【めいろまさんインタビュー①】日本はどう変わった?イギリスから見た日本のインフレ

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昨年末に日本に帰国された谷本真由美さん(@May_Roma)に、今回も海外からの視点で見た日本の現状や課題についてお話を伺いました。

今回の記事は、その第1回目(全4回)です。

――久しぶりに帰国された日本の印象はいかがですか。

半年ぶりに帰国し、日本の生活を改めて目にして、物価上昇や生活の様子が大きく変化していることに驚かされました。イギリスの生活と比較すると、その変化は特に顕著だと感じます。

とくに食品や生活用品に注目すると、内容量が減少しているにもかかわらず、価格は据え置かれているか、むしろ上昇している場合が多く見受けられたように思います。たとえば、以前は1キロ入りだった野菜が800グラムに減少していて、それにもかかわらず値段はほとんど変わっていません。実質的には大幅な値上げと言えるでしょう。

また、日本の印象としては、物価の上昇だけでなく、品質の低下も否めません。たとえば、衣類においては、以前よりも素材が劣化しているように感じられ、ポリエステルの割合が増え、薄手になっているものが目立ちます。同様に、パソコン周辺機器や家電製品においても、かつてより品質が低下しているという印象を受けました。

――イギリスの物価高は落ち着いてきたのでしょうか。

イギリスの生活では農業政策が物価に与える影響が大きくて、基本的な食材の価格は比較的安定しています。具体例を挙げると、人参やキャベツ、玉ねぎといった野菜は、日本と比べて非常に安価なんです。日本の農産物は品質が高い反面、量が少なく価格が高いという特徴があります。こうした背景には、日本の農業政策の問題が影響していると考えられます。

日本の物価の上昇は、特に低所得層や子育て世代に深刻な影響を及ぼしているように見えます。食費の負担が増大し、最低限必要な食品しか購入できない家庭が増えているようです。そのため、100円ショップでの購入が増加する一方で、装飾品や非必需品の売れ行きは低迷しています。この状況は、消費者の購買力の低下を如実に示していて、日本社会全体に悪影響を及ぼしていると言えるでしょう。

――日本の大卒初任給が30万円を超えたということがニュースになっていますが。

初任給の上昇に取り組む企業も一部には見られるようですが、それはあくまで限られた事例に過ぎません。多くの職場では契約社員や派遣社員が増加し、全体的な賃金の上昇にはつながっていないように見受けられます。また、共働き家庭が増加している一方で、生活費や学費の負担に苦しむ方々が多いという印象を受けます。

就職活動における競争が以前よりも激化しているという話を耳にしました。結果として、希望する職種に就ける方は限られていて、派遣社員や契約社員として働く方が増加しているとのことです。生活に不安を抱える若い世代も少なくないようです。

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――売り手市場と言われても希望通りに就職できる学生は多数派ではないのですね。

そうです。こうした背景から、大学生の中には、安定した職を目指して専門的な資格を取得しようとする方が増えているようです。たとえば、理学療法や看護といった医療系の分野を志す学生が多いことが目立ちます。これらの分野は比較的安定しているため、選択されることが多いのでしょう。ただし、資格取得を目指す学生の中にはダブルスクールを余儀なくされている方も増えており、その負担は大きいといえます。

また、現代の若者は安定を求める傾向が強く、社会の変化に非常に敏感であるように感じられます。先日、本屋に足を運びましたが、自己啓発やスキルアップ関連の書籍がとても人気を集めていることがわかりました。これらのジャンルの書籍がランキングに多く並ぶ様子からも、若者が将来への不安を解消しようと努力している姿がうかがえます。

その2につづく)