メガバンクの貸金庫さえ「もはや安全とは言えない」

メガバンクの顧客の貸金庫から、行員が顧客の現金や貴金属を盗んでいた事件が発覚しました。

2つの支店にまたがり約60人分の預入資産で、被害総額は十数億円に上るそうです。

ここまで被害が大きくなるまで事件が発覚しなかったのは、日々貸金庫にアクセスする人がそれほど多くないからだと思われます。

それでも数年前から顧客の指摘がいくつかあったようですが、本件に関して問題だと思うのは顧客の指摘に銀行側が取り合わず、被害が拡大する原因になったとの情報です。

貸金庫の中に何を入れているかは、入庫のたびに銀行員がチェックをしているわけではありません。

本人しかわからないですから、利用者が貸金庫の中のものがなくなったと言っても、銀行側が顧客の勘違いや言いがかりだと決めつけてしまう可能性は十分にあります。

それにしても不思議なのは、なぜ行員が2つの支店で勝手に顧客の貸金庫にアクセスできるようになったのか?

通常貸金庫に単独で入ることはできないはずですし、入れても顧客の資産が入っているボックスを開けることはできないはずです。

貸金庫に頻繁に出入りをしてるとすれば、他の行員が不審に思うこともあるでしょうし、盗み出したものを、どうやって知られないように運び出したのかも謎です。

管理体制に関しては抜本的な見直しが行われると思いますが、再発防止は可能なのでしょうか?

私も別の銀行の貸金庫を使っていますが、自分以外はアクセスすることができないという前提で、銀行を信用して大切な資産を預けています。

もし自分が預けていると思っている資産が盗まれたとしても、銀行を疑うよりも自分の記憶違いではないかと思ってしまう。それくらい銀行を信用しています。

そんな銀行の貸金庫でさえ資産を預ける場所として安心できないとすれば、果たしてどこに資産を置いておけば良いのでしょうか?

結局、絶対的な資産の安心な保管場所というのはどこにもない。分散こそが、最も安全な資産の保管方法である。それが今回の事件で改めて確認されました。

この事件を個人的にはそんな風に総括しました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。