君は『Loose Change』を知っているか?

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『911テロ』と陰謀論

アメリカにはケネディ大統領の時代から、常に陰謀論が渦巻いている。曰く、CIAがアメリカのディープステート(陰の政府)の実行部隊として、様々な工作活動に従事し、世界の政変等の裏で蠢いていたというものだ。

アメリカは第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じ、急速に発展してきた国力を背景に、世界の警察としての力を保持しつつ、世界に影響を与え続けてきた。

建国300年に満たない若い国家が世界の中心に立ち続けることが出来ている背景は、基軸通貨米ドルの存在と、世界一の経済力、そして世界一の軍事力があるからだ。

仮に米ドルを基軸通貨とすることによって、世界の覇権を握るというのが、陰の政府が画策した世界支配の長期的計画だったとして、果たしてそんなことが可能なのか?という疑問はさておき、陰謀論好きな人々は、常にそんな夢物語に心踊らされ、実しやかにそのストーリーを語り継ぎ、想像を膨らませていった。

近代アメリカで最も衝撃的かつ、ショッキングな事件が、2001年9月11日に起きた世界貿易センタービルとペンタゴン(アメリカ国防省)への同時多発テロだ。

当時、世界貿易センターの双子ビルにジェット機が突入し、数時間後に巨大なビルが倒壊する様は世界中に同時中継され、世界の人々が大きな衝撃を受けた。

当時から、この事件には何らかのウラがあると囁かれていたのは事実で、アメリカ政府が情報を出し渋っている点や、アメリカ史上最も無能と言われたブッシュ大統領の時に起きたこのアメリカだけでなく世界を揺るがせた事件を、ブッシュ大統領以下、大統領周辺の一部は知っていたのでは無いか?というのは、事件直後から言われていた。それほどに、アメリカ政府の対応が常に後手後手だった。

また、CIAは早くから中東のいずれかのテロ組織が関与する大事件がアメリカ国内で起きる可能性が高いことの情報を掴んでいたとも囁かれていた。

911事件後、2001年時点でアルカイーダの指導者ウサーマ・ビン・ラーディンは事件の関与を否定していたが、2004年には実行したのはアルカイーダであることを公式に認めている。更に捜査の結果、2001年以後、徐々に中東のテロ組織アルカイーダが計画、実行したことが明らかとなり、アメリカ政府はテロ組織によるアメリカ国内への直接攻撃という歴史上かつて無かった事態に対処すべく、徹底した報復を行うことを明言していた。

『Loose Change(淫らな変革)』というドキュメンタリー映画は、2004年、突如としてインターネット上に現れ、インターネットミームの先駆けともなっていった。その作りの良さ、綿密に練られた台本、膨大な資料を使っての状況証拠の積み上げによって、陰謀論系の傑作と言われる作品だ。

アメリカの象徴の一つとされた世界貿易センタービルが攻撃された衝撃と共に、このドキュメンタリーがクローズアップされたのは、2001年以後、アメリカ国内では一気に中東問題が注目され、テロ組織壊滅に向け世論が形成されていったことも背景にある。

『Loose Change』自体は、911テロはアメリカ政府批判の為の映画とされている。と言うのも、当時、共和党の支持率回復が必須とされていたブッシュ政権は、その起爆剤がどうしても欲しかったのでは無いか?とされていたことに起因する。もしそうだとすれば、支持率回復の為には、アメリカ国民の目を外に向けさせるに、国家を揺るがす大事件を必要としていたとするなら、911テロ事件はうってつけだった。

大統領就任後、共和党と共に支持率が低下していたブッシュ政権は、911テロによってアルカイーダ許すまじの世論に押される形で、支持率は急上昇し、第二次ブッシュ政権誕生まで高い支持率を維持した。ブッシュ大統領は国防を理由に中東への介入を行い、テロ組織撲滅に向けアメリカ軍派兵を強力に推し進めた。

当時、共和党のブッシュ大統領に反発する民主党は、ビル・クリントンによって徐々に良くなってきていたアメリカの財政赤字を膨大に膨らませたのは、ブッシュ大統領であるとして、中東介入には反発していたが、911テロ事件はその声が霞むほどにアメリカ国内世論を後押しして中東介入を進めさせた。

911ほどの事件を、中東のテロ組織が行えるのか?と言う疑問を投げかけてきた人々は、やはり911テロ事件の背景に、何らかの国家権力の介入があったのでは無いか?と言う疑念が付き纏っていた。そして、公開された『Loose Change』は、戦略的にもインターネット上で小さく公開すると言う手法で成功したと言える。つまり、大々的な広告を打つのではなく、作りの良いドキュメンタリーの手法で、ネット上の有志によって手作りで情報をかき集めつなぎ合わせた結果、その状況証拠と共に明らかに当時のブッシュ政権の背後にいた何らかの力が働いたと結論つけている。

このドキュメンタリー制作の手法は、実に巧妙に練られたストーリーで、ブッシュ大統領や共和党を直接名指して批判はしていない。あくまで、状況証拠の羅列によって、人々に陰謀論と明確に示さない形で陰謀があったのでは無いか?と印象つけている。

だからこそ、911テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンが暗殺され、一応の決着を見た現在でも、この映画の中身を本気で信じる人が、いまだに後を経たないし、2004年に公開されたファーストエディション以後、3回にわたって再編集が行われ、公開され続けている。

更にこの映画、ファーストディションは無料公開されたことも、人気を博した背景だ。これだけの取材、資料分析を行い、更に無料公開したことで、ネット上の有志が無償でやったからこそ、商業主義ではない真実のドキュメンタリーだと受け入れられたのだろう。

ただ、ファーストエディション公開後は、有料による配布となり、一気にその熱が冷めたのも事実で、根強いファン以外、既に忘れ去られた映画となりつつある。商業的に成功したとは必ずしも言えず、影響は与えたが、パッとした成果は生んでいないというのが現実だ。

ただ、陰謀論の先駆けとして、インターネットミームの作り方としての手法は、後々、多くの人々に影響を与えたことは明白だ。

以後、

・陰謀論は「ある」ものではなく「作られる」もの
・SNS規制こそが危険

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。