米大統領選を制し再選したトランプには、再度の暗殺を含め、就任までに多くの障害が有り得、また就任後も職務執行に当たり様々な妨害も予想される。これらを受けてトランプは、就任に向け様々な「敵」と手打ちをし始めている。
バイデンとウクライナ
先ず現職のバイデンと11月13日にホワイトハウスで2時間会談し、スムーズな政権移行をする事で合意した。バイデンは途中で自分を候補から引きずり降ろしたカマラ・ハリス周辺への意趣返しで、選挙期間中ハリスの足を引っ張るかのような動きもしていたため、合意もすんなり行った感がある。
その後、11月17日にバイデン政権は、ウクライナに対してATACMSミサイル等でのロシア本土への攻撃を容認し、トランプ再選で西側にも厭戦気分の出ていたウクライナ戦争に再び油を注いだ。ロシアの報復により第三次世界大戦に発展しかねない行為だったが、これが仮にトランプと手打ちをしたはずのバイデン自身の意志だとしたら、条件闘争がまだ続いていたと考えられる。
その後1日、バイデンは次男のハンター・バイデンの様々な犯罪に対して恩赦を行った。将来の訴追も含めた恩赦となり、トランプはこれに対し恥ずべき事だとコメントを発表したが、1.6議事堂事件被告のトランプによる恩赦の容認との交換条件が握られていたのかも知れない。
なおバイデンは12日に約1500名超の減刑や恩赦も発表した。また、「トランプ次期大統領による復讐から守るため」に、次期大統領に批判的な者たちに「予防的な恩赦」を与えることも検討している。一家の安寧を保証された老人自身としての条件闘争は着地したようには映るが、周囲はまだそうではない可能性は高い。
各地の火種
そうかと思えば、シリアで武装勢力によりアサド政権が倒れ、アサド一家はロシアへ亡命した。大きな構図としては、辛うじて政権を維持していたシリアに対して訪れた「遅れて来たアラブの春」という事になる。
アサド政権の後ろ盾であるウクライナで手一杯となっているロシアの隙を突いたのか、次期トランプ政権を見据えて駆け込みで起きた感がある。という事は単純に「時間差で起きたアラブの春」という事になるが、バイデン政権とイスラエルの仕掛けの可能性も完全には否定できない。
アジアでは、フィリピンのマルコス大統領とドゥテルテ(娘)副大統領間の政争が起きている他、韓国で尹錫悦大統領が3日夜に戒厳令を発し、議会の決議を受け翌日未明に解除されるという事件が起こり、14日には大統領弾劾決議が可決された。議会の物理的封鎖が破られなかったら戒厳令は解除されず、反政府側に大量の逮捕者が出ていたとも考えられ、日本の憲法改正での緊急事態条項新設議論にも示唆は多い。
だが、それは別途精査考察するとして、間近に迫った第二次トランプ政権で朝鮮半島の状況がガラリと変わる事を考えれば、尹政権の運営が行き詰まっていたとしても、のらりくらりと野党の追及を躱し、そこまで待てなかったのか奇異な感が残る。
或いは逆に、トランプ政権再来が迫るが故、尹政権は急がねばならない理由が何か在ったのか?
トランプは公約通りに政権に着くや先ずウクライナ戦争の停戦を図る。その際、プーチンとの関係を強固にする事は必須で、それは実質的な「米露同盟」の端緒となり、拡大中国包囲網として日本を含むアジアを巻き込んで行くだろう。すると必然的に北朝鮮はオマケとして付いて来る事となり、朝鮮半島も対立分断を終える事となるのではないか?
