これでよいのか、第7次エネルギー基本計画

Lari Bat/iStock

エネルギー計画は3年ごとに見直されるのですが、第7次となる新計画の素案が17日に発表され、25日に審議会で承諾されています。年明けの閣議で正式決定する流れとなっています。そのエネルギー計画、どこに焦点を置くかでメディアのトーンが全く違うのですが、まずは素案を平易に箇条書きにすると、

2040年の時点においてエネルギーミックスを、

  • 再生可能エネルギーを4割から5割程度に(第6次では36~38%)
  • 火力を3割から4割程度に(第6次ではLNG20%,石炭19%、水素アンモニア1%)
  • 原子力を2割程度に(第6次では20~22%)
  • 原子力については最大限活用(第6次では依存度を低減)

となっています。

東京新聞は早速原発の「最大限利用」について噛みついています。一方、日経は再生エネルギーについて独自分析をしています。再生可能エネルギーが40%ならば太陽光22%、風力4%、水力8%、地熱1%、バイオマス5%という割合です。

日経は「再生エネが5割なら、太陽光で全体の29%、風力で8%をまかなうという内訳も示した」とあります。新計画で示されたレンジの上限は太陽光29%、風力8%、水力10%、地熱2%、バイオマス6%なので全部足すと55%であり、日経の前提条件は必ずしも正しくないのでその点は間引く必要があります。

その上で指し示したのが「23年度の発電実績と比べて太陽光は3.6倍、風力は9.1倍にそれぞれ増やす必要がある」であります。さて、太陽光は太陽が出ている時、風力は風が吹くときだけ発電するのでその稼働は一定の割引率をかけねばなりません。日経では実際の発電量はフル稼働時に対して太陽光は15%、風力は30%としています。そこから太陽光パネルの面積で類推すると現在の香川県の3/4の面積から愛知県全部の面積が必要となるとあります。

私はこれがとても懸念される事態だと思うのです。経産省はエネルギーの供給源について再生エネルギーは無条件に増やせると考えているような気がするのです。果たしてそうなのだろうか、というのが私のシンプルな疑問です。理由は日本を太陽光パネルと風車だらけの国にするのか、という景観問題を全く考慮していない点なのです。

地方に行く特急電車に乗っていると時折、田畑の向こうからきらりと光るものが見え、何かなと思えば太陽光パネルだったりすることはありませんか?あれが今の3.6倍にもなると思うとぞっとするのです。風車に至っては9.1倍と出ています。風光明媚な海の向こうには風力発電設備があったなどというのはどうなのでしょうか?

東京都心近くの防波堤釣りのメッカでも知られる若洲公園に巨大な風車が建っていたのはご存じでしょうか?初めて行った時、違和感満載だったのですが、近年行ったときは廻っていなかったような記憶がありました。実際、故障ばかりで寿命になり現在、撤去をしています。これを作ったのは2004年。つまり20年しか持たなかったのです。今後、無数の風力発電の施設が海や山に設置されそれが仮に20年ごとに作り替えるとなればそれが正しい政策なのかなぁ、という単純な疑問はあります。

東京都は25年4月から新築の2000㎡以下の新築住宅に太陽光パネル設置を義務付けます。果たしてこれが正しいのか私は疑問視しています。そもそも戸建て住宅が対象ですが、一般持ち家住宅の建築戸数に限れば年間でだいたい13000戸の供給でこの10年では4割近く減少しているのです。小池氏の政策に支持する声があるのは知っていますが、どれだけの効果があるのかは別問題だと思うのです。それと東京のようにマンションと混在している場合、太陽光パネルがまぶしいという問題もありそうです。

ご承知の通り東京五輪の際に小池氏は電柱の地中埋設を進めました。私のところの電柱もなくなり景観がスッキリしました。あれは何のためといえば災害時のリスクもありますが、景観が最大の理由だったと記憶しています。ならば東京都のみならず、日本政府は景観をどのように考えているのか、そのあたりの整合性は聞いてみたいと思うのです。美しいニッポンをキャッチフレーズに訪日外国人を増やすことを考えるならこの点をどう配慮するのか検討が必要ではないでしょうか?

原発については、原発の既存の敷地において使用期限を迎える原発に変わり、新型を設置することが盛り込まれています。つまりリプレースです。これがどのような原発なのかはわかりません。個人的には新型の小型原発を分散設置するのが流れになると思うので、そこに踏み込んでいない点が気になります。またAIが産業として進化した場合、巨大な企業では小型原発一基分の電力を必要とします。事実、マイクロソフト社は自社専用の小型原発設置のアレンジを現在進めています。

私から見るともう少し、技術の進化を見据えたエネルギーミックスとその配分、および景観を含めたより多方面からの見地も含めたバランスの取れたより賢い政策を進めてもらいたいと思います。

今回のエネルギー基本計画がいかにも縦割り行政で一部の専門家だけで考えたプランというのが見え見え。おまけに3年ごとに見直すので「見直しを先送り」しやすい傾向もあると言えます。個人的にはこの基本計画の在り方そのものを見直すべきだと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月26日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。