「ファクトチェック」は虚偽の表示だろう
JFC『「奥谷委員長が斎藤知事のパワハラ無かったと発言した」は不正確
「(斎藤知事の)パワハラはなかった」と百条委の委員長が発言? 前後の文脈を無視した切り取り動画【ファクトチェック】日本ファクトチェックセンター(JFC) 2024年11月20日
日本ファクトチェックセンター=JFCが『「奥谷委員長が斎藤知事のパワハラ無かったと発言した」は不正確だとするファクトチェックと題する記事を出しました。
しかし、この記事には重大な問題があります。
偏頗的ふぁくとちぇっくの問題「局長を追い込んで死なせた」言説の放置
斎藤前兵庫県知事はパワハラしていない? 職員の4割が見聞き、本人は厳しい叱責など認めて「必要な指導」【ファクトチェック】宮本聖二 2024年11月15日
JFCは11月15日にも「斎藤知事のパワハラしていない」という言説に関して「根拠不明」と書いています。20日までに、斎藤元彦兵庫県知事のパワハラ疑惑について2つの記事を書いており、いずれも「存在しない」とする言説を取り上げています。
しかし、その逆で「パワハラがあることを前提とした言説」もSNSでは拡散されています。例えば以下。
これらはすべて「斎藤知事が局長を追い込んで死なせた」という趣旨のもので、JFCが上掲記事で取り上げた言説の30万ビューに匹敵する程度拡散されています。中にはインプレッションが40万に上るものも。
発言している者の属性も実名の者が多く、立憲民主党の衆議院議員、元朝日新聞社の週刊朝日編集長、BS朝日やTBSラジオで番組を持っている者などが居ます。拡散数・影響力の観点からも無視することの合理性はありません。これらに対しては「根拠不明」などのチェックは行わないのでしょうか?如何に首長職の権力者とはいえ、無罪推定原則からは現時点で断定していることそれ自体が問題でしょう。
そして、JFCの問題は、これだけにとどまりません。
「140人が実際に経験と回答」⇒実際は「件」、再伝聞等が多数含まれる
JFCは「県職員へのアンケートでは実際に目撃などで知っている人が140人」などと上掲の2つの記事で記述しています。
しかし、その中身を見ると、パワハラとは真逆の事実が書かれているもの、知事ではない者の発言、業務上の指示に過ぎないことをきっかけとした思い込み、情報源不明の伝聞及び再伝聞情報などが大半を占めます。
もちろん、伝聞だったとしても他の証言との整合性からその事実自体は存在する(パワハラと評価できるかは措く)と判断することはできることがあります。「20m歩かされたことで怒りを示した」などがそうでしょう。他の記述も、それを踏まえた上で更なる調査をするための端緒にすることができるかもしれません。
そうであっても、「実際に目撃や経験をした」の項目はアンケートに回答した職員が勝手に振り分けたものであり、百条委員会が判別・整理したものではないという点は、必ず踏まえなければならないものです。
なお、実際には「実際に目撃や経験をした」というカテゴリで回答をしているものが「140件」です。しかも、「件数」だということが分からないように元資料をトリミングしていました。
年代別回答者の内訳が回答件数と一致しており、現実の年齢構成と乖離しているというようにも見えず、仮に複数回投稿している者が居ても何十回とまではいかないと思われ、ほとんど無視できるのかもしれません。
しかし、「件」とあるものを「人」とするなら、そうした経緯を書くのが筋でしょう。「ファクト」を軽んじていることの証左です。
全体の140件というのは、「兵庫県職員アンケート調査」中間報告、「兵庫県職員アンケート調査」中間報告以降ネット回答分報告、「兵庫県職員アンケート調査」郵送回答分報告の中で「【Q7】知事のパワーハラスメントについて」の分を足したものです。
百条委員会のアンケート結果の中身を見ないでファクトチェックを名乗るのは虚偽
百条委員会のアンケート結果の中身を見ないでファクトチェックを名乗るのは虚偽と言ってしまってよいでしょう。
特に15日の記事は、選挙期間中のもの。投票行動・選挙結果に与える影響を考えると、なおさらこの偏頗的なファクトチェックには問題が多いと言えます。
15日の記事には以下の記述もありました。
本人も「厳しい叱責」「机を叩いた」ことなどを認めており、「必要な指導だと思っていた」と述べているが、パワハラの定義にあてはまる行動だ。
「パワハラの定義にあてはまる」と評価までしているが、ならば判定は「根拠不明」ではないはず。20日の記事の判定も、「不正確」ではなく「誤り」となるはずでしょう。
もはや、自らが設定したファクトチェックの手法の矩を飛び越えた記述を選挙期間中に特定の候補者に関する方向にのみ行うというのは、それ自体がSNS上の情報の問題として取り上げられるべきでしょう。
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年11月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。