円安でも日本が外国人労働者に選ばれ続ける理由

黒坂岳央です。

歴史的な円安になって数年が経過した。当初、エコノミストやアナリストは「円安になると日本に来る外国人労働者も消える」と口を揃えていたと記憶している。しかし、厚生労働省の発表した最新のデータによると、2023年10月末時点で過去最多の230万人を突破。過去の推移を見ても「きれいな右肩上がり」である。

なぜ我が国は外国人労働者に選ばれ続けているのか?その理由までは統計データから現れない。「円安でも日本に感じる魅力がある」と感じ、個人的な考察として執筆する。

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1. 日本の安全性と生活環境の魅力

日本は世界的に見ても治安が良く、犯罪率が低い国として知られている。多くの外国人労働者にとって、安全で安定した環境は重要な要素だ。出稼ぎ労働先で命を落とすリスクのある国は選ばないだろう。特に、ミャンマーやインドネシアなどの政治的・経済的に不安定な国からの労働者にとって、日本は魅力的な選択肢となる。

また、日本の公共交通機関は時間通りに運行し、医療制度も整備されている。以上の理由から外国人労働者が安心して生活できる環境が提供されていると考えることが可能だ。

2. 労働法の整備と安定した雇用環境

日本では労働基準法や社会保険制度が整備されており、外国人労働者も基本的に同様の権利を享受できる。

「労働関係の法律がしっかりしている」というのは我々日本人には当たり前でも、新興国の外国人にとっては魅力的に映るのだ。

他国では、外国人労働者が過酷な環境で働かされるケースもあるが、日本では「一般的」には最低賃金の保証や労働時間の管理が比較的厳格に行われている。

3. 文化的な魅力と日本への憧れ

日本のアニメ、漫画、J-POP、伝統文化などは世界中で人気があり、日本で生活してみたいと考える外国人は少なくない。

「たかがサブカルで」と笑い飛ばす人もいるかも知れないが、ソフトパワーは侮れない力がある。「いつか日本へ」と憧れを持ってわざわざ日本語を大学で学び、その後本当に来日してそのまま結婚して移住、という外国人を何人も実際に見てきた筆者としては、サブカルの力は本当に侮れないと思っている。

特に、介護分野などでの外国人労働者の増加が顕著ですが、日本の医療・福祉分野の高度な技術や倫理観に触れながらスキルを習得できることも、日本が選ばれる理由の一つと言えるだろう。

4. 外国人労働者の受け入れ拡大政策

政府は「特定技能」や「技能実習」制度を拡充し、より多くの外国人が日本で働きやすい環境を整えている。特に介護や建設業など、人手不足が深刻な業種では外国人労働者の需要が高まっているのだ。

一方で、これらの制度には課題もある。外国人技能実習生制度は、かつて低賃金労働の温床となり批判を浴びたが、近年は厳格化が進んでいる。ただし、一部では「難民の受け入れ制度を労働力確保に悪用している」といった問題も指摘されており、課題はある。

円安の影響がある中でも、日本が外国人労働者に選ばれ続ける理由は、様々だが問題はこれからだ。我が国でもインフレが進んでいることから、円安とインフレのダブルパンチで新たな試練が訪れるだろう。

特に一部の産業や職場では、外国人労働者抜きでは成り立たないほど依存しているところもあり、目が離せない展開となっている。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。