内閣官房参与の川上高司「合衆国憲法に抵抗権・革命権が記載」サイレント修正、「バイデンがウクライナ戦争を始めた」とディープステート陰謀論

やばいやっちゃで

内閣官房参与の川上高司を国民民主の玉木雄一郎が批判

 

 

国民民主党代表の衆議院議員である玉木雄一郎氏が、内閣官房参与(外交・安全保障担当)の川上高司氏のインタビュー記事を引いて『「ディープステートとの戦い」や「Qアノンによる革命政権」を賛美するような発言』『もはや陰謀論の類です』と批判しています。

内容は以下ですが、米大統領選とアメリカ社会の一面、トランプ大統領の行動を把握・分析したものと考えられますが…

外交・安全保障担当による「ディープステート論」と「バイデンがウクライナ戦争を始めた」

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る“日本一わかりやすい”米大統領選挙報道の見方 2024/10/22 12:00 文=日刊サイゾー

川上 そうですね。というのも、彼が大統領にならないことで利権を得ている人たちが多くいるからです。そのような既得権益もそうですが、彼の支持者というのは、白人の中間所得層の中でもかなり所得が少ない者たちで、さらに移民に職を奪われていると感じている。これまで「日の目を浴びてこなかった者たち」のためにも彼は戦っているのです。彼の言葉を借りるなら、ディープステートとの戦いです

――日本だと陰謀論でしか聞かない言葉ですが、結局トランプ氏のいうディープステートとは一体なんなのでしょうか?

 

 

川上 私は「権力」そのものだと思うんですよね。巨大産業、マスコミ、知的エリート層……。それらはすべてディープステートなのでしょう。しかし、明確に定義していないですよね。しっかりと、「ディープステートとは〇〇のことを指します」といってしまうと、一気に支持されなくなってしまいます。

――そこは、あやふやにしておいて、あとは個々のイマジネーションに委ねるということですね。

川上 そうです。ディープステートっていうひとつの単語を言っておけば、あとは支持者たちが「多分あれのことだ」「いや、これのことだ」と勝手に解釈してくれます。

「ディープステート論」に関する部分では、彼自身の信念として語っているのではない様子なので、サイゾーの記事を引用した玉木氏の批判は的を外したものと言えます。

ただ、その前の部分や続きの部分などをみると、川上氏は全体的にトランプ氏の言説を称賛する立場だと言えるので、「ディープステート」の部分も肯定的に捉えているとみられるのはある程度は仕方がないのかもしれません。

川上 そう、トランプ氏の感覚は非常に鋭い。2020年の大統領選挙で彼は「バイデンが大統領になったら、彼は戦争を始める!」と言い放ったのですが、「さすがだな」と思いました。というのも、実際にバイデン氏はロシアを引き込むために、ウクライナ侵攻を許してしまいました。パレスチナ・イスラエル戦争のベンヤミン・ネタニヤフ首相のケースは少し複雑ですが、結局アメリカはイスラエルを応援しています。そのため、あのときのトランプ氏の発言は正しかったのです。

トランプが「バイデンが大統領になったら彼は戦争を始める」と言ったことを受けてロシアのウクライナ侵略とパレスチナ・イスラエル戦争に関して「あのときのトランプの発言は正しかった」と言っているのですから、川上氏は「バイデンが戦争を始めた」と言っていると同義でしょう。

「バイデン政権のエスカレーションコントロールが失敗した結果としてロシアのウクライナ侵略を許してしまった」と言うだけなら分析の一つとしてあり得る話ですが、「戦争を始める」というのを正論としてしまうのはちょっと…

そして、この記事における川上氏の最大の問題は、次項の点だと思うのです…

「合衆国憲法に抵抗権・革命権が記載」の衝撃:事実と憲法解釈論の陰謀論

川上 実はあのとき、もし議会を占拠して革命政権を樹立させていれば、トランプ政権はできていたのですよ。というのも、合衆国憲法には「抵抗権(革命権)」が記載されているからです。そのため、当時の私は「ついに、革命が起きたのか」と思いながら見ていましたが、人数が足りなかったのと、手際も悪かったので、どのみち無理だったでしょう。
――確かに、アメリカ合衆国の独立宣言には、そのような文言も盛り込まれていますが……。ということは、もし、あのときトランプ氏が先陣を切っていれば、革命は成功したかもしれないのでしょうか?
川上 いえ、当時のトランプ氏はSNSで煽動するのが精一杯で、それ以上の動きはできませんでした。ただ、議会を占拠して入念に準備をして、「我々は新しい国を作るんだ! 南北戦争の中にあって我らは北軍なんだ!」と独立宣言をすれば、成立していた可能性もあります。

サイゾーの記事のこの部分が、むしろ法体系に関心のある界隈では最も物議を醸していました。その結果なのか、サイレント修正されています。⇒修正後の魚拓

 

 

修正された通り、アメリカ合衆国憲法には、抵抗権や革命権の記載はありません

この修正が編集部のミスで記載されたものを改めたのか、それとも川上氏が自身の誤りを認めて編集部に修正を申し入れたのかは、修正に関連する記載がないので不明です。

1776年の独立宣言には抵抗権や革命権と呼ばれる記載があります。

われわれは、自明の真理として、すべての人は平等につくられ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦(てんぷ)の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる。また、これらの権利を確保するために人類の間に政府が組織されたこと、そしてその正当な権力は被治者の同意に由来するものであることを信ずる。そしていかなる政治の形態といえども、もしこれらの目的を毀損(きそん)するものとなった場合には、人民はそれを改廃し、彼らの安全と幸福をもたらすべしと認められる主義を基礎とし、また権限ある機構をもつ、新たな政府を組織する権利を有することを信じる

永く永続した政府は、軽微かつ一時的な原因によっては変革されるべきでないことは、慎重な思慮の命ずるところである。したがって、過去の経験もすべて、人類が災害の耐えうる限り、彼らの年来従ってきた形式を廃止しようとせず、むしろ耐えようとする傾向を示している。しかし、連続せる暴虐と簒奪(さんだつ)の歴史が明らかに一貫した目的のもとに、人民を絶対的暴政のもとに圧倒しようとする企図を表示するに至るとき、そのような政府を廃棄し、自らの将来の保安のために新たなる保障の組織を創設することは、彼らの権利であり義務である

しかし、実務上や一般の学説ではこうした抵抗権が憲法上の権利義務となっているとは解されていません。13州のイギリスからの独立時の話が、独立後の憲法にそのまま妥当するとは考えられません。

確かに憲法学説上は世界的に、自然権としての抵抗権・革命権や、合法であるところの抵抗権・革命権の存在についての議論があり、実際にドイツが抵抗権を憲法に書き込んでいます。

その観点から川上氏の発言を最大限に善意解釈すると、「憲法の具体的条文を通して抵抗権が内在している」という憲法学説上の少数説の考えを自身の見解でもあるとしてアメリカ合衆国憲法にも当てはめている可能性があります。憲法学説が陰謀論。*1

ところが、そういう見解だとしても、「合衆国議会議事堂を占拠し任意の選挙結果を宣言すれば革命が成立する」というのは、いったいどこから湧いて出てくるのか?

「陰謀論」と呼ぶべきはこの部分であり、最も非難に値すると言えます。


編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。