それでも外食をするか?:冷たい風が吹き続ける飲食業界

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月に2回ほど週末に行くいわゆるローカルパブ。プールテーブル(ビリヤード)、ダーツやカラオケナイトもある典型的な北米の住宅街にある冴えないパブですが、なぜかそこのバーカウンターに座るのが好きで店に来る人達を眺めています。

大型店ですが、潰れたのかと思わせるほど暇な店が週末の夜8時過ぎから突然混みだします。皆さん、家でご飯を食べてから遊びに来るのです。パブにはセルフサービスという仕組みがあり、自分でバーカウンターでバーテンダーに飲み物を注文し、一回一回その場で払う方式がポピュラー。そして立ち飲み客も多く、着席と立ち飲みが混在し、日本人が見たらカオスかもしれません。

はっきりしていることは、立ち飲み客は既に食事を済ませているのでただひたすら飲むだけ。客はほぼ全員白人系。なぜ食べないか、それは食事は大したことないのに高いからです。逆に言えば客はフードメニューには何ら期待をしていないということです。

以前にもつぶやいたことがある家から5分ぐらいのところにあるピンボールパブ。70年代に流行ったピンボールマシーンや当時のゲーセンのゲームをしながら飲む店です。ここも週末は大賑わい。メニューにはそもそもフードがなく、あえてそのあたりのスーパーで売っているピーナッツ類が売っているだけ。でも客で賑わうのは飲んでワイガヤが出来ればよいからでしょう。

北米の飲食店の価格高騰ぶりはもはや許容範囲を超えています。数日前に7人でごく普通のレベルの中華料理屋に行きました。私が注文の役目だったのですが、その価格にえぇー!です。チャーハンや焼きそばが3500円、シュウマイや春巻きも4つで1000円水準。悩んだ末に4種類が8つずつ提供される飲茶セット6500円を注文しました。

コロナ後にうまいものを食べたか?と言われると、日本で食したもの以外、かなり少ないと思います。私の中で既に外食に対する期待値はありません。お金を払えばうまい店もあるでしょう。しかし、日常使いの外食にならないのです。その中で一軒だけうまくて安い寿司屋を何年か前に見つけ、そこまで電車に乗り30分かけて時折行っています。そのレベルなのです。

日経に「吉野家出店が計画の半分に 外食、コスト高で下振れ続々」と題する記事があります。ただ記事の内容は、吉野家というより外食チェーン店が押しなべて出店計画を下回っているという内容で、計画の5割から7割程度に留まっていると。理由は建築費、賃料、人件費の「3高」が理由です。

チェーン店は建築費や賃料が高かったからと言ってその店だけ違う価格帯のメニューににするわけにはいきません。よって経済性が伴わなければいくら出店計画をしても出せないということです(最近の傾向ではこのタブーを打ち破り、場所により金額が違うチェーン店もちらほらあるようですがまだ実験段階でしょう)。

また帝国データバンクによるラーメン店の倒産が相次いでいるという報道もありました。24年には72件が法的整理したとあります。また既存店の1/3が赤字経営、減益が27%で合わせて6割以上が経営悪化となっているとあります。焼き豚は極限まで薄くしてもそれでも儲けが出ないという訳です。

私から見るラーメン店は二極化した部分もあります。とくにSNSなどで人気に火が付くと1時間待ちといったことが常態化する店がある一方、ガラガラで厨房にいるお兄さんの手つきが怪しい店もあります。

日本人は消費や飲食に対して目や舌が肥えているとされます。故にかつての街の食堂的な胃袋を満たすというシンプルな目的では経営を維持できないのです。そして大手チェーンですら計画通りに進められない出店計画ということは既存店の提供価格は下限値であるとも言えないでしょうか?

以前にも書いたようにスーパーの総菜や冷凍や半製品のレベルが非常に上がり、食べ飲み放題の店のは原則、時間制限があることを考えれば家飲みが外食に変わる選択肢になる可能性は大いにあると思います。

外食のメリットとは家で作るのが面倒くさい、あるいはそもそも出先で作る手段がないケースが主流でした。「孤独のグルメ」の最新シリーズを見ていてさて、五郎さんの生き方は今風なのか、と一歩下がってみるとなんとなく無理が出てきたような気もします。

飲食店はおひとり様ウェルカムを掲げましたが、時代は次の段階に入ってきているように感じます。飲食業界は冷たい風が吹き続けるように感じます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月9日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。