輸送機のポートフォリオ計画すら明かさない隠蔽空軍航空自衛隊

航空自衛隊は無責任です。ペイロード8トンのC-1は退役、17トンのC-130Hは導入から40年以上も経っています。このままいけば数トンの貨物も運用費が高いC-2で行う必要すら出てくるでしょう。また小さな飛行場には輸送ができないことになります。

C-130H 防衛省HPより

ところが歴代の空幕長は輸送機のポートフォリオをどうするのかを質問しても答えません。あるいは現状ないといいました。そうであれば嘘つきか無能、あるいはその両方でしょう。

民主国家の軍隊であれば、事前に国民に装備体系の構想ぐらいは発表します。その上でふさわしいここの輸送機の調達を決めます。無論それは政治家も知らせます。

まあC-2にしても不整地運用は要求せず、輸出しようとして「普通の軍隊」から不整地で使えないの(笑)と言われて、慌てて不整地の運用試験するような間抜けな国です。試験やったから性能が変わるわけでもないでしょう。

更に申せば強度不足で機体を補強し重量が増加したにも関わらず、ペイロードは計画の36トンのまま、川重や装備庁は魔法でも使えるのでしょうか。

そのC-2の調達コストと維持費も、無謀な計画が禍して膨れ上がる一方です。運用費なんて比率でいえばC-130より一桁高い可能性もあります。そのC-2を使って電子戦機を2種類も開発、装備していますから準禁治産者みたいなものです。

我が国の「隠蔽自衛隊」では装備体系を「相手(納税者)に手の内を晒さない」といって隠して、直前になって個別の調達を予算要求します。これは民主国家の軍隊ではありません。

個人的にはC-130Hの後継は早急に必要だと思います。実は防衛省でもC-130Hの近代化は商社経由で外国企業にも打診しているようです。

C-130相当の機体、更にそれより小さな機体、例えばC-27クラス、更にもっと小さな機体も特に島嶼防衛や災害時に必要だと思います。またこれらは特殊部隊ようにも必要です。ですから特殊作戦使用の派生型を持った機体が望ましいと思います。

さてスゥエーデンは老朽化したC-130Hの代わりにKC390の採用を11月9日に発表しました。

Sweden selects Millennium airlifter

Sweden selects Millennium airlifter
Sweden has selected the Embraer KC/C-390 Millennium aircraft to replace its ageing Lockheed Martin C-130H Hercules fleet.

Sweden selects the Embraer C-390 Millennium as its new military transport aircraft

Portal Embraer

スウェーデンは、旧式のロッキード・マーティン C-130H ハーキュリーズ機群の代替機としてエンブラエル KC/C-390 ミレニアム機を選択しました。

欧州ではオーストリア、チェコ共和国、ハンガリー、オランダ、ポルトガルくKC390ユーザーになります。因みに韓国も採用を決定して、MRO(整備・修理・分解点検)の整備も進めます。

「スウェーデンが [KC/]C-390 を取得することで、国防が強化されるだけでなく、訓練施設、サポート、ロジスティクスの面でヨーロッパに存在する相乗効果の恩恵を受けながら、同盟軍との相互運用性も強化される」とエンブラエルは述べています。近隣にユーザーがいることは運用面で大きなメリットがあります。自国しかないC-2はこの点不利で、有事に機材が失われても補充もできません。

スウェーデン空軍は、1965年に受領されたヨーロッパで現在も飛行している最古のC-130Hを6機運用してきて2017年、同空軍は新しい輸送機の調達を断念し、代わりにC-130Hのアップグレードを選択。この中期アップグレードでは、航空機の航空電子機器とその他のシステムが対象となったが、大規模な構造作業は含まれなかった。2020年に開始され、2030年代までC-130Hを運用可能な状態に維持することになっていました。

ですが2022年にスウェーデンは、代わりにイタリアから余剰の中古C-130Jを購入を決定。6機のうち最初の1機は2023年に納入される予定だったが、この取引は失敗に終わりました。

KC390は貨物室容積は170m³、最大ペイロードは23トン、重心上に集中した場合の最大ペイロードは26トンです。

C-130Hの後継にはKC390も含めるべきだと思います。いずれしても調達、運用コストの極めて高いC-2は全部廃止しても構わないでしょう。既存機は電子戦機部品取り用にしてもいいでしょう。

C390は旅客機ベースに開発されており、C-2に比べて運用コストは相当安いはずです。それに有事に陸自の16式MCVや19式SPHの空輸はファンタジーでしかありません。であればC-2を用途廃止にしても何の問題はありません。

対して輸送機の空中給油機能は必要です。現状空自は空中給油は戦闘機と空自の救難ヘリにしか給油を考えておりません。ところが今後F-35Bに給油できる「プローブ&ドローグ式の給油機拡充が必要です。更に島嶼防衛を考えるなら空陸自衛隊のCH-47にも空中給油の能力を付加すべきだし、そのため給油機は必要です。であればKC390の選択はありでしょう。

いずれにしても空幕は輸送機をどのような目的で使用し、そのためにはどのようなポートフォリオがいつまでに必要であるかということを納税者に示すべきです。それをやらせるのはすぐれて政治の仕事です。

【本日の市ケ谷の噂】
以前「自衛隊横須賀病院歯科、海老沢政人一等海佐は職場内ダブル不倫、で不倫相手のKさんの夫が各自衛隊病院にFAXを送り付け、告発されたが、お咎めなし、との噂」と報じたが訂正。

海老沢1佐が不倫していたのは現在補職されている自衛隊横須賀病院歯科診療部長の時ではなく、海上幕僚監部首席衛生官付衛生官(いわゆる衛生企画室歯科衛生官)の時。そして、職場内不倫ではなくKさんは海老沢1佐の大学の同期の女性。Kさんの夫から全国の自衛隊病院宛てに、二人がホテルに出入りする写真付きの文書が撒かれた大騒動に。海老沢1佐はKさんを護衛艦の見学に1佐という階級を利用して特別に招待していた。Kさんとの不倫は夫の通報により発覚し、防衛監察本部にも文書が送付されたが海自の隠蔽体質によって結局不問に付された、との噂。

月刊「紙の爆弾」12月号に以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。

月刊軍事研究に「ユーロサトリでみた最新MBTの方向性」を寄稿しました。

軍事研究 2024年 11 月号

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

European Security & Defenceに寄稿しました。
JGSDF calls for numerous AFVs within Japanese MoD’s largest ever budget request

東京新聞にコメントしました。
兵器向け部品の値段「見積り高めでも通る」 防衛予算増額で受注業者の利益かさ上げ 「ばらまき」と指摘も

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。