トランプ再選:偽善の時代の終わりと待ち受けるリスク

トランプ氏インスタグラムより

11月5日の米国大統領選で、トランプが勝利し第47代大統領として復活再選された。筆者は予てから7:3でトランプ勝利を予想していたが、実際トランプは激戦州を全て制し快勝した。トランプ再選が薄氷であったなら、米国内の暴動とそれに乗じ中国が台湾海上封鎖の挙に出る事を懸念していたが、ハリスが早々とトランプに祝意を送り、そうならなかった事は幸いである。

さて、再選を受け早速トランプは、政権発足に向け動き始めている。

不法移民の送還、LGBTQ政策・過度な気候変動政策・マスメディアSNSの検閲体制の解消、コロナの起源解明、ワクチンのリスク開示、増税してバラ撒く統制経済の方向転換、不要な政府機関の廃止・・・・一言で言えば、これまで長い間続き特にバイデン政権化で加速した「偽善の時代」の終わりの始まりとなるだろう。

だが、大きな変革の時代には、また大きな障害が立ち塞がる。筆者は主に下記事項を懸念する。

① 就任までの暗殺等

利害と感情から何としても、トランプ就任を阻止したい勢力は多いだろう。感情的には「トランプはヒトラー。それを阻止するためには選挙不正も正義」と考える者は、一定程度は居る。その中から、暗殺者が再び出て来る可能性がある。また、様々な利害が絡む勢力が連携すれば、各地の暴動から戒厳令に持ち込もうとする動きも有り得、まだ気は抜けぬと思う。

ハリスの敗北宣言が拍子抜けする位に早く出された事に、逆に少し嵐の前の静けさも感じるが、杞憂に終わる事を願う。

② 経済の乱気流

トランプは、中国を筆頭に各国からの輸入品に対し関税引き上げを宣言している。これはインフレを加速し利上げの動きに繋がりドル高を招くと言われている。また不法移民の送還による労働力不足もこれを後押しする。

これに対し、トランプは「ドリル・ベイビー・ドリル」の掛け声で、シェール・オイル、ガスを掘って掘って掘り捲る。加えて世界各地で戦争を終わらせエネルギー価格を引き下げてインフレを防ぎ、またFRBに口先介入しドル安に持って行く目論見である。

だが、例えばエネルギー価格が下がると盟友のプーチンの利益に反する事も含め、複雑系の方程式となり、少なくとも形が見えてくるまでは世界経済は乱気流に見舞われるだろう。その乱気流が疑心暗鬼の中で世界経済に危機をもたらすリスクは有り得る。

③ 中東危機からの第三次世界大戦

筆者は、トランプが最大の潜在的脅威と見做す中国に対しては、プーチンとの結束力の強さから、実質的な同盟関係を結ぶと考えている。進んでは我が国も「日米露三国同盟」「日米露印四国協商」で喰い込むべしと予てから唱えほぼ皆からスルーされているが、それはともかく中国の牙を抜きアジアを安定させるためには、米露を中心に拡大中国包囲網を形成する以外の解は無い。

そのため上記①②を乗り切れれば、習近平の出方次第で曲折はあるが、筆者はそこにトランプの取るであろう戦略的不透明さを見出さない。なおこの大きな枠組みが決まれば、朝鮮半島の安定もオマケで付いて来るだろう。

順番は前後するが、トランプ・プーチン ラインでウクライナ戦争を早期に終わらせて欧州を安定させ、アジアの安定にも目途を付けたら、中東の平定が待っている。

この両者のラインの延長・応用で、トランプの親イスラエル側からのアプローチと、近年プーチンのイランの後見人的ポジションを擦り合わせて、何とか中東も安定に持って行って欲しいものだが、この火薬庫の取り扱いを間違えれば第三次世界大戦を招きかねない。

トランプは不動産屋時代の経験を応用して各プレイヤーに呑ませるディールのスキームを描くだろうが、恐らく少なくともトランプの在任中にはこのスキームは完成せず小康状態に持ち込むのが限界となるのではないか。やはり中東が今後の世界の最大のリスクと言えるだろう。

トランプ再選で世界は大きな変革の時代を迎える。変革の時代には上に挙げた以外にも様々なリスクが立ち現れる。

筆者は今後の時代を「偽善の時代の終わりの始まり」と捉える。偽善を成り立たせるものは何だろうか。それは自分達だけが選ばれし者と言うエリート意識と、それ故に下々の者は家畜として奉仕すればよいという歪んだ感情、そしてそれに盲目的に従う事勿れ主義だ。これらの逆を行く事。それが即ち今後の時代に必要なマインドセットであると筆者には思われる。