S&P 500は大きく下落した週となった。週前半に一度6000を超えたが、そこでは戻り売りに押されはじめ、堅調な経済指標が相次ぐ中で長期金利が上昇すると指数は続落した。
先週の記事ではレンジ継続としつつ週足の5830サポートのみを取り上げていたが、金曜の雇用統計のダメ押しでブレイクされてしまっている。
週前半はまずトランプ政権の関税政策が限定的とのヘッドラインに躍らされ、それが否定された後も7日のテクノロジー見本市CESに向けてラージテックが買われていたが、いざイベントを通過するとNVDAにインザマネーになったコールの利食いが殺到した。
年初からダブル安ということで市場参加者はすっかり2022年を思い出すようになった。
年末の記事では「株式と債券は長期的には逆相関を取り戻しているが、債券の方が成長期待からタームプレミアム拡大にドライバーをシフトしつつ安値を更新する中で緊張がやや高まっており、新年の手掛かりがない時間帯は互いを参考にするかもしれない。つまり年が明けて長期金利が続伸するなら株式はクラッシュしやすく、逆に低下に転ずるなら上昇しやすいだろう」と、この状況を想定していなかったわけではないが、年明けの週が堅調だったこともあり、またしても差し迫ったシナリオとしては取り上げそびれた。
バークレイズによると機関投資家はどの戦略もそこまでポジションが重くない。問題は大統領選後に殺到した個人投資家である。
ただDBによるとシステマティック勢のポジショニングはまだ90パーセンタイルを維持している。
EPSはロールアップを含めればまだ伸びている。
今週はPPI、CPI、小売売上高とマクロ週間が続く。PPIは事前ヘッジがあまり入るイメージがないため通過でリリーフラリーにもなりづらく、CPIはヘッジされた状態で迎えやすいことが多かったが、小売もどうせ強いので通過するまで株式も債券も買いづらいのではないか。
自社株買いはブラックアウト期間にどっぷり入っている。また、5800台半ばを下に切ったことでディーラーガンマもネガティブ域に突入したと思われ、下値の支えが今一つ足りない感は否めない。もっとも後者については1/17にはOp Exを迎えるため、ネガティブ域で迎えるならプットの失効に伴い底打ちしやすいだろう。小売の通過もその前日であり、このあたりまで耐えれば水準や指標の中身を見ずに日柄だけで買えるようになるのではないか。
NAAIMは依然悲観的であり、GSセンチメントも後退して揃ってきた。これだけ見ていると下値を叩くほどではないように見える。機械勢もFOMCの振り落としを経てそこまでは重くないように思えるが、FMSが先月時点では重かったのは改善したかどうか。
インサイダーの売り越しは再び増えており、一過性なら見てもしょうがないが、高止まりするなら要注意である。
ラッセルはトランプ当選後に規制緩和期待で最もラリーしていたが、既に全戻ししている上でヘッドアンドショルダーを形成している。指数がラリーするとすれば大型主導ということになる。その場合、既に悪化していると言われているブレスは更に悪化することになる。
テクニカルには週足は前の週の下ヒゲ陽線のヒゲをブレイクしてしまい、かなり際どいチャートとなってしまっている。6021は週足レジスタンスとなるが既に遠い。下値は5800台半ばでしつこく削られつつあり、日足的にも5930くらいは回復できないと話にならない。5800台半ばより更に下はやや真空地帯であり、5570に200SMAが位置するがさすがに昨年8月でもタッチしていないので遠すぎるだろう。
年初から下げ始めたということもあり2022年との類似性が取り沙汰されているが、2022年のような急速な利上げ開始や戦争が控えているわけではないため、少なくとも値幅はそこまで大きくならないと思われる。
目先は大統領選前のボトム5700割れあたりを試しに行けるかどうか。下値を掘ってもレバレッジ勢を振り落とす程度で滞空時間は長くないと思われ、基本的に値幅よりも日柄である。
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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年1月12日の記事を転載させていただきました。