ウクライナ戦争、2025年の停戦はあるか?

来年の10大予想の一つに入れたいウクライナの戦争の終結の可能性ですが、私はあり、とみています。

ここに来てゼレンスキー氏、プーチン氏共に休戦/停戦について否定しなくなったのはトランプ大統領の就任を間近に控え、一種の期待感と共に、両国ともそのきっかけを逃すと留まるところを知らない泥沼戦争になることを計算したからかもしれません。ただ、トランプ氏は12月20日にNATOの拠出金を条件にウクライナ支援を表明しており、当初の姿勢と大きく変わっている点にはどこまで本心なのか検討の要があります。

プーチン大統領とゼレンスキー大統領

トランプ氏が25年1月に就任しても氏の任期は4年で、再選は憲法改正をしない限りありません。とすればトランプ氏の賞味期限を考える必要があります。アメリカの中間選挙を考えると今のトリプルレッドが維持されるかどうかはその時の社会経済状態次第ですが、確率的には議会のどちらかないし両方が民主党に変わる公算は高いのです。現時点で共和党がトランプ氏を凌ぐような有力な後継者を出せないことと国民の考えが常にうねる傾向があるからです。(残念ながら人気のあるイーロン マスク氏は南アフリカ生まれなので大統領になれる要件を満たしていません。)とすればトランプ政権の後半はねじれる、つまり、トランプ氏にとってやりにくい政権になる確率が高くなります。

ここから類推するとトランプ氏が元気で突っ走れるのは初めの1年。そして2年目に黄金期を迎え、3年目で守勢に入り、4年目でくたくたになる、というのが私の読みです。

とすれば国際情勢についても元気なトランプ氏がいるうちにウクライナ問題解決の道筋をつけるべきだろうというのは大いに考えられるシナリオだと思います。

一点、私が思案に暮れていたのがトランプ氏が氏の大統領就任式に習近平氏をご招待するという点です。その下心は何であろうか、とずっと考えていたのですが、ふと思ったのがもしかするとウクライナ問題で和平の協力を求めるのではないか、という気がしたのです。

ロシアにとって中国は兄貴分(かつては弟でしたが今では逆転しています。)であるため、トランプ氏がいくらこうだ、と言っても習近平氏が首を縦に振らなければうまくいくはずの話もまとまらなくなります。とすればトランプ氏が習氏とディールをする公算が高いとみています。

個人的にはトランプ氏は中国とトランプ1.0の時のような全面経済制裁戦争をしない気がするのです。もちろん、既存の流れは維持すると思いますが、同じやり方を繰り返すとは思えないのです。むしろ、中国を利用するという発想に転換すると思います。なぜなら中国は十分に国内問題で苦しんでおり、回復には今しばらく時間がかかる(日本のように30年経っても冴えない状態もあり得ます。)ので今更経済戦争をやっても得るものは少ないと考えるでしょう。

むしろ、台湾とのディールに方向転換するとみています。台湾系御三家(エヌビディアのファン氏、TSMC、鴻海)のほうがはるかに強力であり、効果的なのです。だからこそ、習氏は利用する、そしてそれがまずはウクライナ問題だろうと考えたのです。

私が寄せてもらっている団体のセミナーでウクライナで大使をされていた松田邦紀氏の帰国を受けて先週、レクをしてくださいました。メディア目線とは違う切り口で極めて有効なインプットを頂いたと思います。ポイントはウクライナは思った以上に善戦しており、ロシア側の疲弊度の方が高い、という点です。北朝鮮に派兵を求めるほど兵力のロスが大きい上にロシア国内に戦場に行くなり手がいないという問題を抱えています。

ということはこの戦争は現状、若干ロシアが押していますが、実質膠着状態と言ってよいのですが、双方ともそう長く体力が続く感じでもなく、ロシアはルカシェンコ氏を口説き、参戦してもらうか、飛び道具を使うしか残っていないようにも見えます。よって私が察するにロシアが攻める東部4州の前線が崩れる前に休戦ラインを敷くのが最善策に見えるのです。仮にトランプ氏が戦争継続を求めるならなおさらのプレッシャーになるでしょう。

ロシアは前回テストした超音速中距離爆撃ミサイルを使うこともできるし、プーチン氏はキーフに照準を合わせようか、とも発言しています。しかし、アメリカがウクライナによるロシア領土へのミサイル使用を認めたため、ウクライナを刺激する状態になるリスクが高いこともあります。

松田大使もおっしゃっていましたが戦争は常に武力と外交の組み合わせなのです。その武力による目覚ましい進展がない場合、外交に頼るしかなく、トランプ氏がその仲介に積極的に介入する姿勢を見せれば25年の早い時期に停戦交渉が進むだろう考えるはナチュラルかと思います。

もしもトランプ氏がこの和平に成功すればノーベル平和賞が転がり込んでくる可能性もあります。政治家はトラブルを解決するのがその仕事であるのでその成果が本当にあったかどうかは5年ぐらいたたないとわからないものですが、それこそスウェーデンとノルウェーが政治的にノーベル賞を出すことはなんら問題もないでしょう。

ウクライナ戦争が停戦したら日本は一気に経済協力を持ち掛けたいところです。地理的には非常に遠いですが、震災におけるボランティア活動が活発な日本の若者を見ているとウクライナ復興を手伝いたいという人も案外多い気がします。そこで日本の若者が国際社会で生きることを学んでくれればそれはまた良い足跡となるでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月23日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。