時代の変化の風が吹き荒れた2024年:自民党第一主義からの変換

今年最後のつぶやきなので一年を振り返ってつぶやいてみたいと思います。24年は年初から能登半島地震や1月2日の海保機と日航機の衝突事件が続き、嫌なスタートを思わせました。一年を通じてニュースネタは尽きなかったのですが、スポーツでは明るい話題もありました。大谷サンの活躍、パリ五輪のメダルラッシュで国民のマインドはまずまずではなかったかと思います。世界と比べれば日本は安定していたと思います。世界の中で一番幸せな主要国の一つだと私は思っています。

では今年のつぶやきをお送りいたします。

経済編 値上がりラッシュだけど株も上がったぞ!

日経平均がなかなか抜けなかった1989年12月29日終値の38957円。34年かけてようやく更新しました。日本の経済が寝ていたのか、体質改善に時間がかかったのか、はたまた成長に対する興味が失せたのか、成長する気力がなくなったのか、いろいろありそうですが、個人的には日本企業に陽の光が当たったというより世界のうろつくマネーが消去法で探し求めた行き先が日本だったという気がしています。そして今でも世界を見ればトラブルが相次いでおり、まずは日本に投資していてよかったね、でしょう。

一方、物価の上昇は私がずっと言い続けてきた点。円安になれば輸入コストが上がる、少子化の日本では労働力が不足する、更には世界の中の購買力という点では商社の買い負けも物価高要因。内的には日本企業の我慢の限界、そしてインフレ故に高い賃上げ率、更に賃金を上げるだけでなく労働条件を改善しないと労働者を確保できないというジレンマに陥っています。だからこの物価上昇は本格的なものであり、植田日銀総裁は黒田前総裁の否定から入ったのです。外から見れば日本もようやくガラパゴスではなくなりつつあるな、という気がしています。

では本当に日本経済は良好か、といえば茨の道でした。私が見た2024年の日本企業の活動を一言で申せば新旧交代。これは経営者もそうですがAIが着実に浸透し、産業そのものの地殻変動もあったと思います。またコロナのゼロゼロ融資の余波で飲食店を中心に倒産や廃業が目立ちました。M&Aが引き続き多かったのも特徴でホンダと日産の経営統合の報道はその象徴だと思います。来年に向けてその勢いは更に加速するでしょう。資本主義なのでどうしても効率化を優先するのはやむを得ないのです。成熟国が避けて通れない道のりだと考えています。

政治編 自民党第一主義からの変換

昨年の「今年のつぶやき」で「こんな政治を誰が予想した」と題し、長期化する岸田政権や自民党分裂論を述べました。自民党が二分裂することはないという私の意見は全否定され続けたわけですが、岸田政権の末期は自民党裏金問題に追われ、安倍政権末期のモリカケ桜問題の時と同様、野党の攻勢と世論の不満に押されまくりでした。ただ、個人的に見れば自民党の権力関係や長老政治を含め刷新が急務だったわけで長期的には良いきっかけだったと思っています。

今年の政治はSNSイヤーとされますが、平たく言えば若い人を含めて政治に高い関心を持って頂いたきっかけの年だったと思います。都知事選では56人も候補者が出るし、兵庫知事選では長いバトルがいまだに続きます。そして秋の衆議院選は与党が過半数割れ、ドンを失った公明党も凋落、変わって若手に強く支持された国民民主の躍進は想定以上でした。選挙で議席を伸ばした立憲の陰もすっかり消えたなと。個人的には立憲の安住淳氏は時代にマッチしていないと思います。立憲がイメチェンをしたいなら彼の切り口ではもう駄目でしょうね。政治がプラス思考に変わってきているのです。

その中で保守派からは大ブーイングの中、スタートした石破政権。持たないぞ、と言われながら10月1日から既に概ね3か月。私は100日間のハネムーン期間は批評しないと申し上げました。100日を少し超えますが、トランプ氏と1月中旬に会談があればそれ以降が石破氏に対する本格的な初期評価となります。少数与党しかも自民党の中では主流派とは言えず、力ある議員が後ろでブーたれるだけで力を発揮できない自民党組織がこのような体たらくでよいのか、不倫しても許された玉木氏を推す若手の声、この時代の変化の風が吹き荒れたのが24年の特徴だったと思います。

石破茂首相 首相官邸HPより

国際編 人々はチェンジを求めた

オバマ元大統領の2008年のスローガン、Yes! We can change!。あれから16年経って世界中の人はこのスローガンを言葉遊びではなく選挙行動を通じて見せたと思います。選挙イヤーであった2024年は物価高など今の生活に不満な声が反映され、各国で与党が弱体化、ないし敗退していきました。政党は関係なかったと思います。とにかく現状を打破し新風を求める、これが流れでした。ここカナダも1月末に内閣不信任案が提出されそうなのでいよいよトルドー氏も決断をしなくてはいけないところに追い込まれています。

ただフランスの動きを見ると右と左が協力して中道を倒すという不可解な状況にあり、国民の不満は個々人レベルの我儘や不満を国政に反映させるという流れを見て取っています。ドイツも同様。そしてお隣韓国は尹大統領の先走った戒厳令で政治的には3-5年ぐらい逆戻りした気がします。不評のイカゲーム2より弾劾裁判のリアルゲームの方が面白いのかも。アメリカもトランプ氏が圧勝したのはバイデン政権の甘くも辛くもない「微風政権運営」より刺激いっぱいカラムーチョ型政権に夢を託したのでしょうか?

一方で2つの戦争が世界中の注目を集め、その収拾について苦労したのも2024年でした。シリアが陥落したのも衝撃的でした。チェンジを国家のトップが独裁的にふるまい、力づくで奪うのか、国民の熱い声に支えられより民主主義的な手法での変化を進めるのか、議論の余地は大きかったと思います。本ブログでは民主主義の行方についても考察したのですが、まだその明白な方向性は出ていないと思います。フランスやアメリカのように個人主義が強い国家になればなるほど国家のあるべき方向と国民との関係性は新たなるチャレンジの世界に向かうように感じます。

後記
2024年、あの方、この方の訃報もありました。お名前を挙げたらきりがありません。有名人から身近な方までいらっしゃいました。テレビなどメディアのおかげで様々な方のご活躍ぶりが紹介され、我々になじみ深い方が増えたこともあるのでしょう。きっとこの傾向はずっと続くと思います。皆さんと共有すべきはこのブログで連日コメントをくださった健康打さんもごく最近お亡くなりになりました。氏とは長い付き合いでしたが某電機メーカーの北米総支配人からカナダのハウジング会社の社長に転じるも会社売却を敢行し、日本帰国後もNY時代に培われた人脈を活かしながら充実した人生を全うされました。合掌です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月28日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。