2024年12月の雇用統計において、非農業部門雇用者数は1億5,950万人、前月比25.6万人増と底堅い数字が発表された。
前月比で堅調に伸びる雇用者数であるが、けん引役になっている業種あるいは陰りのある業種はどこか、また今後の動向はどのようになっていくかを予測していく。
※ 以下雇用者数のデータは断りがない限り、非農業部門雇用者数(事業所調査)から作成したものである。
業種別雇用者数及び割合、業種別雇用者数増減(前年比)は次の通りである。
上記2つグラフは、2025年2月7日(金)に発表される雇用統計の年次改定で大きく変わる。よって、雇用者数前年比増減については、2024年8月に発表された暫定値を反映させた2024年3月時点のデータの方がより実態に近くなると思われるため、合わせて掲載しておく(業種別雇用者数及び割合のグラフは、いったんこの数値をベースに話を進める)。
上記グラフを見ると、雇用の勢いがあるのは、赤枠内「民間教育・医療」「政府」「レジャー・宿泊・飲食」「建設」部門のみのため、この4部門を中心に見ていく。
【民間教育・医療】
雇用者数2,680万人、全体の17%を占める「民間教育・医療」は絶好調である。雇用者数も2024年の1年間で97.1万人増(約8万人増/月)である(年次改定は考慮していない数字)。
分解すると、私立の学校や塾に勤務する教職員などが含まれる民間教育ではなく、医療がけん引役であることが分かる。※「民間教育・医療」のうち、民間教育が15%、医療が85%の雇用を占める。
医療分野における雇用は今後も伸び続けることが予想される。単純に高齢者(ex.65歳以上)の人口が増え続けており、今後も増え続けることが予想されるためである。
但し、足元で2022年12月以降、前年比4%を超える雇用者増が続き、水準が高い点が気になる。
今後、おそらくこの水準は保てないのではないか。
2017年から2020年の前トランプ政権においては人口増加率が減速した一方、バイデン政権以降、コロナの落ち着きと共に人口増加率が反転・加速し、それに伴って65歳以上の人口の増加率も再加速した。
しかし、トランプ政権は移民規制を強化し、人口増加率が再び低下するのは確実のため、医療分野の雇用も増加基調は変わらないものの、その増加ペースは水準を落としていくと思われる。
なお、「民間教育・医療」部門は、雇用統計年次改定の暫定値で81.8万人の下方修正が発表されている中、8.7万人(約7千人/月)の上方修正が見込まれている。
よって、「民間教育・医療」部門における雇用は、勢いは落ちるものの今後も現在のような底堅い増加が見込めると思われる(以下グラフは再掲)。
(次回:米国雇用:業種別分析②「政府及びレジャー・宿泊・飲食」)
【参考動画】
岡崎良介のマーケットインサイト『米国労働市場の現状分析①労働需要を増加させている要因』