頑張れ石破首相①:企業・団体献金を「完全フルオープン化」へ

石破茂首相は、衆議院の本会議において、企業・団体献金は「自民党として不適切だとは考えていない」と明言した。「政党として避けなければならないのは献金によって政策がゆがめられることだ」と主張。一方、立憲民主党を中心にした野党は企業・団体献金廃止の法案を提出した。

石破さんの企業・団体献金のスタンスは、「禁止よりも公開だ」ということらしい。筆者は企業・団体献金どころか、個人献金も規制をすべきという立場なので、少し残念ではある。とはいえ、自民党にとっては、力の源泉でもある企業・団体献金廃止は難しいだろう。それは党の存続に関わることだからだ。そこは仕方ないかもしれない。

しかし、自民党として廃止ができないなら、「完全公開」、つまり、すべて完全フルオープン、誰もが情報を見れてチェックできるような、透明性を確保する方向を約束してもらいたい。

自民党HPより

企業団体献金は日本経済にマイナス

企業・団体献金は、有力者とのお付き合いのみたいな位置づけのものも多いが、コネクションや関係性構築、行政の規制回避、補助金取得、公共事業受注といった目的での色が濃い。特に日本経済に悪影響である。

その理由は、既存の業界地図を固定化するからだ。この失われた30年の経済不振、既得権益を固定化させ産業構造改革が進まなかった。1980年代まで日本経済を支えた製造業はそのプレゼンスが低下し、リーディング産業といえないのだが、製造業、特に大企業中心の経済政策が行われてきた。

野口悠紀雄さんによると「1990年代の後半以降、円安政策がとられた。2000年代になってからは、積極的な介入によって円安への誘導が行われた。これによって重厚長大型の製造業が輸出を増やすことができた。この円安政策がビジネスモデル変革や技術開発が十分に行われなかった大きな原因」(野口さん著「どうすれば日本経済は復活できるのか」SB新書)ということだ。

特定の企業・団体、特定の業界からの献金を受けてきた政治家さんは日本全体の経済政策を考えてはいたと思うが、どうしても、献金してくれる企業や団体への配慮をせざるを得なくなる。当然、業界からの反発をうける改革的な政策や法改正を実行しにくい。そのため、特定の産業の延命や補助金・助成金などで支援することになる。献金を出せる業界、その時の主要企業が献金をする額が多いため、そのパワーは絶大だろう。

その結果、構造改革などは行われることもない。健全な市場競争は歪み、産業構造改革が防がれ、経済は停滞する。

公平性を毀損する

企業・団体献金は、民主主義社会として公平性の問題もある。お金の力でアクセス権を買う行為は公平性にも欠けるし、民主主義、資本主義経済という社会の仕組みをゆがめる。

国の予算の中には、各企業向けの助成金・補助金、租税特別措置、大型建設事業などの公共事業など様々な予算がある。政治とのコネクションがビジネス上で有利に働く面も多い。特に、外交においても、政治家が売り込みをしてくれる行為も増えた。

売り込みに参加したいと思っても、コネクションがない会社や団体は、相手にすらされない。企業・団体献金をしている企業が優遇される構造がそこにはある。これって資本主義経済の基本である競争環境もゆがめるし、健全な競争を必要とする資本主義経済、ビジネス環境がゆがんでしまう。

商品開発やサービスのレベルの企業努力こそ重要なのに、政治献金をした企業・団体が過度に保護され、規制に守られ、公共事業も受けられ、助成金も得られまくるなど優遇されまくったら、熱心に仕事をするのはあほみたいではないか。

「公平公正」こそ石破さんたる理由!

公共事業にかかわる企業がどのような献金をしているのか、どの業界がどれだけ恩恵を得ているのか、を調査しようとしても調査は難しい。その状況は「ブラックボックス」と言っても過言ではない。

政府の事業が検索できるサイト「judge it」で政府の事業を受託している企業名はわかるものの、各企業や業界団体の献金状況がわからないため、関係性はどういったものか、政策への影響力はどう行使されたのか、献金がどう作用したのか、利害相反があったのか、がチェックできない。

企業・団体献金をフルオープンで公開することで、メディアも個人も野党もチェックできるし、公平な民主主義プロセスが担保できる。企業の経営者も「社会的責任」の中身が問われ、献金をすることの意味を問われるようになるし、パーティー券の購入などの支出を新規事業・イノベーションの予算に振り替えることも可能になるだろう。

最後に、政策活動費は廃止される方向だが、企業・団体献金の見直しは第三者機関で検討するそうだ。企業団体献金については自民党のビジネスモデルとしても廃止はできない。なら献金活動を完全に可視化してほしい。

「公平公正」と語ってきて、民主主義のあるべき姿を施政方針演説で語った石破さん、石破カラーを明確に打ち出してほしい。石破政権に期待したい。