「パワーカップル」が「バカップル」に変わる日

「パワーカップル」と呼ばれる共稼ぎの高収入ファミリーが東京には珍しくありません。明確な定義はありませんが、夫婦ともに年収700万円以上の世帯を指すようです。合計すると世帯年収が1500万円程度になります。

このような人たちが購入しているマイホームが1億円を超えるようなタワーマンションです。東京都心部では坪500万円を超える物件も珍しくありませんから購入できるのは70平米程度の標準的な物件です。

厚生労働省の国民生活基礎調査のデータでは、世帯年収1500万円を超えるのは全体の5%程度と極めて少ないことがわかります。

パワーカップルは日本国内では「選ばれたエリート富裕層」なのです。

しかし2人で数千万円の住宅ローンを借りて、35年の長期返済していくのは人生の損益計算書で考えると大きなリスクです。なぜなら、支出が長期に固定化されているのに対し、収入は不安定だからです。

今の収入や生活レベルが、長期にわたって変化しないとは考える方が不自然です。

例えば、勤務先の経営状態が悪化したり、リストラに遭遇するリスクはゼロではありません。体調を崩したり、介護や子育てを優先せざるを得ないケースもあり得ます。

また、夫婦仲が悪くなったり、転勤で単身赴任もありえます。

そして住宅ローンの返済は、サラリーマンの場合、源泉徴収された手取り収入から行います。しかも、変動金利で借りた場合、金利上昇が返済金額の増加としてのしかかります。

様々な不確定要因だらけの中で、ギリギリで住宅ローンを組んでしまうと、身動きが取れなくなり、ちょっとした環境変化だけで生活が成り立たなくなってしまうのです。

パワーカップルが環境変化で窮地に追い込まれる。こうなると一転して「バカップル」です。

「選ばれたエリート富裕層」のパワーカップル」は「バカップル」に転落しないように油断しない方が良いと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。