家が買えないなら買える方法を考えるべき:年収の10倍に到達した不動産価格

不動産の値上がりは日本も世界も同じ。そして合言葉は「もう買えない!」。日本の場合は少子高齢化が進む中、住宅会社はそれでも作り続け、建物は空に向かって無限の空間を利用しています。狭いニッポンだって発想を変えれば無限の居住地を持つことになります。住宅開発会社は「是非とも私どもの新しい40階建ての建物に…」といざなうわけですが、いくら販売会社が頑張っても買い手が見合うお金を持っていなければデベロッパーからすれば宝の持ち腐れになります。

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今や年収の10倍に到達した不動産価格。東京都に限れば年収17.8倍、ダブル億ション、つまり2億円越えがちらほら目立ってきていますが、金額ベースで見れば東京郊外に行けば4-7000万円で購入できる物件はかなりあります。それにしても「あなたの年収で買えますか?」です。

私はマンションデベをやり、カナダでは自分で開発建築したマンションに住んでいますが、正直一長一短だと思っています。それは間取りに対するフレキシビリティが少ないこと、そして戸建てと比して狭いのです。更に月々払う共益費は12万円。ローンの支払いじゃありません。この共益費、建物の管理、補修と24時間コンシェルジュの人件費がほとんど。

ではコンシェルジュに何か頼んだことがあるか、と言われればせいぜい宅配されたアマゾンの荷物を預かってもらっているぐらいです。とはいえ、セキュリティをしっかりしておくことが建物価値向上の第一歩という考え方に基づき、コンシェルジュは不動産価値の維持のためにも絶対必要という白人層に圧倒的な支持を受け、共益費、やむなしであります。

日本のマンションの場合は別の問題があります。それは敷地面積が大きく建物の形状が長方形に長い場合が多いためです。その場合、中廊下で両側が部屋、その部屋の窓は角部屋ではない限り一方向しかありません。リビングと主寝室を窓際にすると子供部屋などそれ以外の部屋には窓がない間取りが多くなりやすくなります。私はこのような物件を「金太郎飴型マンション」と呼んでいるのですが、これだと居住空間として全く面白くないし、わくわく感も出ないのです。

一方、賃貸住宅もついに賃料が上昇を開始しています。日本の賃貸住宅の賃料は「世界の常識、日本の非常識」の典型で賃料が上がらない、上げにくいという問題を抱えています。私が東京で運営するシェアハウスでも退去者が出ると次の新規募集はほぼ値上げをするので回転している限りは賃料が刷新されます。しかし、例えばコロナ時期で空き室があった時代に入居された方には当時キャンペーン価格で提供したのでかなりお安い状態。ではその方に「値上げのお願い」をすればいいじゃないか、と思われるでしょうが、若い方が地方から出てきて頑張っているのだから、と思うとつい情が入ってしまうのです。

が、そんな賃貸住宅も今や年1%程度の値上がりとなっているようです。これは数字だけ見れば大したことなさそうですが、実際には2-3%上昇しているところが引っ張っているわけです。月10万円の賃料なら毎年2-3千円値上がりするということです。これでは「賃貸は安泰」とも言っていられなくなります。

そこで私のご提案です。「二世代住宅」はご存じだと思います。親と子が一つ屋根のもとに住む、だけど、玄関は別なので一応、プライバシーはあり、スープが冷めない近さの上に親が介護などとなればより便利であります。ではこの発想を発展させて「二所帯住宅」を作ればどうか、と思うのです。

私がシェアハウスやアパートを東京で経営していて思うのは壁を隔てたプライバシーさえあればお隣が誰でもさほど気にならないのです。ならば戸建てをAさんとBさんが共同で購入するという発想ができるのではないかと思います。都内の戸建てなら7-8千万円程度。これを2人で割れば4千万円を切る価格になります。

ではこれをどうやって所有し売買の自由度を保つか、です。まず建物の所有を信託扱いにして2人の部分所有と権利を明白にします。土地は区分所有でしょうね。将来、片方の方が売りたければ信託上の権利を売買することになります。更に一つ屋根の建物ですから共益費が必要でこれを信託口座に預け、必要に応じて引き出して修理することになります。その場合、双方で話し合ってらちが明かない時があるはずなのでそこは専門家が介入できる仕組みを作っておいたらよいでしょう。固定資産税は専有面積に応じて案分負担します。もしも片方が未払いを起こした場合、即座に建物に抵当権(先取特権)(但し第三者対抗要件としての登記というより信託書面上、未払いとし、抵当権設定留保でよいと思います。)で双方の債権債務を明白にします。未払いが積みあがれば強制売買で退去させられる強制権が付保されることが大事です。

この変形バージョンとして「二所帯住宅」において所有は一人の方の名義とし、もう一つの部屋は店子(たなご)として賃貸ないし、Rent to Ownにして一定期間賃借すれば店子が所有権なり居住権を確保するというゲーム感覚のビジネスもありです。

私はこのような発想が無限とまではいわないですが、アイディアはいくらでも浮かんでくるのです。ではなぜ日本の不動産業界は革新的発想ができないかといえば業界という古い慣習で凝り固まった思想がフリーズさせているからです。ビジネスの世界ではグローバル化とか発展的進化といったニュースが飛び交いますが、不動産は実に古臭く何年たっても変わらないのです。理由の一つに法律が硬直化していることがあり、戦後直後の住宅難の発想をいまだに引きづっていることはあるでしょう。しかし、シェアハウスは今や完全に市民権を得ているし、私のところの住民たちはいよいよ回転率が悪くなり、来年春の新入学引っ越しシーズンを前にウエイティングリストが長くなってきています。

住宅のあり方は変わります。その中でもっと様々な所有や居住形態があってもありだと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月12日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。