SNS上では、コロナワクチン接種後の死亡率にロット差が見られるという情報が流れている。筆者も以前、コロナワクチンに見られるロット差について論じたことがある。
厚生科学審議審議会の資料には、ロットによって死亡頻度が大きく異なることが示されている(図1)。2024年12月17日に開催された参議院予算委員会で、川田龍平議員が、コロナワクチンの安全性にロット差があるかを質問したところ、福岡厚労大臣は、ロット差については、特段の懸念は報告されていないと答弁している。
図1において、死亡頻度が高いロットは、2021年4月から6月に集中している。施設に入所している高齢者の多くは、この時期に1回目、2回目の接種を受けている。
この時期に接種したロットの死亡頻度が高い理由としては、ハイリスクの高齢者が接種対象であった可能性もあるが、ロット差で説明できるかを浜松市の開示データを用いて検討した。
最初に、接種回数によって死亡率に差があるかを検討した。2回目接種者の多くは、その後、3回目接種を受けている。同様に、3回目接種者の多くは、4回目接種を受けている。そこで、接種回数毎の死亡率を検討するために、その回の最終接種者を対象とした。
すなわち、2回目接種群には、2回目接種後に死亡して、3回目接種を行わなかった接種者と、3回目以降の接種を受けずに、最終観察日の2024年6月30日まで生存した接種者を含めた。同様に、3回接種群には、3回目接種後に死亡して、4回目接種を行わなかった接種者と、最終観察日の2024年6月30日まで生存した接種者を含めた。
この結果、各接種群における死亡者の割合は高くなるが、今回の検討の目的は、死亡率の絶対値を示すことではなく、各接種群におけるロット差を検討することなので、この方法で目的を達成できると考えた。
表1は、70歳から99歳までの高齢者を対象に、2〜6回目接種に使用されたロットとその死亡率を示す。2回目接種に使われたロットの死亡率は、38%から89%とロット間に差はあるものの、3回目以降に使用されたロットと比較して、大幅に死亡率が高かった。
5回目、6回目接種に使われたファイザーワクチンの死亡率は、3%から13%であったが、モデルナの400185Aは5回目接種では41%、6回目接種でも30%とそのほかのロットと比較して高かった。
表2には、2021年6月3日から6月17日の15日間に、2回目接種を受けた80歳から99歳高齢者の予後を示す。45人のうち40人が死亡した。EY5420の接種を受けた35人のうち30人が死亡した。
2021年6月3日から6月17日の15日間に、2回目接種を受けた80歳から99歳高齢者の予後を示す(表2)。45人のうち40人が死亡した。EY5420の接種を受けた35人のうち30人が死亡した。
7月後半になると、2回目接種を受ける高齢者は減少した。7月26日から10月14日の間に2回目接種を受けた45人のうち死亡数は26人であった。FC9909の接種を受けた17人のうち10人は生存している(表3)。
図2には、ワクチンを接種してから死亡するまでの月数を示す。これまで、ワクチン最終接種日から死亡するまでの期間は、厚生科学審議会に提出され死亡報告事例をもとに推定されてきた。それによると、多くは接種後1週間以内に死亡しており、1ヶ月を超える事例は少数であった。しかし、報告バイアスを否定できず、ワクチン接種後に死亡した事例の全数調査が待たれていた。今回の全数調査による検討では、接種後7〜8ヶ月まで死亡は継続してみられた。
図3には、80〜99歳に対して、2回目接種として使用された各ロットの致死率を示す(図3)。対象の年齢が同じでありながら、44%のFH3023から86%のEY2173まで、ロットによって致死率に差がみられた。
デンマークとスウエーデンからの報告でも、ワクチン接種後の死亡率にロット差が見られた(図4)。ワクチン接種開始初期に使用されたロットの死亡率が高かったことから、筆者らは、初期に使用されたロットとその後に使用されたロット内容に違いがあったのではないかと述べている。
日本においても、6月までに納入されたロットとそれ以降に納入されたロットでは、死亡率に大きな差があり、同様のことが言えるかもしれない。
ワクチン接種後の死亡例の多くは、偶発的なもので、ワクチンの接種がなくても死亡したと考えられる。しかし、接種後の死亡率にロット差があるとなると、致死率の高いロットの死亡者の一部は、その死因にワクチンの関与が疑われる。
福岡厚労大臣の発言のように、国はワクチンの安全性にロット差があることを認めていない。ロットによって接種後の死亡率に大きな差があることを認めることは、接種後の死亡にワクチンの関与があることを認めることになり、ワクチン接種を推奨する立場からは容認できないのだろう。