日本も子供のSNS利用を禁止すべき理由

黒坂岳央です。

オーストラリア政府は11月7日、16歳未満によるSNSの利用を禁止する法案を発表した。FacebookやTikTokなど有名なプラットフォーム側には、年齢制限導入が義務付けられ、違反に対して罰金を課すという本格的な法案だ。

この発表記事に対しては概ね、肯定的な意見が続き後は実現可能性について協議されることだろう。筆者は子を持つ親として、我が国でも導入してもらいたいと感じる法案だ。

show999/iStock

SNSは禁止してもネットは使わせていい

誤解のないようにいいたいのは、SNSとネットは別に分けて議論するべきだ。子供はSNSは禁止しても、インターネットは活用した方が良い。

自分の子供にも、オンライン上のオフィスアプリで夏休みの宿題を作らせる。また、ダンボール工作の作成手順をYouTube動画で調べさせたり、画像検索やChatGPTも触らせている。国語の勉強が進む前は音声入力を使っていたが、最近ではキーボード入力も覚えて上手に使いこなしている。

これまでは「雲はなぜ地面に落ちてこないの?」と筆者に質問をしてきたが、最近では自分で検索して読み上げ機能を使って調べたり、AIで回答を引き出すということをするようになった。

長時間の使用を制限し、親の監視は必須だが子供にITテクノロジーを使わせること自体は教育にプラスと考える。子供の最大の武器とは「好奇心」であり、その好奇心を思う存分満たしてあげるのも大事な教育だ。

子供のSNS利用は百害あって一利なし

筆者はテクノロジーに好奇心を引かれて生きてきたし、人生を救われてきたのであまり否定的な発言をするのははばかられる。だが、こと子供のSNS利用についていえばタバコのように「百害あって一利なし」と思っている。

闇バイトやドラッグ、出会いなど身の危険が迫るものや、グロテスク、ショッキングな映像など精神的な悪影響投稿もあるだろう。また、そうしたアングラに触れなかったとしても、教室内の人間関係がクラスメートのグループLine上でいじめられたり、他者比較をして自己肯定感を喪失するリスクもあまりにも大きい。

冷静で客観性のある大人なら、自己判断でこうした情報から一歩距離を取るということができるが、子供には難しい。いや、大人でも自己判断できず、コンプレックスを刺激されて嫉妬心から誹謗中傷をして、相手から損害賠償請求を受けるケースもある。SNSを上手に使いこなし、デメリットを回避できている人自体、世の中にかなり少ないという印象だ。1のメリットを享受するために、5のデメリットを浴びているような使い方をする人は多い。

SNSが有効なのは、情報のスピード感、リアルタイム性、双方向性である。自分は記事を書いていていたり、技術や情報を追いかける立場にいるのでそのニーズを満たすためだけに使っている。

また、短文投稿はメモ代わりと、自分の思考を整理するためにやっている。ネガティブなニュース、無益な争い、ショッキングな話などはとにかく目に入れないように工夫をしながら使っている。デメリットを回避しながら使うのは手間だが、メリットもあるので完全に手放すことができず悩みながら使っている。そうしたSNSが子供に必要か?と問われれば答えはNOである。

筆者は大学に入ってからは、PC、携帯電話自体を一切手放した。レポート作成や調べ物を利用する時は、学校のPCルームに置いてある共有パソコンを使った。当時はFacebookやmixiが流行ったが、「勉強のじゃまになりそう」と感じてアカウントを作成しただけで深くは手を出さなかった。勉強が本業である学生の内は、SNS自体を使用しないのが賢明だ。SNSにメリットはなく、ジャマ以外の何者でもないからだ。

米国でもSNSを問題視

米国ではSNSが子供の精神に悪影響があると問題視され、すでに35州は規制の導入や検討に乗り出し、フロリダ州で14歳未満のSNSアカウント作成を禁止する。

「表現の自由だ」「情報へのアクセス権利を奪う」といった反論もあるが、SNSを使わなくても自己表現や情報収集の手段は他にいくらでもあるし、子供に使わせても良いことより悪い事の方が圧倒的に多い。

プラットフォーマー側が犯罪につながる投稿の規制に対して、後手に回っている。また、学校で配布されるプリントには「SNSに個人情報の書き込みはやめましょう」という呼び掛けに留まっており、現状、親が守ってやるしかない。ぜひ、法律でも規制をしてもらえることを望む。

「16歳未満は禁止、と表示しても利用者は平気で乗り越えてくるではないか」と技術的な制約の限界を訴える声もある。だがそれでもいい。親や教師が「SNSを使うな」という子供を説得する強力な材料になるからだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。