米国雇用:業種別分析②「政府及びレジャー・宿泊・飲食」

前回に続き、今回は全米雇用の第2位・第4位を占める「政府」「レジャー・宿泊・飲食」部門の分析である。

(前回:米国雇用:業種別分析①「民間教育・医療」

今回も以下グラフを念頭に読んで欲しい。雇用者数のデータは断りがない限り、非農業部門雇用者数(事業所調査)から作成したものである。

※ 第3位の専門・ビジネスサービスは年次改定暫定値を当てはめると、雇用は前年比マイナス20.2万人と、雇用の勢いを失っているため、分析の対象外としている。

【政府】

雇用者数2,350万人、全体の15%を占める「政府」部門は最近やや陰りはあるものの増加基調が続いている。2024年の1年間の雇用者数は44万人増(約3.7万人増/月)である(年次改定は考慮していない数字)。

この部門は明るい見通しは書けない。バイデン政権で雇用を増やし過ぎたように思うからである。以下グラフは2000年以降の政府部門の雇用者数前年比であるが、近年ほど安定して前年比2%増を記録し続けた年はない。

話はさかのぼるが、2024年9月の失業率が予想を超えて低下をし、マーケットがそれを好感したことがあった。

しかし、政府部門が過剰と思えるほど雇用を増やしていたのである。

以下は1948年以降の政府部門(家計調査)の前月比で、雇用が増加した月の上位10位までのグラフだが、2024年9月の政府の雇用増は前月比73.2万人であり、2024年9月に失業率が4.1%に低下した主要因はこれである。73.2万人というと、熊本市の人口が74万人弱のため、熊本市の人口に相当する雇用を1カ月で生んだことになる。

前トランプ政権下の2020年5月・6月・8月の大幅な雇用増(上記青枠内)は、以下グラフの通り、コロナ発生後に政府部門の雇用が月ごとに大きく増減したためだが、2024年9月は大統領選挙前に失業率の悪化を防ぎたかったバイデン政権による露骨な選挙対策と言っても過言ではない。

2022年7月・12月(上記緑枠内)もここまでの雇用増が必要であったか疑問で、コロナ発生直後の2020年を除くと、上位3位までがバイデン政権下での雇用増となり、やり過ぎ感は否めない。

※ 2020年通年で政府部門(家計調査)の雇用はマイナス63.9万人である。

さらに報道されているとおり、イーロン・マスク氏が主導する政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)がX(旧Twitter)やテスラなどで効果的であった大幅な人員削減を含む改革を提唱し、政府部門に大幅なメスを入ることがあれば、雇用は大幅なマイナスを記録する月も出てくるだろう。連邦政府職員の採用凍結に加え、リモート勤務を止め、週5日オフィス勤務とする大統領令に署名するなど、リストラが既に始まったと言って良い。

まとめると、政府部門の雇用は、今後は(少なくとも当面は)期待できない。足元で毎月約4万人の雇用増が消えていく形になると思われる(以下グラフは再掲)。

※ 政府部門は、雇用統計年次改定の暫定値で、1,000人の上方修正が見込まれているだけのため、年次改定の影響を受けることはほぼない。

【レジャー・宿泊・飲食】

雇用者数1,710万人、全体の10%を占める「レジャー・宿泊・飲食」部門は前月比でマイナスを記録する月が出ているなど、最近やや陰りはあるものの増加基調が続いている。2024年の1年間の雇用者数は28.5万人増(約2.4万人増/月)である(年次改定は考慮していない数字)。

レジャー・宿泊・飲食は景気の影響をより受けやすい分野である。景気が良く(悪く)なれば、遊びも旅行も外食も行く回数が増える(減る)からである。現在、景気は以前と比較すれば減速傾向にあるため、この分野は全体と比べ場合、景気の影響を受けやすい分、より求人も減速し、解雇もより増加している。

※ 2022年1月と2024年11月を比較した場合、JOLTS全体の求人数は約3割弱の減少に対し、レジャー・宿泊・飲食部門は約4割減少。

※ 2022年1月と2024年11月を比較した場合、JOLTS全体の解雇数は約25%の増加に対し、レジャー・宿泊・飲食部門は約6割増加。

但し、この分野に特別何か悪いことが起きているようには映らないので、今後の動向としては、米小売売上高、ISM非製造業景気指数、レストラン業績指数(Restaurant Performance Index)などの各指標を細かく見ていくほかないだろう。

※ レストラン業績指数(Restaurant Performance Index)は100を基準とし、100を超えると拡大期にあることを示す。
この指数は景気の波を的確にとらえているように見える。

なお、レジャー・宿泊・飲食部門は、雇用統計年次改定の暫定値で15万人(1.2万人/月)の下方修正が見込まれているため、現在発表されている雇用者数を押し下げる形となる(以下グラフは再掲)。

(次回:米国雇用:業種別分析③「建設」)