怒り方を見ればその人の過去がわかる

黒坂岳央です。

誰しも長い人生を生きていれば、怒る瞬間は避けられない。興味深いことに、「何に怒るか?どう怒るか?」は人によって千差万別であり、その人の怒りを分析することでどのような人物なのかが分かってしまう。

筆者は怒り方に、その人の人生の過去が丸ごと晒されてしまうと思っている。

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人によって異なる「怒るポイント」

人によって「怒りのポイント」は大きく異なる。

たとえばお年寄りや高齢者は「食べ物で怒る人が多い」という印象を受ける。

食べ残しをすると「もったいない!」と怒り、「お餅は喉につまらせる可能性があるから、小さく切ってから食べ方が安全では」と提案すると、「人の食事に指図するな」と怒り出す。

おそらく、これは幼少期に食べるものが少なくて困った経験や、彼らの両親から同じように食べ物に由来する厳しい叱責を受けた過去を持つと考えられる。一種のトラウマである。

同じく、たとえば幼少期に厳格な父親から「努力が足りないぞ!」と繰り返し叱られた経験者は過去に自分が父親から受けたのと同じように威圧感、根性論で詰める行動を取る傾向がある。

つまり、幼少期や思春期にされた怒られ方を大人になって他の人に再現しやすい特性があり、怒りという本能がむき出しになる場面ではそれが顕著に現れやすいというわけだ。

最強のアンガーマネジメントスキル

そもそも、人前で怒ると信用を失い、IQは20下がるという研究結果もある。加えて自分の過去や人間性、価値観を晒してしまうリスクがあるため、「怒らない」ためのアンガーマネジメントスキルを持ちたいものである。

世間的に色んなテクニックが色んな人から言われているが、元々大変怒りっぽい性格だった筆者にとって最も有効的だったのは「相手を信用するが、期待しない」という思考である。

相手をリスペクトして丁重に扱い、信頼してお任せをする。しかし、「相手はこのように行動してくれるはず」という期待値は絶対に持たない。

「相手から信用されておまかせされた側」は相手の期待値を超えるべく、誠意を尽くして全力で仕事をするべきなのは言うまでもない。だが「頼む側」は相手に期待をしない。これがあらゆる怒りの発生を消してくれるのだ。

口で言うのは簡単でも、実際にこれを両立させることはなかなか難しい。普通は相手を信用しておまかせをすると、どうしても期待してしまうからだ。

人が人に怒る時、そこには必ずと言っていいほど「期待を裏切られた事による怒り」がある。だから期待することをやめれば平和な世界がやってくる。

だが多くの場合、勝手に相手に過大な期待をして、勝手に裏切られたと一人で怒っているに過ぎないのだ。

「言わなくてもこのくらいやってくれて普通でしょ」という傲慢な態度が怒りを作り出している。

相手は自分とは別個体の生き物であり、まったく異なる価値観、思考プロセスを持っている。自分の思想を押し付け、そのとおりに行かないからと怒り出すのは子供が親に地団駄を踏むようなチャイルディッシュな行動であり、慎むのが良いだろう。

人に怒りを見せてはいけない。怒りは人生の履歴書そのものである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。