今回の韓国の政変には、この流れを嫌う者、即ち拡大中国包囲網を嫌う中国、或いは先述のウクライナでの第三次世界大戦の誘発と同じ文脈で朝鮮半島を発火させたい者が背後に居る可能性、またはこの機を奇貨として利用したい勢力が居る可能性は完全には除外して考えるべきではないだろう。
製薬業界
トランプは、4日に製薬大手のトップ等をマールアラーゴに呼び次期厚生長官に内定しているロバート・ケネディ・ジュニアを同席させ会食の場を持った。そこでは、ガンの治療方法発見を民間とトランプ新政権が協力して進めて行く事等が話し合われた。
それに前後して、4日までに、新型コロナウイルス流行に関する米下院特別小委員会は、コロナの起源は「中国・武漢の研究所での事故」だとする最終報告書を公表した。
その中で、ワクチンについては下記の記述がある。
「トランプ次期大統領のワープ・スピード作戦は、COVID-19ワクチンの迅速な開発と承認を奨励し、大成功を収め、何百万人もの命を救うのに役立った」
「COVID-19ワクチンはウイルスの拡散や伝播を止めませんでした」
「ワクチンの義務化は科学に裏付けられておらず、利益よりも害の方が大きかった」
この一見相矛盾する記述を超意訳(特に以下のカッコ書き部分)すると要するに、「ワクチンは重症化を大いに防いだが、感染予防効果・二次感染予防効果は(ゼロか)少なくとも大したものではなかった。副作用リスクと天秤に掛ければ、(高齢者・既往症患者等以外)に於いてはデメリットの方が多く、義務化は下策で有害だった。故に、トランプの対応は称賛されるべきである(それと対照的にファウチ等のワクチン対応は下の下であった)」。
共和党が優勢を占める下院の委員会であるため、当然ながらトランプ上げのファウチ下げとなっている。ワクチン自体も接種する年齢層等についてはメリットの方が多かったという事に対して筆者は実感としては得心しないが、米国に於いては肥満事情や免疫機能が東アジア人と異なっている事を考えれば、あながち的外れではないのかも知れない。
さて、製薬業界と手打ちをしたかのように見えるトランプは、コロナとワクチンに対して概ね「中国有罪」「ファウチ有罪」で処罰し補償を求め、「製薬業界無罪もしくは免罪」で臨む風情と筆者には感じられる。
軍産複合体・金融界・世界政府主義者
その他、トランプの「敵」のうち大きなものとしては、軍産複合体がある。戦争が無くなれば武器が余り売れなくなるので、中東は依然として燻るにせよ、世界で戦争を終わらせると大言壮語するトランプは基本的に親の仇だ。
彼らに武器の代わりに何か飯の種を与えねばならず、トランプもそう簡単に手打ちに持って行く事は出来ない。米政府効率化省(DOGE)共同トップに就任予定のイーロン・マスクは軍事費についても斬り込むだろう。そうでなければ算盤が合わない。
マスクが戦争の代わりに火星移住計画を国家プロジェクト・国際プロジェクトとして打ち出し、武器の代わりに火星行きロケット等の産業の裾野を拡げ軍需企業の参入を促す、或いはテスラの無人運転やAIロボット技術を無人兵器分野へ提供して、軍縮を兼ね定期的に限定地域で無人兵器同士の消耗戦大会を開く類の飛び道具でも打ち出さないと軍需産業を喰わせて行くのは難しい。なお、軍幹部は、天下りで軍需産業に喰わせてもらっているので軍需産業の決定に従うだろう。
また、金融界も「敵」の一つだ。戦争が減少すれば金融商品・資源食料のボラティリティが減少し鞘抜きが難しくなる。トランプはビットコイン等の暗号資産に対する規制緩和に出ているが、これが中央銀行の通貨発行権への牽制と共に金融界の新たな食い扶持になるかも知れない。
最期に、古くはローマクラブ、今はダボス会議、ビルダーバーグ会議、そしてそれらの下部組織然としたWHO等に巣食う世界政府主義者達である。上記でこれまで述べて来た「敵」は、言わばカネによってどうにでもなる連中だが、当該主義者は何しろ主義者なので面倒臭い。トランプやプーチンのような自国優先主義、ナショナリストは不倶戴天の敵となる。
今まで脱炭素とかパンデミック共通ルールとか、世界強制民主化等の世界の指針を示して、世界中を動かしてきた。その指針に従う事によって食い扶持を与えられた者が彼らの力の源泉だった。例えば東京ガールズ・コレクションで掲げられたテーマに沿って行けば参加も許されそれぞれのビジネスに繋がって行くような感じか(なお東京GCの方は楽しい催しです)。
このラスボスの攻略法は、食い扶持にぶら下がっている周りの連中を引き剥がす事に尽きるだろう。かくてトランプの闘いは続いて行く。
追記:トランプに会えない石破総理は、安倍元総理未亡人の昭恵さんを「特使」に立てるそうだ。人気YouTuber・ナオキマン氏を頼らざるを得なくなるよりはマシかもしれないが、トランプからスルーされ続ける石破氏を頂く日本に対する諸々の請求書は頗る高く付く事になるだろう。