKディアリオ」から引用)。

勿論、アバロ元運輸相も多額の仲介料を稼いでいるはず。その詳細は徐々に解明されつつある。

サンチェス首相の夫人と弟は既に汚職などで起訴されている。そして彼の閣僚であったアバロ氏もいずれ起訴される方向に向かっている。このような事情に合っても、サンチェス首相には辞任する意向は全く見られない。だから、彼はスペイン国内ではどこにも行けない。行けば群衆から罵声を浴びせられるからである。

ペドロ・サンチェス首相インスタグラムより