埼玉の道路陥没事故が暗示する「日本の未来」

埼玉県八潮市で県道が陥没しトラックが転落した事故は、運転手の懸命な救出活動を行っているようですが、穴には大量のがれきや土砂が積み重なっており、作業は難航しているようです。

NHKより

今回の陥没の原因は下水管の老朽化によって菅に亀裂が生じて、そこから土砂が流れ込んで空洞ができたことによるとされています。道路の地下には下水管だけではなく上水道などの菅の敷かれており、少しずつ老朽化していきますから定期的なメンテナンスが必要になります。

しかし、国や地方自治体の財政状況が悪化していけば、すべてのメンテナンスを充分に行うだけの予算を確保することができなくなります。そうなるとメンテナンスの頻度を下げたり、重点エリアを決めるといった取捨選択をせざるを得なくなります。

交通の激しい都市部では陥没による混乱や被害が大きくなりますから、優先的に手当てされると思いますが、人口の少ない過疎地域のメンテナンスは後回しにしないと回らなくなります。

今回の事故は、人口減少下での日本全体のインフラの維持整備が難しくなっていくことを暗示しているように思います。

下水道などの地下のインフラだけではありません。高速道路や橋、トンネルといったインフラも定期的な点検やメンテナンスが必要になります。

メンテナンスが充分に出来ない場所に関しては設備の維持をあきらめざるを得なくなります。

日本のすべてのエリアのインフラをこれからも維持し続けることは財政上の理由からもはや困難です。

であれば、まだ余力のあるうちにメリハリを付けたインフラのメンテナンス計画を作るべきと思いますが、見捨てられるエリアの人たちは反対運動を起こすでしょうから、簡単には決まりません。

日本国内の住むべきエリアを特定して、インフラ整備の予算を集中させる。そんな大胆なリーダーシップを発揮できる政治家は今の日本には見つかりません。

結局、現状維持が続いて、本当に予算の余裕がなくなった時点で一気に切り捨てられる。その時期は思ったよりも早く来ることになると予想します。

道路陥没事故は多くの日本人にとって他人事ではありません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。