トランプ元大統領が圧勝した理由について、以前の記事で「普通の人々の生活の苦しさ」に注目しましたが、アメリカの経済格差の変遷を数字で追っていくと、その裏付けとなる証拠が明らかになります。
2024年12月10日発売の『世界のニュースを日本人は何も知らない6』でも、日本のマスコミで取り上げられない海外の実態について解説しましたが、現地で実際に体験すると、数字が示す現実がさらに理解できます。
アメリカの調査会社ピュー・リサーチ・センターによる1970年の調査では、アメリカの高所得世帯の収入の中央値は中所得世帯の2.2倍、低所得世帯の6.3倍でした。
しかし、2016年になるとそれが2.4倍と7.3倍に増加しています。
つまり、富裕層がより豊かになる一方で、中流階級や貧困層との格差が広がっていることがわかります。
さらに、アメリカ経済が成長したにもかかわらず、中流階級の割合は減少しています。つまり、上の階層に上がれる人が減少しているのです。
1971年から2011年にかけて、中産階級の成人の割合は10%減少しました。2016年にはアメリカの成人の約半数(52%)が中流階級に所属しており、2011年の51%とほぼ同じ水準でした。このことは、低所得階層から中流階級に上がる人が増えていないことを示しています。
中流階級の割合は増加しなかった一方で、各階級の収入は増加しています。
中流階級世帯の収入の中央値は、2010年の74,015ドルから2016年には78,442ドルへと6%増加しました。アメリカ成人の19%を占める上流階級の収入の中央値は、172,152ドルから187,872ドルへと9%増加しています。さらに、29%を占める低所得世帯の所得も5%増加しています。
驚くべきことに、富裕層が住む地域は今回の大統領選でハリス氏が勝利した地域と完全に一致しています。ここまで綺麗に重なる事実に驚かされますが、このことはアメリカ国内の分断を明確に示しています。
富裕層がより豊かになった理由は、知識産業の成長や金融資産によるもので、これはアメリカだけでなく欧州でも同様です。2000年以降、北欧やドイツでも金融資産を持つ人々がさらに豊かになっています。
意外かもしれませんが、北欧やドイツは日本よりも投資に積極的な人が多く、ドイツには予想以上に富裕層が存在します。また、欧州には彼らのためのタックスヘイブンやプライベートバンクが多数存在しているのです。こうした実態は、日本の旅行番組などではほとんど取り上げられません。
日本のメディアは選挙戦終盤までハリス氏優勢と報じていましたが、一般公開されているこのようなデータをきちんと分析していたのでしょうか?
テレビ局や新聞社には十分なリソースがあり、英語に堪能な記者や調査担当者もいるはずです。それにもかかわらず、アメリカの実態をここまで無視しているのは理解に苦しみます。
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